春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

水の鳥籠


「……余の思いに応えてくれ」
 エドワード君は首飾りに触れ、瞳を閉じる。そして、改めて瞳を開く――青い瞳が強く輝いていた。

「――跪け、脆弱なる者ともよ」

 エドワード君は呟きと共に、尊大な笑顔を見せた。

「余は王者よ! 下賤なる者よ、誰に刃を向けておるのだ! 身の程を思い知るが良い!」
「くっ……! 過ぎた口を!」

 激昂した金糸雀隊が襲いかかるも、エドワード君は水の力に守られていた。びくともしない。

「そうだ、思い知るが良い。命の重さを。それは、余にも言えることぞ……」

 エドワード君は手をかざすと、金糸雀隊諸共水の中に閉じ込めた。それを手で操り、遠くへと放った。

「命までは奪らぬ。母なる海の中、彷徨い、考えるのだ……」

 エドワード君は海に思いを馳せると、語りかけた。

「母なる海よ、我が祖国ララシアよ。我は参る。参り、守ると誓う。そこは不可侵なる聖域。
侵略も許されぬ――そなただろうとだ」
「エドワード君、待って!」
「……これが、余の幸せ。余が求めている未来だ」

 エドワード君はこの言葉を残すと、彼もまた水に包まれ。
 ――そのまま姿を消した。

「ああ……」

 私は悟ってしまった。彼はきっと、ララシアへと還っていった。

 不可侵とも言っていた。そう、外部の人間が入ることもなく。

 彼は夢に囚われたままでいる気だ。

「こんなことって……」

 エドワード君はきっと、正気に戻っていたんだ……。それなのに、暴走した金糸雀隊を退ける為に。私を守る為に。

「こんな……」

 私はよろめきながらも、エドワード君の後を追おうとしていた。すぐにでも追いつきたい。それなのに。

「くっ……」

 体が思うように動いてくれない。自分が思っている以上に、体は疲弊していた。

「エドワード、君……」

 力も魔力も使い果たした私は、ついには立っていられなくなり。

 その場に倒れ落ちた。





「……?」

 私は水の中にいた。エドワード君を追って、海の中に入ったのか。そう思っていたけれど。

「……」 

 すぐに違うと悟った。この空気感、馴染みのあるものだった。ここは、水の中。けれども。 ――鳥籠の夢の中だと。

「あ……」

 夢の中と認識したからか、私は喋れるようになっていた。元々そうだったのかもしれない。
 私は水中で丸くなって浮かんでいた。泳げるようでもあったので、端まで泳いでみることにした。

「うっ」

 途中ではじき返された。私は改めて形状を確認する。どうやら円形になっているようだ。泡そのものだった。

「……そっか」

 その中に私は閉じ込められていた。天井部にあるのが、扉にあたるものだった。前からある錠前たちに加え、新たなものが出現していた。それは見たことがないものだった。
 双剣を模したものが、巨大となって陣取っていた。剣自体は覚えのあるものだった。それらが、私を守るかのように存在していた。

「……君、なんだね」

 実に彼らしいと思った。

「……でも、エドワード君はもう」

 鳥籠はエドワード君を模したまま――本人は私との別れを選んだ。
 ララシアを封鎖したのも彼、もう会えることもないと……。

「……」

 私は水の中を揺蕩う。こうしてエドワード君に囚われたままだ。ララシアもまた、健在のまま。

「私は……」

 これからどうなるのかな……思考が落ちていく。

 自身が罪人確定してから、生きていること。これまでにないパターンだった。これから先は本当にどうなるのか、それがわからない。

 私は夢の中を彷徨い泳いでいた。無心となって泳ぎ続けていた。このまま……泳ぎ続けたい。夢から覚めたら、どう事態が転んでいるかわからない。

 怖い。
 怖いんだ。

「うん、怖いよ……でもね」

 うん、生きている。まだ終わったわけじゃない。

 今だけは、時間が許す限りと。私は水に包まれていた――。


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