春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

キングの正体は……

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 休日が明けての登校日。週末にまた休みが、それも三連休が控えている。楽しみにしている生徒が大半――のはずだった。

 私が登校してから、学園中が騒然としていた。どうみても、三連休の予定といったポジティブなものではなさそうで。

「……ほら、あの人。美女部の人でしょ」
「騙されてたんでしょ……私らもそうだったけど」

 生徒たちの噂話は止むことはない。これはまだまだ続きそうだった。私に向けての嘲笑もあったけれど――それよりもっと別の人物に向けて。

「……一体何が」

 私の胸がざわつく。自分の預かり知らないところで、何かが起こっているようで。

「――何が『キング』なんだか」
「!」

 生徒の一人の言葉に、私はいても立ってもいられなくなった。向かう先は。

 ――中等部の校舎だ。




 私は逸る気持ちのまま、校舎を駆け抜けていた。道中、話が嫌でも入ってくる。

「キングは――」
「あいつは――」

 誰も彼もが話をしていた。私はただ走り続けていた。走って、走り続けて。着いた先が――部室だった。

「……はあはあ」

 私は扉の前に立つ。静かだった。活気のあった部活だったのに、今は静まり返っていて。わずかに聞こえてくるのは、繰り返す呼吸の音……?。

「……エドワード君? シャーロット・ジェムです。開けていい……って」

 扉は隙間があり、閉め切られてなかった。私はさらに扉を開くことにした。

「……シャーロット殿か」

 かつては群がるかのように、美女達が座っていたソファ。

 それが今は、エドワード君だけが座っていた。彼は手を膝に置いて考え込んでいた。

「エドワード君」
「……」

 私は呼びかけた。彼からの反応はしばらくは無かったけれど。

「……存じておるぞ。そなたも余を責めに参ったのだろう。よくも騙したなと。詐欺だと。時間を返せと――」
「……!」

 ……虚ろな目でそう言ってきたのは、エドワード君。彼は他の部員たちにそう詰られたの……? 全員がそうではないにしろ、そうじゃないと思っているけれど……。

「違うよ、そうじゃなくて――」

 私はそうではなかった。気にならないわけではないけれど、彼を責めに来たわけではない。

「座るね?」

 失礼して、彼の隣に座った。

「私はただ――」
「……余の噂は、誠だぞ。余が欺いていたのは事実だ」

 エドワード君は淡々と喋っていた。隣の私を見ることもなく、淡々と。

「余は貴族の子ではない――『海賊』の子だ」
「……うん」

 生徒誰もが噂をしていたこと。

「……どなたかわからぬが、余を推薦する御仁がおったという。海賊ではあったが、商人としての活動が主だった。富はあった故、それを買われたのだろうか。ただ……余は、貴族の子と偽った」

 エドワード君は語る。

「……学園長も慮ってくださったのか。海賊はともかくとして、商人であったのはご承知だっただろうに。ただ、余が良い思いをしたいがばかりに……半端に貴族と名乗った」

 ――後悔するかのように。

「余は、何故見栄を張ったのか。最初から商人と名乗っておけば……ちやほやされたかったばかりに」
「……海賊、ううん、商人出身だって隠したかった。そういうこと?」
「……そういうことだ」
「恥ずかしかったの、自分の出自が」

 私がそう尋ねると、エドワード君は顔を上げ、声を大きくして答えた。

「……は、恥ずかしいというわけではない! 彼らは余に良くしてくれた。余にとって大切な存在だ! 余も懸命に生きてきたぞ! そうだ、必死に汗水垂らして生きてきたのだ!」
「うん」

 エドワード君自身、恩義もあるようだった。そのような生活を送る中でも。

「それでも、学生というものに憧れておった! 美女に囲まれたり、ちやほやされたり。学園中から憧れられたり。まとめ上げて頼られたり……」

 エドワード君が述べていること。それは、これまでの彼が学園で見せてきた姿だ。

「……同世代の、友人が欲しかった。周りは大人ばっかりだったから。他愛の無い話や、悪ふざけもしたり。はしゃいでもみたかった。ずっと……憧れていた」
「……そっか」
「……そなたが、叶えてくれた」

 学園の中心になりたいのもそう、友達も欲しかった。普通の学園生活も送りたかった。それこそエドワード君の本音、熱望していたものだったんだ……。

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