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第四章
そなたがいてくれたら
「……」
「……」
エドワード君がまっすぐに見つめてくる。私はその視線に耐えられなくて、下に移した。目に入ったのは、ペンダントの鎖部分だ。肌身離さずは本当のようだった。
「……こちらもな、盗品と疑われた」
「そんな……」
私が気づいたのは最近でも、他の生徒たちは前から知っていたんだ。それを今になって、盗んだものだと言ってくるという。
「……余は、悪どいことは望まない。とはいえ……海賊ぞ。外聞は良くないのも承知だ。盗んだと思われるのも、当然といえよう」
「そっか……」
「……そういうことだ」
「……エドワード君」
私は逸らしていた目を彼に合わせた。こうすることで、伝わるのなら。
「――誓って自分のものだって、君が言ってくれたんじゃない。なら、疑うことってある? 私は信じるよ」
「……シャーロット殿?」
「君を信じる。紛れもなく、エドワード君のものだって」
私は当然だと笑った。ただ、当然のこととして。
「……」
「エドワードく――」
エドワード君からの視線が痛かった。私が彼の名を呼んだ時には。
――抱きしめられていた。
「ど、どうしたの……?」
私は困惑していた。そっと離れようとするも、抱きしめる力は強かった。
「……そなたは、変わらないな」
こんなにも、紡ぐ言葉は弱弱しいのに。
強く抱きしめてくる。
――縋りつくかのように。
「そうやってずっと……余に寄り添ってくれた。いつだって、そうだった」
「ううん、そんなことは……」
ないはずだった。繰り返しの日々で、彼と交わしたこと。痛い思いをしている彼に、氷の欠片を渡したこと。デートが上手くいかなかった彼の相談に乗ったこと――こうして、孤立した彼の元を訪れたこと。
全てが全て、エドワード君の記憶にないはずなのに。それなのに。
「……時には笑って。時には怒り。そうやって励ましてくれていた。優しくしてくれていた。……余を受け入れてくれた」
エドワード君はより体を寄せてきた。少しでも離れたくないと、そう伝えているかのようで。
「ねえ……エドワード君。それって、私だけじゃないよ。今は皆さん、動揺しているだけで」
私は諭すように話しかけた。貴族だからと近づいてきた人もいたとして、それが全員とはいえないだろうと。中には本当に君のことを好きだった子だって――。
「――皆が好いているのは、『キング』だけだ」
「そんなことは――」
違うと否定しようとすると、私は体を離される。距離ができたのは一瞬、私の頬は、エドワード君の大きな手で包まれた。
「……シャーロット殿は、知っていただろうか」
綺麗な瞳の色――海を彷彿させる青い瞳。エドワード君の瞳は、このような色だったかな?
「……弱さを見せられたのは、そなただけだ。余が虚勢を張らなくても済む。強がらなくても良い存在」
――それがシャーロット殿だ、と。エドワード君の思いが伝わってくる……。
「その瞳に恋を宿してくれたら。それが余だったらと願っていた。それは今になってではない。おそらく……ずっと前からだ」
ただ、彼の思いが伝わってきたこと。
「――そなたがいてくれたら。余はそれで良いのだ」
「……うん」
私は嬉しく思っていた。
とても――幸せだった。
繰り返しの日々において。代償というものがあるのなら。
『――雪みたいだね。積もって、積もりつづけていく。でも、雪みたく溶けない。ずっと残ってるの』
それが彼からの思い、愛が含まれているとしたら。不用意に積もり、積もらせてきてしまったとしたら。
もう溶けもしないとしたら。終わりがないのだとしたら。
代償とはなんなの。何が代償だったというの。
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