春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

君だけなら、ずっと


「な、何をしているのだ、そなたは……無意味なことを……」

 ……わかってる、時間稼ぎだ。でもね、君は今、動揺している。今なら話せるよね? 話したいこと、伝えたいことがあるの――事件のことがわかったからこそ。

「エドワード君。君がどれだけララシアを想っていても。守る為だったとしても。正しいなんて思えない。君は、今の自分を誇れるの?」
「……何だと言うのだ。誇りというのなら、余は正しき事と」

 邪魔をしたあげく、説教までしてきた。ああ、エドワード君、苛立っているよね。
 私だって譲らないよ。

「……おじいさんも、海賊団の人達も。暮らす人達もそう。守ってるっていうけど、胸張って言えることなの? 罪もない人を殺して守りましたって!」
「……!」

 エドワード君の動きは止まる。ただ、手にした武器を離すことはない。

「……それが、それがララシアを滅ぼすことに」

 エドワード君の瞳は揺れていた。青と茶の色が混じり、乱れている。それでも、これがララシアを守る事だと信じようとしているんだね、君は……。

 ……ねえ、エドワード君。

「ララシアはもう、滅びたんだよ……」
「……!」

 エドワード君の悲痛そうな表情を見て、私は苦しくなった。言葉にしてしまった。それでも、もう引けなかった。黙ったままの彼に語り続ける。

「……おじいさんに聞いた話、まだあったの。私だって、今すぐってって思ってなかった。でも……そうも言ってられないって」

 あの人が語ってくれた真実の一つ。私がララシアという幻を諦めた……決定打となった事。

「きっと君には知らせてなかったんだ。君もそれどころじゃないって。だから、君は気づかないままだった」

 話によると、エドワード君は心の傷を負っていた。被害を免れた場所で篭り続けていたという。だから、君は……知らないままだったんだ。

「ララシアは……瘴気に犯されている。あの日の儀式から、ずっと」
「な……」

 エドワード君は目を見開いていた。本当に知らなかったようだった……。

「幻を見ていられる君はいいかもしれない。その下で、君が大好きだった場所は蝕まれている――水の女神様も、もしかしたら」

 水の女神の力がもっと……全盛期のような力があれば。もっとどうにか出来たんだろうね。エドワード君の魔力の浸食を許してしまっているのが、その確たる証拠なのか。

「……君に影響はないから。そんな魔力で守られている君ならね。君だけなら、ずっと」
「う……うわぁ……」
「ずっと、夢を見ていられるね」
「あああ……」

 エドワード君は呻いていた。私は痛む心のまま、続ける。

「でも、ララシアは無くなったわけじゃない。おじいさんや、生き残っていた人達もいる。君が、エドワード君がいるんだよ」
「余が……」

 エドワード君は呆然としていた。手にしていた宝刀が――地面に落ちる。戦意の喪失を意味するのか。

「……ふふ、とんでもない女子ぞ。それを聞いた余が、どうすると思う。余は……余は」

 エドワード君は昏い顔をしていた。それでいて、どこか惑ってもいるようで。

「君はまだ……」
「……尚更だ。このままならまだ、まだ……ララシアは、美しい祖国でいられる」

 エドワード君は落とした宝飾刀を拾い上げる。そう、と私は呟く。

「……君の魔力の方が強いから、砕かれるかも。でもね」

 ふらつきながらも、エドワード君は氷漬けの彼女に近づいていく。その間に立つのは私だ。遮る者として、彼の前に立つ。

「どいてくれ、シャーロット殿」
「どかない」

 私は口だけでは立ち退く気はなかった。力づくしかないよ、私をどかすには。でもエドワード君はまだ、口で訴えようとしていた。

「頼む……! 余は、そなたには……!」
「どうして。私も暴露するよ」

 そう、今は厳しいから見送るだけ。私だって機をみて暴露する気だった。


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