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第四章
縋られる日々――ララシア⑦
海岸にやってきた。朝早くても、人で賑わっていた。この中からエドワード君を探すことになると大変そう。そう思っていたけれど。
「あ……」
それは杞憂だった。私はすぐにエドワード君がわかった。海の中を自由気ままに泳ぐ。波乗りや泳ぎに来ている民にも、笑いかけている。そんな彼は眩しかった。
「ああ、シャーロット殿ー!」
エドワード君の方も気づいたみたい。海に浮かんだまま、大きく手を振ってきた。こちらも振り返す。
「早かったではないか。もっと寝てくれてても良かったのだぞ」
水着姿のエドワード君は砂浜に上がってきた。口ではそう言うも、なんだか嬉しそうだった。私でもわかるくらい。うん、これ以上待たせなくて良かったかも。
「……」
どうしても、昨日のご年配の方の言葉を思い出してしまう。私は無言になってしまった。
「シャーロット殿? どうしかしたのか?」
「……ううん、ぼうっとしてただけ。私達、しばらく浜辺でゆっくりしているから。君は泳いできたら」
私はハッとした。目の前にいるのは、不安そうにしているエドワード君だ。何でもないと、私は笑った。
「……わかった。そちらにパラソルがある。日差し対策はきちんとするのだぞ」
「うん」
エドワード君はまた海に戻ることにしていた。私も見送る。
「リッカ殿も、砂浜は暑いだろう。散歩も程々にな。水分もしっかりとねだるのだぞ」
「わんっ」
「では、またな」
エドワード君が遠ざかっていく。海に入り、波をかき分けていく。
「リッカ、お水飲もうね」
「わんっ」
携帯用のボウルに水を注ぐと、リッカはがぶがぶ飲んでいた。飲み終えると、彼は勇んで砂浜へ向かっていく。貝殻探しの旅に出掛けるようだ。
「あ、待って。私も行く」
リッカは見事に砂浜を駆けていた。私は砂浜に足をとられながらも、マッハな子犬を追いかけていく。
リッカからとっておきの貝殻をもらったり。魔法屋を模したものを砂浜で作ったり。屋台で買った果物を分け合ったり。私たちは陸の遊びを堪能していた。
「――あ、エドワード君」
エドワード君はというと。泳ぎはしつつも、しきりに私たちを気にしていた。どうやら気になっているようで、集中しきれてないともいえた。
「エドワード君、どうしたのかな」
私は泳ぐ彼を見た。もっと気持ちよく泳いでくれたらいいのに、そう思いながら。
「へっへっ」
「ふふ、リッカったら」
リッカは足を動かしていた。泳いでいるような動きに、私はほんわかとした思いとなった。
「リッカも泳ぎたくなっちゃった?」
「わんっ」
「そうだよね。気持ちはわかるなぁ。すいすい泳ぐもんね。そうだね、リッカも泳いでみない? ほら、浅いところから――」
「……」
リッカに凄い顔をされた。顔面に皺が集中するという、リッカ渾身の拒否顔だった。泳ぎたいけど、水に濡れるのは嫌。ジレンマまみれのワンコがそこにいた。
「くーん……」
元の可愛い顔に戻ったリッカは、私を見上げた。何か言いたげだ。
「……ええと、私も泳ぎたいかって?」
「……わん」
正解、だよね。リッカは気にしているようだった。私も思いっきり泳ぎたいのではないかって。水着をバックに入れていたのも、わかっているだろうし。
「いいんだよ、リッカ。砂浜にいるのも充分に楽しいから――」
「すまなかった!」
私がそう口にしたタイミングで、エドワード君が上がってきた。謝罪と共にでもあった。
「逢引だというのに、余はそなたらを放っておいて! 何のための逢引ぞ!」
「あ、逢引……とにかくね、こっちは気にしなくていいよ。君が楽しんでくれたら、それで。せっかくの故郷なんだし」
「……む、なんだろうな。この配慮されているような、敬遠もされているような」
「……いやいや、そんなことないって」
お互いが納得いかなかった。合間にいた子犬は不思議そうに見ていた。
「……! わんわんっ」
リッカは何かを閃いたのか、私のバッグに顔を突っ込んでいた。口にくわえて引っ張り出したもの――それは水着だった。
リッカは前足でぺしぺしと叩く……ええと、私は訳すのを試みた。つまり、泳いできてほしいってこと?
「へっへっへっへっ」
正解のようだった。リッカは前屈しながら尻尾を振っている。
「そんな……リッカを置いて泳ぐとか。私には無理」
「くーん……」
リッカはそれならと、去ろうとしている。また貝殻探しの旅に出ようとしていた。それなら、私もついていくまで――。
「……ふむ」
そんな様子を見て、エドワード君は思案していた。
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