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第四章
縋られる日々②
「失礼するぞ! シャーロット殿、迎えに参った。用意も済んでおる」
昼休みになると、エドワード君が高等部の教室までやってきた。手にはお弁当。彩色豊かな風呂敷で包まれていた。
「うん、わかった。お昼ご飯もありがとね」
「なんの!」
私は席を立ち、自然に彼についていこうとしていた。
「……ジェム様、お待ちください」
「どうしたの、リヒターさん?」
呼び止めてきたのは、リヒターさんだった。彼はどこか焦っているようだったけれど、私にはよくわからなくて。
「……ジェム様」
それが余計にリヒターさんを困らせているのかな……彼の表情が。
「……一緒にとらないようにと、申すわけではございません。お昼をとられるのでしたら、教室内でもよろしいかと」
二人きりになることもないと、言いたいのかな? ……うん、確かに。一緒に食事をするなら、場所はどこでも良いとは思うし。
「それもそうだね、ここでもいいよね。ちょうど隣の席も空いてるし、借りちゃおう――」
「……シャーロット殿、その」
エドワード君が制服の裾を引っ張ってきたので、私は耳を傾けた。
「――なのだ」
「ああー」
エドワード君が耳打ちする言葉にも納得する。そうだね、確かに。
「なるほど――リヒターさん、私たち行くね? またあとで」
甘えているエドワード君が可愛いと思った。私は笑顔のまま、彼と共に去っていった――。
私たちがやってきたのは、元部室だった。もう私たち二人だけの利用ともいうか……。
「……さっきは、すまなかったな。この出来栄えを披露するに至らなかったのだ」
エドワード君が机の上に広げたのは、彼の手作り弁当。その中身はというと。
「余もな、たまに作りはする。だがな……そなたの幼馴染殿やリヒター殿、彼らが料理上手ときいてな。ならば余も、そう思ったが……」
肉。魚。野菜。果物。切った。焼いた。詰めた。
「もっと凝ったものとも考えたがな……そなたが口に入れるものだ。まずは無難が第一と思ってな」
エドワード君は一人恥ずかしそうにしていた。そんな恥じることもないのにね? 充分に美味しそうだと思っていた。
「うん、美味しそう。でも、その前に……」
私は制服のポケットから傷薬と絆創膏を出した。不慣れな彼の手に、いくつか傷があった。包帯は巻いていたけれど、直したくなっちゃって。
「うん、食べる前にだね。貼り直させてもらっていいかな」
「う、うむ……しかと頼む!」
エドワード君は力みつつも、そう言ってくれた。それならと私は手当をする。その様をじっと見ていた彼は、ぽつりと言う。
「……誰にでも、そうするのか?」
「ん? うん、そうなるかな。傷負っている人は放っておけないし。商品買ってくださった方とか、サービスの一環で。販促にもなるかなって」
「そなたは、ほんに……」
エドワード君は盛大な溜息をついた。
「でもね。君に関しては、私がそうしたいから。義務感とかじゃなくて……触れたくなったから」
「……!」
だから、手当もしたい。こうして触れて、彼の温もりも感じたい。私はそう思ったんだ。
「うん……エドワード君」
私は一旦手を止めて、彼を見上げた。うん、そうだね……。
「な、なんだ……?」
顔を真っ赤にしている彼が。いちいち反応している彼が。
いつもは態度が大きいのに、たまに見せる弱さも。
何もかも――可愛いと思った。
こんなにも。
「だって、私はエドワード君のことが――」
こんなにも、こんなにも――君が愛しいのだと。私は伝えたくなっていて。
「君の、ことが……」
伝えたいはずなのに……どうして。
「あれ……?」
どうして、言葉になってくれないの?
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