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第四章
エドワード君は逃走した……!
「……そうだろうな。わかった、好きに滞在するといい」
翁さんはくるりと背を向けた。彼の目に映るのは、ララシアの都だ。美しくもあり、栄えた都は未だ健在だけれど――。
「――ただし、海岸まで。都まで行くのはおすすめしない」
翁さんはそう助言をすると、今度こそ去ろうとした。
「……あの!」
私は思わず呼び止めてしまった……呼び止めてどうなるというの。この人は暴露をすることはなかった。きっと、考えあってのことで……。
「すみません、何でもないです」
「娘さんよ――実際に目すれば、わかるというものよ」
「は、はい……」
「そうだ、じきにわかる。それまでは浸かっていれば良い。夢のような時間を――」
言い残しては翁さんは去っていった。
「ったく、あんの親父はよぉ。気にせず都にでも――」
彼らは大ブーイングだった。気にせず街へ繰り出そうとするも。
「ならぬ!」
声を張り上げて止めたのはエドワード君だ。
「……ならぬのだ。どうか、翁の言う通りにしてくれ」
エドワード君は懇願していた。必死な彼を目にし、皆さんは引き下がることにしていた。海賊飯をご馳走してやる、そう笑いながら彼らは船に戻っていった。
残されたのは私たち。エドワード君が詫びたいのは、巻き込んでしまった彼らに対してものようで。
「……その、そなた達にもだな。感謝とお詫びをしたいのだ。余がしようとした事は――」
「あ、いいです。そういうの」
「なっ」
軽く返したのはアルトだった。エドワード君は憤慨しかけるも。
「……人のこと、言えないから。俺達」
アルトに賛同するかのように、リヒターさんやリナさんも頷いていた。そうか、とエドワード君は呟いた。
「つうかさ! ララシアだし、ララシア! ついにシャーロットと訪れたっていうか!」
アルトはテンションを爆上げしていた。彼はもう、ララシアを満喫する気だ。
「え、アル君? ファストトラベルとかで帰らんの?」
「帰りませーん。もうね、エンジョイすることしか考えてませーん。ね、シャーロット?」
リナさんにどう指摘されようと。
「私は恋人として連れて来られたのですが。放置でしょうか」
「……知らんし。秒で別れたし。つか、事実抹消だし。リヒターだって帰る気ないくせに」
「ええ。そもそも帰る手段もございませんので。元彼、と申しましょうか」
「元も何もないっての……外野は放っておいてっと。ね、シャーロット?」
リヒターさんにどう指摘されようとも、アルトは遊び倒すつもりだった。
「だってさ、船動かんし。どうせ一泊するならさ、楽しめばいいじゃんか。ね、シャーロット?」
「……あ、うん」
ぼうっとしていたところを、急に話しかけられた。ううん、前から話しかけられていたのかな? 私は反応が遅れてしまった。ごめん……。
「……シャーロット?」
「ごめん、アルト。気が抜けてた。うん、君の言う通り。楽しもうよ。都も良いところだったけど、海でも充分楽しめると思うよ」
私も張り切っていた。アルトを見習ってテンションを上げていた!
「……」
「……」
「……」
そんな私を三人は見ていた。何か思うところでもあるのかな……不安になってくるなぁ。
「……そっかぁ。エドクラと先に楽しんでたんだもんねぇ? 海でいちゃついてたのかなぁ?」
「その割に進展は見受けられないようで。お変わりはないようですね」
「あー良かった、何もなくて。あったら……ねえ?」
先輩たちに品定めをされているのは、エドワード君……?
「うう……余は洗礼を受けているのか? いびられているのか?」
詰められた彼は弱っていた。
「せっかくシャーロット殿と過ごそうと、そう思っておったのに! うう、余は逃げるぞ!」
エドワード君は逃走した……! 海に飛び込み、そのまま上がって来ない。
「あ……」
……まだ上がって来ない。ずっと潜る気のようだった。
「逃げる、だって。なんだかね、俺ら口実にでもされたのかな」
「……うん」
アルトが見ているのは、エドワード君が漂っている海だ。アルトの言う通りだね。今は一人で考えたいことがあるんだね……。
「……エド・クラウンめ」
目つきを鋭くして見ていたのはリナさnだ。隣にいた私が辛うじて聞き取れるくらいの声だった。
「……あ、ごめん。顔恐くなってた? ……うん、割り切らないと。だって、あんたは生きているんだし」
「リナさん……」
断頭台に晒されて処刑されたのは、エドワード君の事件があったから。それを目撃してしまったのが、リナさんでもあって……彼女に惨い光景を見せてしまったから……。
「……大丈夫。切り替えないと、やってけないもんね。さて、楽しもっと」
リナさんは自分の心の中で留めるつもりのようだった。いつもの調子に戻り、笑ってみせた。
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