343 / 557
第四章
航路は……ひとまず確保
「……!」
ララシアに到着直後、嵐に見舞われた。激しい雨が降り続け、雷鳴の音もする。
聞いていた通り、海は荒れに荒れていた。乗っている間も冷や冷やしたままだった。よく無事に着けたよね……。
「ねえ、シャーロット。エドクラの居場所って――」
リナさんは荒れ狂う天候の中、大声で尋ねる。この嵐の中でエドワード君を捜さないとならない――。
「……彼は、王だから」
「シャーロット?」
リナさんは首を傾げた、私の呟きが不思議でならないと。
「……すみません。なんとなく、でも確信しているの。彼は――」
私が隠し持っているサンゴのネックレスだ。どうしても手放せなかったものだった。
「宮殿にいる――海の上に浮かぶ、宮殿に」
私の目に映るのは、向こう側の空。儀式の時も、海の上に浮上して現れた宮殿。
「海の上って……つか、宮殿とか」
リナさんはげんなりしていた。まさか海に逆戻りにする羽目になるのかと。当然、船に乗って。それは難しかった。この高性能な船でも、ここまで辿り着いたのが奇跡だったくらい。
「海流が特殊だっていうし、乗せてきてもらってだけど……厳しいよね」
「はい……」
荒れる海を眺め、私たちは途方に暮れていた。
「……ううん。この国の船を探そう。まだ可能性はあるはず」
「シャーロット……うん、そだね」
ここまで来たんだ。諦めるわけにはいかない。
私たちは暴風雨の中、海岸線を歩く。
「……海賊船」
私が思い浮かんだのは、エドワード君たちが所有していたものだ。ただ、顔見知り程度の自分に貸してくれるのか、力になってくれるのか。彼らはエドワード君側の人間といっていい。
「何が何でも頼み込むしか――」
その海賊船自体も見当たらない。まずはそれから探そう、リさんナに提案しようとした時だった。
「へっへっへっへっ」
向こうからやって来るのは、リッカだった。ずぶ濡れになろうと構わず、全速力で向かってきている。
「リッカ!」
「わんっ!」
私は勢いづく子犬を受け止めようとした。そこで急ブレーキをかけて旋回したのはリッカだ。そのまま、引き返して走りだしてしまう。
「こっち! 僕についてきて!」
リッカは私たちを迎えにきたようだった。彼についていくことにした。
「あのねっ、船はねっ、大丈夫なのっ」
リッカが走りながら教えてくれていた。若干息切れを起こしながらだ。うう、いいんだよ、リッカ……。
「えっと、『ジャック』? したんだって! だからね、宮殿にも行けるよって!」
「……」
「……」
物騒な言葉をニコニコしながら話す子犬。リナさんと私は黙ってしまった。
アルトたち……海賊船を乗っ取ったんだね――手荒い手段によって。
海賊船が停めてあった海岸部までやってきた。小舟で海賊の一人が迎えにやってきた。
「お嬢ちゃん……なんてこった」
「よろしくお願いします……」
気まずい再会だった。相手からしてみれば、息子同然の少年と良い仲だった少女。それが、こうして船を乗っ取った側となったんだ。
「そっか、エドクラんとこの……」
リナさんも海賊であることは知っていたけれど、こうして相まみえると驚いていた。
「……まあ、構えなさんな。頭とのタイマンにも負け、動力源も押さえられた。俺らは敗北した。約束は約束だ。宮殿へは連れていく」
海賊の人は船を漕ぎながら、本体の船へと誘っていく。荒波に揺られながら、辿り着いた。
「だがな、忘れないでくれよ。この国において神聖なる場所だ。選ばれた者しか入ることが出来ない。邪なる者は拒まれ、海に落とされて終わり、だ」
彼は重々しく語った。それを聞いたリナさんは、眉を寄せていた。
「……ふーん、あくまで連れていくってだけね」
「そういうこった。約束は守る。本当ならば……俺らが海に叩き落したいくらいだ」
敗北はした。だからといって、受け入れたわけではないと。
「……」
「……」
私たちが本体に到着すると、殺気立った様子で迎えられた。屈辱というのもある。でも何より――ララシア人の彼らにとって、それは本意ではないから。
「おーい」
アルトやリヒターさんもやってきた。物騒な手段を選んだ乗っ取り犯たち……私はお礼を言おうにも、このひりついた空気感ではそうもいかなかった。
緊迫めいた中、船は宮殿へ向けて発進していく。
あなたにおすすめの小説
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
男女の友人関係は成立する?……無理です。
しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。
ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。
ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。
それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。
その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした
影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。
若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。
そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。
……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。