春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

縋られる日々――ララシア⑨




 手を引かれて、私も海へと飛び込んだ。透明度の高いララシアの海は、泳いでいて気持ち良いものだった。エドワード君と手を繋いだまま、海中へと潜っていく。

「……!」

 私は水中で目を開けた。色とりどりの海の生き物たちや、サンゴ。見るもの全てが、鮮やかで奇妙で、心が楽しくなってきた。

 リッカも水の泡の中から眺めている。泳ぐ魚の群れを追いかけていた。私は微笑ましく見守っていた。

 エドワード君と手を繋いだまま、ゆったりと泳いでいく。流れに身を任せながら――。





「ぷはっ」

 私は海上に上がると、まず呼吸を繰り返した。思った以上に長く潜っていたようだった。隣にいるエドワード君は平然としていた。彼はまだ余裕で潜れそうだった。

「わふっ」

 リッカもぷかぷかと浮上していた。そして、私たちをじいっと見ていた。何やら羨ましそうだね?

「ふむ。これはいかがだろうか?」
「!」

 エドワード君が指を鳴らすと、水の玉ははじけ飛んだ。リッカはじたばたするも、すぐに落ち着いた。ワンコにぴったりな浮き輪が生じていた。

「へっへっへっへっ」

 リッカはご満悦だった。小さなあんよで泳いでいた。

「あはは、リッカ良かったねぇ!」
「わふっ」

 リッカはくるくると回っていた。リッカが楽しいと、私も楽しくなるから。無邪気に笑っていた。

「……シャーロット殿、楽しそうだな」

 心から楽しそうにしていた私を、エドワード君は見つめていた。

「……うん、本当に楽しい。楽しいんだ」

 こんなに笑うこと、最近ではなかった。
 リッカといることもそう。だけど、それだけじゃないって……それは私も気づいていたから。
 だからこそ、実感を込めて。

「君といると、笑えるんだ」
「……そうか」

 エドワード君は目を細めて笑った。それから私の頬に手を添えて――。

「……え」

 青い瞳と茶色の瞳が重なる。お互いの瞳はそらされることもなく、彼の顔が近づいていく。

「……シャーロット殿」

 エドワード君が、私の名を呼ぶ……こんな彼の声は聞いたことはなかった。こんな、吐息混じりの掠れ声など。
 私はどうしていいか、わからなくなってしまう。

「……」

 エドワード君は瞳を閉じて、さらに距離を近づけていく。私は――。

「……?」

 私はその場で固まってしまった。いいのかなって……だって、これ以上は――。

「……ふう」

 エドワード君の溜息が聞こえた。うん……『そういう』流れだったのかも。でも、私は……。

「……今は、これで充分だ」

 お互いの唇は重なることはなく。エドワード君は額をこつんと合わせた。優しい声で彼は伝えてくる。

「――シャーロット殿。余もそうだ。こうして笑い合っていたい……ずっと」
「……っ」

 ……トクンって。私の心臓は鳴ってしまった――。






 地上に戻った私たちは、街に繰り出すことにした。

「む――主人よ、いただけるだろうか」
「まいど!」

 エドワード君はふらりと露店に立ち寄った。そして即決していた。

「まずは、リッカ殿だ。涼しい素材だぞ」
「わんっ」

 リッカは水色のケープをかけられた。特殊な素材なのか、リッカは暑がることもない。尻尾を振って感謝の気持ちを示していた。

「ありがとう、リッカの為に」
「なんの。そして、シャーロット殿。失礼」

 私の首にかけられたのは、サンゴのネックレスだった。

「ありがとう……いいの?」

 エドワード君はさらりと買っていたけど、いい値段がするよね……!?

「良いのだ。恰好つけさせてくれ」
「でも悪いよ」
「ほんに、そなたは……」

 私は頑なに遠慮していた。贈り甲斐がないとエドワード君は呆れるも、気を取り直していた。

「ああ、それこそシャーロット殿だ。ならば、余は手作りを所望す!」
「え、手作りでいいの?」
「よいのだ! 手編みのセーター、マフラー、手袋! 愛情たっぷりの手料理! お返しというのなら、余はそれらを望むまで! 余はな、リッカ殿のケープが羨ましくてな……指をくわえて見ておったのだ」

 エドワード君に熱弁された。私もそれならと承諾することにした。せめて、素材は奮発しようかな。リッカの分の感謝も込めて。

「お熱いお二人さーん! うちでも買っていってくれよー!」
「へい、らっしゃい! お、今日も来てくれてありがとうね。いつものやつ、入ってるよ!」
「あんた、オメデタだって? ああ、重いものはこっちに任せておきなっ!」

 人々の声が飛び交う。民同士でも交流は栄えており、助け合っていた。活気と笑いが溢れる場所なんだね……。

「ははは、これぞララシアぞ!」

 エドワード君は高らかに笑った。

「うん、とても素敵な国だね……」

 人も温かく、幸せに満ちていた。

 エドワード君が愛してやまない国。それが私にもよく伝わっていた。



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