春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
339 / 557
第四章

水の鳥籠

しおりを挟む

「……余の思いに応えてくれ」
 エドワード君は首飾りに触れ、瞳を閉じる。そして、改めて瞳を開く――青い瞳が強く輝いていた。

「――跪け、脆弱なる者ともよ」

 エドワード君は呟きと共に、尊大な笑顔を見せた。

「余は王者よ! 下賤なる者よ、誰に刃を向けておるのだ! 身の程を思い知るが良い!」
「くっ……! 過ぎた口を!」

 激昂した金糸雀隊が襲いかかるも、エドワード君は水の力に守られていた。びくともしない。

「そうだ、思い知るが良い。命の重さを。それは、余にも言えることぞ……」

 エドワード君は手をかざすと、金糸雀隊諸共水の中に閉じ込めた。それを手で操り、遠くへと放った。

「命までは奪らぬ。母なる海の中、彷徨い、考えるのだ……」

 エドワード君は海に思いを馳せると、語りかけた。

「母なる海よ、我が祖国ララシアよ。我は参る。参り、守ると誓う。そこは不可侵なる聖域。
侵略も許されぬ――そなただろうとだ」
「エドワード君、待って!」
「……これが、余の幸せ。余が求めている未来だ」

 エドワード君はこの言葉を残すと、彼もまた水に包まれ。
 ――そのまま姿を消した。

「ああ……」

 私は悟ってしまった。彼はきっと、ララシアへと還っていった。

 不可侵とも言っていた。そう、外部の人間が入ることもなく。

 彼は夢に囚われたままでいる気だ。

「こんなことって……」

 エドワード君はきっと、正気に戻っていたんだ……。それなのに、暴走した金糸雀隊を退ける為に。私を守る為に。

「こんな……」

 私はよろめきながらも、エドワード君の後を追おうとしていた。すぐにでも追いつきたい。それなのに。

「くっ……」

 体が思うように動いてくれない。自分が思っている以上に、体は疲弊していた。

「エドワード、君……」

 力も魔力も使い果たした私は、ついには立っていられなくなり。

 その場に倒れ落ちた。





「……?」

 私は水の中にいた。エドワード君を追って、海の中に入ったのか。そう思っていたけれど。

「……」 

 すぐに違うと悟った。この空気感、馴染みのあるものだった。ここは、水の中。けれども。 ――鳥籠の夢の中だと。

「あ……」

 夢の中と認識したからか、私は喋れるようになっていた。元々そうだったのかもしれない。
 私は水中で丸くなって浮かんでいた。泳げるようでもあったので、端まで泳いでみることにした。

「うっ」

 途中ではじき返された。私は改めて形状を確認する。どうやら円形になっているようだ。泡そのものだった。

「……そっか」

 その中に私は閉じ込められていた。天井部にあるのが、扉にあたるものだった。前からある錠前たちに加え、新たなものが出現していた。それは見たことがないものだった。
 双剣を模したものが、巨大となって陣取っていた。剣自体は覚えのあるものだった。それらが、私を守るかのように存在していた。

「……君、なんだね」

 実に彼らしいと思った。

「……でも、エドワード君はもう」

 鳥籠はエドワード君を模したまま――本人は私との別れを選んだ。
 ララシアを封鎖したのも彼、もう会えることもないと……。

「……」

 私は水の中を揺蕩う。こうしてエドワード君に囚われたままだ。ララシアもまた、健在のまま。

「私は……」

 これからどうなるのかな……思考が落ちていく。

 自身が罪人確定してから、生きていること。これまでにないパターンだった。これから先は本当にどうなるのか、それがわからない。

 私は夢の中を彷徨い泳いでいた。無心となって泳ぎ続けていた。このまま……泳ぎ続けたい。夢から覚めたら、どう事態が転んでいるかわからない。

 怖い。
 怖いんだ。

「うん、怖いよ……でもね」

 うん、生きている。まだ終わったわけじゃない。

 今だけは、時間が許す限りと。私は水に包まれていた――。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します

恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。 なろうに別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。 一部加筆修正しています。 2025/9/9完結しました。ありがとうございました。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます

山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった 「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」 そう思った時すべてを思い出した。 ここは乙女ゲームの世界 そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ 私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない バットエンド処刑されて終わりなのだ こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

処理中です...