春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
331 / 557
第四章

ララシアの真実は



 空が白み始めていた。二人は並んでソファに座って、海を眺めていた。私は彼にもたれかかっていた。彼の体温が心地良いと。ずっとこうして触れていたいと思っていた。

「……夜が明けるな。ふふ、こうして迎えるとはな」
「うん。結局、お泊りしちゃったね」
「う、うむ……どうこうしたわけではないが、泊まってしまったわけだ」

 しどろもどろになっている君が可愛い。私は悪戯めいた笑みを浮かべ、彼の顔を覗き込む。海を溶かしこんだような青い瞳、私の好きな色。いつまでも眺めていたいと――。

「……目の色? うっ!?」

 ……いつもの温かな茶色の瞳ではない。エドワード君に限ったことではない。彼も。あの彼も。彼女だって。瞳の色が告げていたこと、それは――。

「うう……」

 私の頭は痛み出す。頭に警鐘が鳴り響く。違う、これは違うのだと、私の心が叫んでいる。

「――リッカ!?」

 エドワード君の体を押して遠ざけ、ベッドの方を見た――大切なあの子の姿はなかった。

 そんな……ベッドの近くまで駆け寄るも、同じこと。

 あの子が、いない。いない……!!

「シャーロット殿……どうかしたのか?」

 様子がおかしい私を追ってか、エドワード君も立ち上がっていた。私を案じる彼。

「うん……どうかしていた」

 頭の中がようやくはっきりしてきた。私はエドワード君と距離をとった。

「エドワード君。私はね……君の幸せを壊すこと。それを君に言いたいの」
「そなたは何を……」
「ううん、聞いてくれないとしても。だとしても、私はここには居られない」
「何なのだ、一体何を……!!」

 エドワード君が声を荒げている。こんな荒ぶる彼、見たことがなくて……それだけのこと、なんだ。

「それでも私は……!」

 私は後には引けない。このまま告げなければ。
 ――自分たちも。そして、エドワード君もそうだ。彼の未来もまた、閉ざされるだろうと。

 だから、私は宣告する。

「私は……知っているんだ。この国の真実、それは――」
「や、やめろ……やめてくれ……」

 エドワード君は言わんとしていることを察知したのか、私に懇願してきた。

「お願いだ、シャーロット殿……!」
「……」

 ……胸が苦しくなった。いつもなら、すぐにでも止めていたでしょうね。見ていられないから、辛い思いをさせないからって……それでも、意を決して、言葉にした。

「――ララシアは五年前に滅んだって」

 これがおじいさんが語った真実。私たちに聞かせてくれたもの。

「こうしてあるのは、幻だから。全部……全部がそう。温かい人たちも、賑わっている市場も。豊かな自然も……全部が」

 全部が。

「何者かによって作り上げられた幻。君は……そうだと知った上で、そのままでいた。受け入れた」
「……ああ」

 エドワード君は膝から崩れ落ちた。絶望しきった顔だった。

「……エドワード君。君はこの国を守りたかった。大切に思っていた。あの人はね、私に教えてくれた」
「余が、余が……滅ぼした、か。あの翁、そこまで教えたか」

 エドワード君は忌々しそうに言っていた。君が滅ぼした……私は待ってと呼びかけるも この声は届いていない。

「……そうだ。当時の余が、儀式を……儀式を」

 エドワード君は言葉に詰まる。それでも、彼は伝えようとしていた。

「余が……神聖なる場に出しゃばったのだ。結果、儀式をぶち壊してしまった。荒ぶる水の女神を誰も制御は出来ず、ララシアは一夜にして――」

 エドワード君は当時を思い出したのか、胸元を抑えていた。彼は荒い呼吸を繰り返した。

「エドワード君、聞いて」
「……」
「……話すね、続きがあるの。君が滅ぼしたんじゃない。本当は違うんじゃって。おじいさん、気にしてたよ……君は聞く耳をもたなかったけど」
「……」
「君のせいじゃない。君には悪いことをしたって。だから、今も留まっているって――」
「……」

 これでは私が一方的に話しているだけだ。私は落胆した。

「……結局は」

 エドワード君がようやく話しだした。

「……結局は、滅びたではないか。たった一夜にして」

 エドワード君は顔を歪めながら……そう言った。

「……翁のは気休めよ。あの時の余は過ちを犯した。余が至らなかった故でもあった。翁がどう口にしようと、それは覆らぬ」
「でもね……!」
「――それでも、ララシアはこうして現存している。何が真実か……目に見えるものが真実よ。シャーロット殿。そなたは何故、壊そうとしているのか」
「……」

 エドワード君がゆらめくように立ち上がった。生気のない表情に、私は怯みかける。それでもここで負けてはいられない。
感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。 ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。 ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。 それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。 その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした

影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。 若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。 そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。 ……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。