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第四章
縋られる日々――ララシア④
「――ほら、明日の待ち合わせの時間。それだけじゃなくて、泊まるところのこと。あそこ絶対高いでしょう。私、払えるかなって。そこで分割の相談とかしたくて」
「なっ……」
「あと、皆さんや君の寝泊まりもどうするのかなって。全員があのホテルなら、良心の痛みは減るんだけどね? もしかしたら、船で寝泊まりかなってなったら、それこそだし」
「そ、そういうところだっ」
私の立て続けの質問に、エドワード君は大声を出してきた。なんか憤慨していない?
「……ああ、そうだ。このような女子ぞ……よい、答えるぞ。明日の待ち合わせは、午前中に訪れてくれればそれでよい。余は泳いで待っておる。いくらでも待てるぞ」
「そうは言われても」
「それでよいのだ。そなたも長旅の疲れもあろう。ゆっくり休むが良い」
「……早目に来るようにはするね」
私、時々思うんだ。やっぱり、エドワード君は大人びた表情をすると。年下であることを忘れるくらいに。
「……で、その、あれだ。泊まりについてだ。そなたが泊まるところは、余が……我らが所有しているものだ」
「え!」
言い直したのも気になるところだったけれど、あの豪勢な建物が所有していることが、あまりにも衝撃的過ぎて。私はそのことが頭から離れなくなってしまった。
「……ああ、そうだ。そなたのことだ。よもや船に泊まる気ではあるまいな?」
「それも考えたけど。でも、迷惑にもなるかなって。だから泊まるところも悩みの種で」
「ならぬ! ならぬぞ、シャーロット殿! そなたはもう、歓待を受けたではないか。ちゃっかり服も着用しているではないか! 似合うぞ! どこぞの姫君かと思ったわ!」
「ほめ過ぎだと思うけど、ありがとう……?」
エドワード君は怒ったり褒めたりしていた。私は笑っておくだけで。
「ララシアは素晴らしい国だ。――シャーロット殿。招待したのは余だ。そなたに大いに満足してもらいたいのだ。だから……余の気持ちを汲んでくれぬか?」
「……うん、それじゃ。ありがとうございます」
「うむ」
エドワード君のこの目に……私は弱かった。
「でも本当にいいの? エドワード君たち、船に寝泊まりで」
「よいのだ」
エドワード君は即答してきた。
「ああ、よいのだ。確かに余はそちらに泊まることもできる。だがな、そなたは嫁入り前だ。別室といえど、余の心がな、それはまだ早かろうと! 別室だろうとだ!」
それも、顔を真っ赤にしながら。胸元を抑えながら。
「嫁入り前。別室」
「……可笑しいと思うだろう。だが、それが余だ。男女とは、慎みあるべきだ!」
反芻した私を、エドワード君は気まずそうに見ていた。気まずいって思うところ、ある? ないでしょう?
「うん、いいと思う。そうだと思うよ!」
私はしきりに感心していた。もちろん、同意も。
「……そ、そうか。だがな、膝枕や抱きしめるのは良い」
「え」
「あれらは、お互いの心を通わせる為のものだ。よって、咎められることはない」
「……」
エドワード君の謎基準に、私は何も言えなかった。ただ、無言というわけにもいかないので。
「私はハードルが高いので……慎もうかな」
「なんだと! 何度もしたではないか! ほら、そなたからもやってくれても良いのだぞ!」
「……何度もってほどじゃ。やっぱり、ハードル高いので」
「むむ……難儀なる者よ」
エドワード君は頭を抱えていた。理解しがたい、とか呟いてない? エドワード君?
「……むう、頭を抱えたままではいけない。余は切り替えるぞ! シャーロット殿、馳走になった。彼らにも渡しておく」
「うん、こちらこそ。ごちそうさまでした。よろしくね。あと、頑張ってね」
「うむ!」
休憩時間の終わりのようだった。また鬼仕切りが繰り広げられるんだろうなぁ。
「すぴー……」
「あらら、寝てる」
満腹になったリッカは寝ていた。私はそのまま抱っこした。このまま起きないようなら、一度ホテルに連れ帰ろうとしていたところ。
「……はっ! 僕、寝てた?」
寝ぼけた子犬の第一声がそれだった……いや、一声って。
「……」
呆気にとられているのは、エドワード君だった。信じられないといった目をしていた。
「そ、そ、空耳じゃないかな! というか、よその子の声じゃない?」
「……う、うむ。さて、余は戻るな。明日を楽しみにしておるぞ」
エドワード君はスルーしてくれたのか、私の言葉を鵜呑みにしたのか。何はともあれ、言及はされることはなかった。
「くーん……」
エドワード君がいなくなった後で、リッカはめげていた。リッカ、大丈夫だよ? と、彼を軽く撫でた。
「……あれ、エドワード君って」
私はふと気になった。店主さんが仰っていたこと――明日の夜、儀式が行われると。とても大事な儀式のようだし、そのことに触れても良かったでしょうに。
「うーん……」
忘れていただけなのかな……?
「なっ……」
「あと、皆さんや君の寝泊まりもどうするのかなって。全員があのホテルなら、良心の痛みは減るんだけどね? もしかしたら、船で寝泊まりかなってなったら、それこそだし」
「そ、そういうところだっ」
私の立て続けの質問に、エドワード君は大声を出してきた。なんか憤慨していない?
「……ああ、そうだ。このような女子ぞ……よい、答えるぞ。明日の待ち合わせは、午前中に訪れてくれればそれでよい。余は泳いで待っておる。いくらでも待てるぞ」
「そうは言われても」
「それでよいのだ。そなたも長旅の疲れもあろう。ゆっくり休むが良い」
「……早目に来るようにはするね」
私、時々思うんだ。やっぱり、エドワード君は大人びた表情をすると。年下であることを忘れるくらいに。
「……で、その、あれだ。泊まりについてだ。そなたが泊まるところは、余が……我らが所有しているものだ」
「え!」
言い直したのも気になるところだったけれど、あの豪勢な建物が所有していることが、あまりにも衝撃的過ぎて。私はそのことが頭から離れなくなってしまった。
「……ああ、そうだ。そなたのことだ。よもや船に泊まる気ではあるまいな?」
「それも考えたけど。でも、迷惑にもなるかなって。だから泊まるところも悩みの種で」
「ならぬ! ならぬぞ、シャーロット殿! そなたはもう、歓待を受けたではないか。ちゃっかり服も着用しているではないか! 似合うぞ! どこぞの姫君かと思ったわ!」
「ほめ過ぎだと思うけど、ありがとう……?」
エドワード君は怒ったり褒めたりしていた。私は笑っておくだけで。
「ララシアは素晴らしい国だ。――シャーロット殿。招待したのは余だ。そなたに大いに満足してもらいたいのだ。だから……余の気持ちを汲んでくれぬか?」
「……うん、それじゃ。ありがとうございます」
「うむ」
エドワード君のこの目に……私は弱かった。
「でも本当にいいの? エドワード君たち、船に寝泊まりで」
「よいのだ」
エドワード君は即答してきた。
「ああ、よいのだ。確かに余はそちらに泊まることもできる。だがな、そなたは嫁入り前だ。別室といえど、余の心がな、それはまだ早かろうと! 別室だろうとだ!」
それも、顔を真っ赤にしながら。胸元を抑えながら。
「嫁入り前。別室」
「……可笑しいと思うだろう。だが、それが余だ。男女とは、慎みあるべきだ!」
反芻した私を、エドワード君は気まずそうに見ていた。気まずいって思うところ、ある? ないでしょう?
「うん、いいと思う。そうだと思うよ!」
私はしきりに感心していた。もちろん、同意も。
「……そ、そうか。だがな、膝枕や抱きしめるのは良い」
「え」
「あれらは、お互いの心を通わせる為のものだ。よって、咎められることはない」
「……」
エドワード君の謎基準に、私は何も言えなかった。ただ、無言というわけにもいかないので。
「私はハードルが高いので……慎もうかな」
「なんだと! 何度もしたではないか! ほら、そなたからもやってくれても良いのだぞ!」
「……何度もってほどじゃ。やっぱり、ハードル高いので」
「むむ……難儀なる者よ」
エドワード君は頭を抱えていた。理解しがたい、とか呟いてない? エドワード君?
「……むう、頭を抱えたままではいけない。余は切り替えるぞ! シャーロット殿、馳走になった。彼らにも渡しておく」
「うん、こちらこそ。ごちそうさまでした。よろしくね。あと、頑張ってね」
「うむ!」
休憩時間の終わりのようだった。また鬼仕切りが繰り広げられるんだろうなぁ。
「すぴー……」
「あらら、寝てる」
満腹になったリッカは寝ていた。私はそのまま抱っこした。このまま起きないようなら、一度ホテルに連れ帰ろうとしていたところ。
「……はっ! 僕、寝てた?」
寝ぼけた子犬の第一声がそれだった……いや、一声って。
「……」
呆気にとられているのは、エドワード君だった。信じられないといった目をしていた。
「そ、そ、空耳じゃないかな! というか、よその子の声じゃない?」
「……う、うむ。さて、余は戻るな。明日を楽しみにしておるぞ」
エドワード君はスルーしてくれたのか、私の言葉を鵜呑みにしたのか。何はともあれ、言及はされることはなかった。
「くーん……」
エドワード君がいなくなった後で、リッカはめげていた。リッカ、大丈夫だよ? と、彼を軽く撫でた。
「……あれ、エドワード君って」
私はふと気になった。店主さんが仰っていたこと――明日の夜、儀式が行われると。とても大事な儀式のようだし、そのことに触れても良かったでしょうに。
「うーん……」
忘れていただけなのかな……?
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