春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

さようならだ、シャーロット殿――


 複数の足音がやってきた。瞬時にやってきた彼らは、私たちを包囲した。
 ――金糸雀がまたしても、私の命を奪いにやってきたんだ。

「クラーラ様の救助が最優先。そして――シャーロット・ジェム並びに横の男も捕らえよ」
 金糸雀隊の女性が指示を出す。他の隊員は散り散りになる。
「……長、よろしいですね?」
「……」
「……ふう、よろしいということで」

 指示は出すも、女性はトップではない。長と呼ばれた人物は、ろくに動きも喋りもしなかった。そのようなトップはさておき、金糸雀隊は詰めていく。

「……」

 実際に氷漬けにしたのは私だ。今回ばかりは金糸雀隊にも正当性はある。そうだとしても、むざむざやられるわけにはいかなかった。

「……せっかく、クラーラさんも生きているんだ。彼だって、手を下していない」
「お前は何を言っているのです」
「あなたたちには理解できないことだよ」
「なっ……ごほん」

 結果的に挑発に……ううん、いい。言いたいことあるんだ。

「信じないと思うけど、横の子、無関係だから。調べればわかるでしょ……誰がやったのか。ううん、いつも強制的に私を犯人扱いしているんだから」

 エドワード君に伝わってほしかった……このまま逃げてほしいと。

「……違う、違うぞ! 発端は――」
「関係ない人は黙ってて!」
「!」

 私にしては大きい声が出た。この声に、エドワード君も体が竦んでいた。

「……罪人が生意気な口を」
「長、始末は我々にお任せを――」

 覆面の下はさぞ、怒り狂っているだろう。金糸雀隊が牙を向く。それを制したのは、女性だ。

「待ちなさい。その者は断頭台にかけられる手筈となっております。巫女様に危害を加えた罪はあまりにも重い――衆目に晒すのです」
「断頭台……」

 長である彼が、ようやく沈黙を破った。女性はそうです、と頷いた。

「ええ……長もそう仰せです。さあ、捕らえるのです!」

 その言葉を合図に、一斉に襲いかかった。

「……余は他人だ。他人ぞ。だがな、多勢に無勢ぞ! 相手はうら若き乙女ぞ!」

 私の願いは汲み取らず、エドワード君は応戦した。

「何故そなたを見捨てられるというのか。見くびられては困るぞ」
「……うん」

 私はごめんと呟いた。

「……そうだよ。皆生きているんだ。私だって!」

 私も力を振り絞った。金糸雀隊の女性が執拗に攻撃してくるのを躱し。

「やられているばかりじゃない!」
「……ひゃっ!」

 女性の喉元に氷の刃をつきつけた。怯んだ彼女に足払いをかけた。尻餅をついた彼女は、私を見上げた。覆面で表情はわからないけれど、悔しさが全面に伝わってくる。

 エドワード君も私も応戦していた。彼の強さもさることながら、私はこれまでの恨みもあったから。疲れたなんていってられないんだ……!

「……」
「……」

 金糸雀隊はやられっぱなしだった。それが屈辱だったのか――彼らの様子は一変した。
 息が荒くなる。興奮気味になった彼らは、獣のように猛り声を上げた。

「……まずい」

 一人冷静だったのは、長だけだった。彼だけが、というのも不思議だけれど……。

「――」

 長は人語ではない、聞きなれない言語で話しかけていた。それでも、金糸雀隊の暴走は止まらない。
 考えあぐねいた彼は、言葉をもらす。その内容は――。

「……このままでは彼女は。断頭台は……駄目だ。それだけは駄目なんだ……。それではあんまりにも……!」
「え……」

 いつもとあまりにも様子が違い過ぎる……? その声に気をとられている間に――。

「――我が、終わらせる」
「!」

 一瞬にして間合いを詰められた。相手は本気だ。本気で私を殺そうとしている……!

「ど、どうして!?」

 私は押されながらも、必死に攻撃を回避していく。その最中でも、疑問を抱かずにはいられなかったことがあった。
 私を捕縛せよ、それが彼らへの命だ。それを長である彼が違反をしているのだから。

 命に背いてまで、彼は自分の手で終わらせようとしていた。それも……断頭台による終わりを拒むかのように。
 まるで――温情をかけるかのように。とても信じ難いことだった。

「無駄口を叩くか。舐められたものだ」
「……!」

 この人の思惑どころではない。ここでやられるわけにはいかない。私は気を引き締めた。

「……シャーロット殿。そなたはそうして、これまでずっと――」

 エドワード君が私の名を呼ぶ。私を案じるように。私の境遇を慮るかのように――。

「余はな、そなたに生きていて欲しいのだ……そなたが生きていれば――余はどうなってもよい」

 エドワード君の様子がおかしい。あの時、彼が涙を見せてくれたこと。それで戻ってくれたと思っていたのに。なのに彼は『また』――。

「……ねえ、エドワード君?」

 目が合った。このような状況下なのに、エドワード君は穏やかに笑っていた。どこまでも大人な顔つきで――何もかも諦めたような顔で。

「――さようならだ、シャーロット殿」
「!」

 エドワード君は目をそらした。もう私を見ることはないと――。
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