春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

縋られる日々③

「……よいのだ、シャーロット殿。余に劣らず照れ屋なそなたのことだ。充分なのだ!」
「そう……?」
「そうだ。余の心臓がもたないのだ……」

 これ以上ないほど、エドワード君は顔を赤くしていた。それでも、瞳をそらしはしない。
 青色の瞳は、強く私を見つめている。

「君は……」

 私は本当に美しいと思っていた。濁りない瞳は、汚い感情などないようで。嫉妬や強欲、欲情もないと思えるもの。思わせてくれるもの。ならば、彼は――。

「……」

 このような時でも考えていた……クラーラさんの死についてだ。有力視されているのは、痴情のもつれによる死。
 これまではエドワード君はクラーラさんに懸想していたはず。

「あ……」

 私はそれを弁えていた。そう、弁えていないといけない。

「……そうだった」

 この状況下の方がイレギュラーなのに。そこを忘れてはいけないと、自身を戒めることにした。

「――シャーロット殿? どうかしたのか……?」

 自分をよそに考え込む私が気になったようだ。エドワード君は顔を覗き込んできた。

「……手当、どこまでやろうかなって。そう考えてただけ。お腹も空いたし」
「ははは、それもそうだろう! ささ、早く食べるのだ! お腹は……痛くならないだろうか」
「ふふ、君って……」

 自信満々と思えば、どこか自信がなかったりする。本当、不思議な子。

「……」

 信じていいのか、私は自身に問う。曲がり曲がって、エドワード君が私とこうしていることが、やっぱり信じ難いものでもあって。
 それもある、もっと根本的なことを思った。

「君は本当に……」

 このようなエドワード君が、恋に裏切られたからって……相手を手にかけたりするのかな?

 君を知っていけば、わかるのかな。

 君じゃなければ、そう願うばかりだった……。

「……これでよし、と。お待たせしました、ごちそうになるね?」
「そ、そうか。うむ、たんと食べるが良いぞ!」
「うん、いただきます――って、食べないの?」
「ああ、そなたが食べるのを見届けてからだ。さあ、食すが良いぞ!」
「うん、それじゃ……」

 エドワード君が食べるのを待とうと思ったけれど、彼もそうだったから。私は先にいただくことにした。
 味といえば、素朴な味わいだった。素材の味が生きていて、うん、焼き加減も素晴らしい。そわそわ結果待ちしているエドワード君、気にすることないよ? 十分に美味しかった。

「うん、美味しい!」
「本当か! うむ、さすが余だな。もっと、向上するぞ! それでな……そなたのも、食べてみたいぞ」
「私のも? 無難というか、映えとかないけど。それでも良ければ」

 私がそう言うと、エドワード君の顔は明るくなった。こんなにも喜んでくれるのなら、平凡な腕前ながらも張り切ろうかな。




 お弁当を食べても、まだ昼休みの時間はあった。私たちはソファに並んで座っていた。まったりしている私に対し、エドワード君は何かを言いたそうにしていた。

「……もうじき三連休か。そうだな、余は」

 エドワード君が呟いた。それから体を私に向けた。

「シャーロット殿。やはりというか――そなたも来ないか」
「え……」

 突然の誘いだった。エドワード君としては『ようやく誘えたぞ!』と、拳をぎゅっとしていた。

「ララシア……だよね? 君が単独で行くって話だったけど」
「ああ。だがな、三日間そなたに逢えないことがな……」

 エドワード君はそれが耐えられないと、切実に訴えていた。

「エドワード君……」

 私の胸はギュッとなる……彼を見ていると、こんなにも締め付けられて。

 君と一緒にララシア、か……行きたい気持ちもあるけどね?

「……旅行ってことだよね。ちょっと、心の準備がというか」

 これは私の本音でもあった。申し訳なくはしつつも、そこはきちんと断りをいれないと。
「……」
「エドワード君……?」

 エドワード君は黙ってしまった……ずっと黙ったまま。結果、断ってしまったわけだし、気分悪くさせちゃったよね――。

「……わかった! そうだな、そなたはそうであったな」

 エドワード君は不機嫌どころか、笑顔だった。うんうん、と一人で頷いてもいた。断るだけだったし、補足もしておくことにした。

「お誘いは嬉しいんだ。でもね、旅行ってこう、泊まりでもあるわけで。私はそこまで心の準備とか。そもそも――付き合ってないというか」
「……む、意外とはっきり言うのだな。恋愛絡みとなると、特にだな。立派な防衛線を築くのだな。わりと、そうだろう?」 

 エドワード君は不敵に笑う。

「う……」

 私は観察されているようで、居心地がよろしくなかった。

「まあよい、まあよい――さあ、余は寝るとするぞ!」
「わっ」

 エドワード君は瞬時に横になった。私の膝の上に頭まで乗せちゃって……それだけではなく。

「ちょっ……」

 私の腰に腕も回した。より密着することになってしまった。私はそれとなく離れようとするも。

「時間になったら起こしてくれ……」

 しっかりと、強く――縋りつくようだった。

「もう……」

 ……私は拒むことはなかった。私は払いのけることなんて、できなくて。
 可愛い――愛しいと思っていたから。

「ぐーぐー……」

 寝息は聞こえてきている。寝ているのかな? 私は彼の髪の毛を撫でていた。優しく繰り返す。

「……む」
「あれ、起きてた?」
「……。すうすう……」
「……寝てるんだよね?」

 うん、寝ているはず。信じておこう。


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