351 / 557
第四章
海だ! 水着だ! 映えだ! 睡眠だ! すいすいワンコだ!
海岸に戻ってくると、船の乗組員、海賊のみなさんも海を楽しんでいた。なかなか盛況のようだった。
「お待たせ――!」
自信に満ちたリナさんと。
「お待たせ……」
後方に下がっていた私がやってきた。胸元でリッカを抱えていたけれど、男性陣を見るとぴょんと下りていった。
「わふっ」
リッカは水着を見せびらかしていた。あっ、と私は呼び戻すにも……時すでに遅し。
「お、リッカ。いい感じじゃん……って」
「リッカ様お似合いです……っと」
水着姿の女子たちがいた。目に入ってしまった彼らは、完全に目をそらすタイミングを失ってしまっていた。
「……ええ、お似合いかと――」
「ぶっっっ」
ひとまずであるものの、リヒターさんは褒めようとしてくれていた。それを言い切る前に、またしても……アルトが大量に鼻血を出していた。
「も、もう無理……倒れそう」
「……皆様、一定の距離は置いてください。処置はこちらで行わせていただきます」
心配で駆け寄ろうとした私たちを、リヒターさんは制した。近づけば悪化する模様と……。
「……パーカー、借りてきたら?」
「……はい」
リナさんの提案、私もそうしようと思った。リナさんの分も借りてこようとしたところ。
「……は、恥ずかしくて、パーカー羽織っちゃう! ぶふっ!」
アルトはさらに興奮し、症状が悪化した……。途方に暮れたリヒターさん、治療を放棄したくなっていた。
「うう……ごめん。こんなんじゃ、いつまでたっても遊べないよね」
「ううん、気にしないで。まったりするのもいいよ」
私は遠巻きから慰めていた。アルトは細目でこっちを見ている。でも、慣れでもしたのか、鼻血は治まってきていた。
「うう……ありがと。優しい、好き……。シャーロットもね、恥ずかしいよね? ほら、俺、シャツ着てるからさ。わざわざ取りに行かなくてもさ、貸すからね? 俺も恥ずかしかったりするけど、俺のことはいいからさ」
アルトは下は水着、上はシャツを着ていた。彼自身も肌を露わにするのは、恥ずかしかったのかな。
「あ、うん。機会があったら……」
そうなると、アルトが上半身裸になる。リヒターさんもだけど、彼らが上に着ていてくれるから、私はまだ冷静でいられた。私も気持ちはわかるんだ、私もきっと直視できないと。
「はっ、俺のシャツを着たシャーロット――」
「キリがありませんね。アルト様を海に放り込んで参りましょうか」
リヒターさんは頭を冷やす意味も込めてなのかな……放り込むとか言っているけど? 泳がせようとか、そういう意味だよね……だよね?
「……もう。そうだ、リッカも泳ぐの挑戦してみない?」
「わんっ」
濡れるのは嫌いでも、泳ぐのは楽しかったようだし。まずは浅瀬で泳がせることにした。
「あ、俺も教えたい教えたい! すいすいリッカ見たい!」
乗り出すアルトもリッカに教える気満々だった。アルトはようやく復活したみたい。時々鼻血をこらえながらも、海を大いに楽しんでいた。
「……せっかくの機会ですから、休ませていただきます」
「あ、うん。ゆっくり休んでね」
リヒターさんは自分が設置したビーチベッドに寝そべっていた。休むといいつつも、それとなく様子はみたり気にかけたりはするんだろうなと。私は想像して苦笑していた。
「リナも映え動画撮ってくるけど。あとでリナにも構ってよね?」
「はい、いってらっしゃい。可愛い貝殻、たくさん落ちてるよ」
「なにそれ、楽しみ。とりあえず、いってきまーす」
リナさんは大きく手を振って、海賊の人たちやギルドの人たちに突撃していた。特に生の海賊船にテンションが上がっていた。遊ぶ私たちも撮影していた。寝顔のリヒターさんを撮ろうとしていたら、それはしっかり阻止されていた。
「わんわんっ。わふっ」
「……うん、わかった。いい、リッカ? いいかな? いくよ……?」
リッカは私の手を掴んで、足をかいていた。はしゃいでいた。私は確認しつつ、手を離せるタイミングと判断した。
「わんっ!」
リッカは犬かきをしていた。楽しそうにすいすい泳いでいる……!
「おお……リッカ天才じゃん」
「思った。うちのリッカは天才だよ!」
保護者バカの私たちは、ひたすら感動していた。早速リナさんに撮影をお願いした。まじで、と彼女も駆け寄ってきた。結局寝てないリヒターさんも微笑ましそうに見守っていた。リッカは悠々自適に泳いでいた。
「ふふ……」
楽しい。私は素直に思った。こんなにも楽しくて――エドワード君とも共有が出来れば良かったのにと。
「……」
私は遠く海を眺めた。
今も一人で泳いでいるエドワード君を思った。
あなたにおすすめの小説
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
男女の友人関係は成立する?……無理です。
しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。
ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。
ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。
それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。
その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした
影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。
若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。
そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。
……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。