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第四章
一緒にいたいだけ
「あのね、シャーリー。僕、お腹が空かないから。遊べるから。眠る場所があるから。だから、君といたいんじゃないの」
「……リッカ?」
「一緒にいたいだけ。離れるなんてやだよ、いやだ……」
リッカは悲しんでいた。鳴き声が止まらない。
そっか、そうだった、そうだね、リッカ……。
それなのに、私ときたら。
「……そっか、そうだね。私もだよ。リッカと離れたくない」
いつでもリッカは側にいてくれた。寄り添ってくれたのに。支えてもらっていたのは、私の方だったのに。
「……ふふ、リッカったら。食べること大好きなのに。チーズとか贅沢品だよ? ボール遊びもだし、お人形も持ってけないよ? 寝るのだって、痛い地面とかだよ。しばらく我慢が続くからね」
「うう……シャーリーはどうしてそういうこというの。いじわるになったの」
リッカのお腹の音が鳴った。やっぱり、この子から取り上げるのは酷だよね。特に食べ物は。
「ごめんね。うん……ごめん、しばらくはそうだけど。でも、定住できる場所見つけようね。そうしたら、チーズとかも食べられるからね」
「うん! 僕もね、泳げるようになったから。お魚さん、捕まえるの」
「うん、頼りにしてるね」
「えへへ」
リッカも笑顔になった。私もその笑顔の為に頑張ろうと思えた。
「……ねえシャーリー、みんなに話さないで行くの?」
リッカは純粋な目をして聞いてきた。私は頷いた。
「どうしようって、迷ってた。今回ばかりは本当に、迷惑の度合いが違う――背負わせたくないから。でも……話はしていかないと、だよね。リナさんの服のこともある」
彼らも優しいから。きっと無理してでも、力になってくれる――結果、背負わせてしまう。私はそれを望まなかった。
「シャーリー、迷うの?」
リッカはこのような時でも、愛らしく首を傾げてきた。綺麗な眼で彼は言う。
「先に背負ってあげたのは、シャーリーだよ。助けてって、みんながそうだった。僕だってそうだったのに。君が助けたのに」
「……!」
「どうして、シャーリーはしちゃいけないの」
「……はは」
……敵わないなって、私はそう思った。リッカは純粋でいて、しっかりとした心も持っていたんだ。
「みんな待ってるよ」
「……うん」
――心が溶かされるようだった。リッカの後押しもあって、打ち明ける覚悟は出来た。
「あのね。僕、スパイなの」
「……リッカ?」
キラキラとした瞳のまま、リッカが何かを言い出した……スパイ?
「アルトとリヒター、リナも。君が今回のことで、一人で考え込んでいるから。自分達には絶対に気を遣うからって。ご飯を食べたあとにね、僕に任務だって!」
「ああ、そういうこと……」
自分が密かに話をつけていた時に、彼らはリッカに託していたんだね……。
「僕、全部報告した方がいい?」
「ううん、全部は言わなくていいからね。というか、正直に話してくれてありがとう。私からちゃんと話すから、ね?」
「うんっ」
リッカは満足そうに頷いた。ターゲットに確認をとるスパイ……可愛いからいいか。
「……歩こっか」
「わんっ!」
私の誘いに、リッカは尻尾を大きく振った。夜が明けたら、現実と向き合わなくてはならない。今はただ、この時間をゆったりと過ごしたかった。
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