春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
340 / 557
第四章

あんたが望む場所は

しおりを挟む


 ごわついた布団。冷えた空気。美味しそうな匂い。ここは水の中ではない。ここは――。

「ここって……」

 私はベッドの中で目を覚ました。自分の家でも寮のものでもない。周囲を確認する。なんとなくだけど、覚えのある場所だった。服は誰かの借り物だ。これも記憶にあるものだった。

「……あ」

 ベッドの近くにあったテーブル。その上にあったのが、珊瑚のネックレスだった……エドワード君からの贈り物。寝ている時に、誰かが外しておいてくれたのかな。

「あの時は本当に楽しかったから。本当に……」

 私は手放せなかった。身に着けるまでは出来なかった、こっそりと服のポケットにしまい込むことにした。




 私は部屋を出た。誰かが料理をしているようなので、匂いを辿っていった。

「――シャーロット。目が……覚めたんだね」
「……!」

 台所から少女が出てきた。泣き腫らした目をした、エプロン姿の少女。

「……なんなのよ、もう。あんた、ララシアに行ったきりになって。こっちからは何も出来なくなってて……しかも森の中で倒れてるし」
「リナさん……」
「でも……いいの。無事だったから」

 私も泣き出しそうになった。こうして会えたことに気も緩みかけていた。

「……私、よく状況がわかってなくて。皆、無事だって信じたいけど」
「うん、リっちゃんもアイツらも大丈夫だから。つうか、ここまで運んでくれたのはアイツらだし。でも、大男の出入りは目立つでしょ? だから、別の場所で待機」

 リナさんはいきさつを語ると、台所の方を見た。私の為に用意したご飯なんだって、教えてくださった。

「今はともかくね、食べること!」
「はい……!」

 リナさんにしっかり言われた。いつもの彼女に、私もようやく笑うことができた。




 そうなんだ。ここはリナさんが昔、暮らしていた家だ。

「隠れるにはうってつけでしょ。まあ……長くはいられないけど」
「うん……。リナさん、改めまして。連れてきれてくれてありがとう」
「いいのいいの」

 ご飯を食べ終え、椅子に座って一息ついていた。落ち着いて話がしたいと、リナさんはお茶も出してくださった。いただきます、と私は口に含んだ。ホッとする味……。

「話、するね。状況は良くないの。それはわかってると思うけど」
「はい」
「だね。あんたは……指名手配をされてる。ま、これは不幸中の幸いかなぁ……? 金糸雀隊、だっけ。あいつらが追いかけて来ないから」
「うん……そうだね。それは……」

 エドワード君が彼らを封じてくれたから。追跡するとなると、金糸雀隊がいかに秀でていたのか。今彼らが動けない分、行動はしやすい。

「エド・クラウンがやってくれたから。あんたを助ける為にね。一生会えなくなっても……ってところかな」
「……!」

 リナさんは妙に鋭くもあり、理解もしているようだった。わかるのよ、と彼女は面白くなさそうに呟いていた。

「金糸雀隊が復活したら困難になる――その間に決断してほしいの。この国に留まるのも、潜伏生活覚悟なら出来なくもない。国外にだって、ツテはあるから。モルゲン先生がね、動いてくれたから」
「モルゲン先生が……」
「そうそう、モルちゃん様様なんだから。……もちろん、私達だっていくらでも力になるんだからね」
「……ありがとう、嬉しい」

 追われる身となった私に対して、味方でいてくださる。彼らの温かさを嬉しく思うも。

「……でも、ごめんなさい。私、どうしても行きたい場所があって」

 これだけよくしてくれているのに。それでも私が望む場所は、ただ一つ。
 ――ララシアなんだ。エドワード君が待っている場所へ。

「とても、困難な場所から。皆さんの負担に……ふぎゅっ」

 私が負い目を感じていると、リナさんが両頬を押し込んできた。面白い顔になってしまったからか、彼女は噴き出していた。まだ、クスクス笑っている。

「ふふん、私達はね、とっくにお見通しなのよ。あんたならそうするって」
「ふぃふぁふぁん」
「そんな、あんただから……私達は」
「ふぉふぇ」
「……締っまらないな、これ。ごめんごめん」

 リナさんは私の頬を戻した。悪びれもなく謝りつつも、微笑んでいた。

「……私達の時みたく、救ってあげて。ね、助けようね?」
「はい……!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します

恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。 なろうに別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。 一部加筆修正しています。 2025/9/9完結しました。ありがとうございました。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます

山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった 「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」 そう思った時すべてを思い出した。 ここは乙女ゲームの世界 そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ 私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない バットエンド処刑されて終わりなのだ こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

処理中です...