356 / 557
第四章
クラーラ様からの手紙
しおりを挟む「――おーい、お前達ー? 大丈夫かぁ?」
「へっ……?」
誰かが呼んでいる。私は目を覚ました。
波の音がする。そして、優しい声……聞いていて落ち着く声。
「お、起きたか。おはよう、シャーロット」
「え……」
私は二度見した後、飛び起きた。何故彼が――モルゲン先生がここにいるの……!?
「しかし、暑くないか? 俺は暑いぞ」
先生はマイペースな口ぶりだった。確かに暑そうですが……コートとジャケットは脱いでいて、シャツ姿となっていますし。腕まくりまで。
「……おはよう、ございます? あの、どうしてですか? よくわからなくて……」
「おう、俺もだ。お前達はどういった状況なんだ?」
「状況って……」
「まあ……深くは追究しないでおくな」
寝起きながらも、頭の中を整理することにした。
まずは自分の服装。今の私は、リナさんにお借りしていた服。吐かれたことにより、着替えたんだった。うん、雪国に適している服装なわけで。
「暑いですね」
「暑いよな」
夜明け前はまだ涼しかったから良かったものの、朝になると暑くなっていた。早朝ならもう少し涼しくてもいいのに、と私は心の中でごちた。
「って、エドワード君……」
次はエドワード君。彼の姿はなんともまあ。
「カオスですね……」
「カオスだよな……」
エドワード君は水着姿のまま、寝ていた……それもリッカを抱きしめたまま。
彼が吐き終えた後、水を飲ませて落ち着かせた。しばらくして眠ってくれた。彼が眠っている間に船内で着替えたんだよね。少しの間とはいえ、一人にしちゃったんだ。
眠りながらも、彼は寂しかったのかな。近くにいたリッカを寝ぼけながら抱きしめたみたい。リッカも起きはしたものの、優しい子だから。許容したんだろうね。
「……そうだ、先生。お金融通していただいたそうで。ワンピースも料金に含まれていたとか。何から何までありがとうございました。すぐに返済できないのが心苦しくもありますが」
「ああ、そうなるよな。いいか、シャーロット。気にするな……あれだ! アルト、弟の為に使った。あいつは俺に容赦無いからな。気にもしないだろ。お前にも見習ってほしいくらいだ」
「先生、そういうわけには……」
こういう時ばかりに弟を持ち出してきた……正直詭弁だと思っていた。先生は苦笑しながらも、砂浜に腰を下ろした。
「水掛け論だな。いいか、シャーロット。お前達の奮闘もあって、こうしていられるんだ。金だっていくらでも使えるさ。使わせろ」
「……はい。こうして平和でいられます。それは確かだとは」
先生はそう仰るけれど……。
「ああ、そうだ――シャーロット」
と、ここで先生は優しく微笑んできた……先生? 彼は懐から何かを取り出してもいた。
「クラーラ……っと、クラーラ様からの手紙だ――恩赦が出されたってことだよ」
「!」
先生から手渡されたのは手紙。読んでいいと……それでしたらと、私は目を通す。
――その内容は私のことを心配していたこと。暴漢から助ける為にしてくれたと、伝えたと。嘆願書も用いたと。
クラーラさんは手を尽くしてくださった……クラーラさん。手紙はそう……。
――シャーロット・ジェムは国外追放。さらに、ララシアの復興を手助けせよ。そう、結論づけられていた。
「あ……」
……手紙を持つ手が震えてしまう。ダイヤノクトではもう生きられない。けれども、別の場所ならば――シャーロット・ジェムの生は許される。
「……そなたは許されたのだな」
「!」
いつの間に起きていたんだ……。エドワード君はリッカを抱っこすると、そっと砂浜に下ろした。そのまま腰を据えている。
「これはモルゲン先生。ご足労痛み入る」
「……ああ。どうってことないさ。それでだ、エドワード」
挨拶はそれくらいにと、先生はエドワード君に目を向けた。とても鋭い目つきだった……。
「……ああ、わかっている。シャーロット殿は許されて然るべきだ。だた、余は違う。余には――明確に殺意があった」
こればかりは逃れられないと、エドワード君は口にする。申し訳ないと彼の顔が語ってもいて……。
「……すまぬな。そなたも、ララシアも。余は、まだ目を背けてはいけないものがあったようだ」
「……そんな」
私は自分が許されたのだから、そう思わずにはいられない。私と違って彼は危害を加えていない……これまでとは違うのに、と。
「……ああ、そうだな。お前に対して、クラーラからお怒りの伝言を預かっているよ」
「直接聞くべきだが、聞こう。よろしく頼む」
エドワード君は座を正した。彼も私もモルゲン先生の言葉を待つ。
0
あなたにおすすめの小説
彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します
八
恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。
なろうに別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
一部加筆修正しています。
2025/9/9完結しました。ありがとうございました。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます
山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった
「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」
そう思った時すべてを思い出した。
ここは乙女ゲームの世界
そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ
私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない
バットエンド処刑されて終わりなのだ
こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった
さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?
甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。
……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる