春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

幸せだったと思います



 日が暮れる時間となっても、私たちは海で遊び続けていた。

 リナさんにリッカも加わり貝殻探しツアーを行ったり。海賊たちにリベンジだとアルトが勝負を申し込まれたり。といっても、海の競技と平和なものだった。体を休めていたリヒターさんも巻き添えをくらっていた。


 
 夕日が沈み、水着から軽装へと着替えた。海辺で遊ぶ時間もここまでだ。




 海賊船で夕飯が振る舞われた。豪快で精のつく料理は大評判だった。



 それから、それぞれの時間を過ごす。もう一度、海辺に出たり。砂浜で語りあったり。そんな思い思いの時間があった。



 
「――すみません、お時間ありますか」
「ん? お嬢ちゃん、どうした?」

 私は食後の片付けと共に、海賊の一人、翁さんのご子息に話しかけていた。

「……。前にエドワード君も作ってくれまして。料理が本当に美味しくて。教えていただけませんか?」
「教えるったってなぁ? 切って、焼いて、詰めただけだが――」

 彼は戸惑うも、私の顔を見た。

「……いいぜ。調理場に案内する」

 その顔を見た上で、彼は承知してくださった。

「……お願いします」

 人目を避けるように、私たちは調理場へ入っていった。




「……お嬢ちゃんは、何もかも知っている。それでいいのか?」
「はい」

 調理場に着いた私たちは、早速話し始めた。料理を習いたい、そんなの建前だとこの人は承知だった。

「まあ、俺もな……今になってなんだ。思い出したんだ――故郷は崩壊していたと」
「……はい」
「……俺らがな、ララシアに嫌気を差して出て行った。その間にこんなことになるなんてな」

 彼は後悔しながら、顔を俯かせた。エドが、と声を出す。

「ある日な、うちの親父がガキを押しつけてきたんだよ。こっちが親父を連れ出そうとしたら、逆にってな。……遺児だって言ってたな。感情を失くしていて、城に篭っていたんだとよ」

 それがエドワード君と海賊たちの出逢いだった。彼は振り返る。

「城っていうからよ、期待はしてたけどな――王族の生き残りって」
「……そう、ですか」

 そのエドワード君が実はそうだったと。私は宮殿で見せられた過去で知る事は出来た。その彼が名乗り出ることはない。それなら……私は口を噤むしかなかった。

「……よりにもよって、海賊の子だぜ? 押しつけるにしても、もっといいとこあっただろ。荒事ばかりで、エドも危険な目に遭っていた。幸せになんて出来たのかねぇ……」
「幸せだったと思います」

 男性は瞬きをした。あれだけ自信がなさそうな私が、はっきりと告げてきたのだから。彼は小さく笑った。

「……そうかい。俺も救われた気分だよ」
「本当に幸せなんだと思います。これからも……エドワード君と一緒にいてくれたらって」
「はは、そうだな。あいつ念願の学校に通ってはいるけどな。俺らは親代わりだ。あいつが巣立つまで、いや、酒が飲める年齢になったらなったで連れ回すかねぇ」
「それ、素敵ですね。はい、一緒にいてくださったら……エドワード君もきっと」

 私は安心したように笑った。もう、大丈夫だと思えた。エドワード君にはこんなにも温かい人たちがついている。

「――さて、こんなところか。お嬢ちゃんも戻りな。なんかな、連れの子ら怖ぇんだよ……普通に話しているだけだってのにな」
「はは……」

 私は笑うしかなかった。

「はい、ありがとうございました。もう一つだけいいですか――」
「ん? まだ、聞きたいことあるのか? エドのこと気になるのか? んー?」

 彼は楽しそうに揶揄ってきた。
 私は笑顔のままだった。




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