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第四章
クラーラ様からの手紙
「――おーい、お前達ー? 大丈夫かぁ?」
「へっ……?」
誰かが呼んでいる。私は目を覚ました。
波の音がする。そして、優しい声……聞いていて落ち着く声。
「お、起きたか。おはよう、シャーロット」
「え……」
私は二度見した後、飛び起きた。何故彼が――モルゲン先生がここにいるの……!?
「しかし、暑くないか? 俺は暑いぞ」
先生はマイペースな口ぶりだった。確かに暑そうですが……コートとジャケットは脱いでいて、シャツ姿となっていますし。腕まくりまで。
「……おはよう、ございます? あの、どうしてですか? よくわからなくて……」
「おう、俺もだ。お前達はどういった状況なんだ?」
「状況って……」
「まあ……深くは追究しないでおくな」
寝起きながらも、頭の中を整理することにした。
まずは自分の服装。今の私は、リナさんにお借りしていた服。吐かれたことにより、着替えたんだった。うん、雪国に適している服装なわけで。
「暑いですね」
「暑いよな」
夜明け前はまだ涼しかったから良かったものの、朝になると暑くなっていた。早朝ならもう少し涼しくてもいいのに、と私は心の中でごちた。
「って、エドワード君……」
次はエドワード君。彼の姿はなんともまあ。
「カオスですね……」
「カオスだよな……」
エドワード君は水着姿のまま、寝ていた……それもリッカを抱きしめたまま。
彼が吐き終えた後、水を飲ませて落ち着かせた。しばらくして眠ってくれた。彼が眠っている間に船内で着替えたんだよね。少しの間とはいえ、一人にしちゃったんだ。
眠りながらも、彼は寂しかったのかな。近くにいたリッカを寝ぼけながら抱きしめたみたい。リッカも起きはしたものの、優しい子だから。許容したんだろうね。
「……そうだ、先生。お金融通していただいたそうで。ワンピースも料金に含まれていたとか。何から何までありがとうございました。すぐに返済できないのが心苦しくもありますが」
「ああ、そうなるよな。いいか、シャーロット。気にするな……あれだ! アルト、弟の為に使った。あいつは俺に容赦無いからな。気にもしないだろ。お前にも見習ってほしいくらいだ」
「先生、そういうわけには……」
こういう時ばかりに弟を持ち出してきた……正直詭弁だと思っていた。先生は苦笑しながらも、砂浜に腰を下ろした。
「水掛け論だな。いいか、シャーロット。お前達の奮闘もあって、こうしていられるんだ。金だっていくらでも使えるさ。使わせろ」
「……はい。こうして平和でいられます。それは確かだとは」
先生はそう仰るけれど……。
「ああ、そうだ――シャーロット」
と、ここで先生は優しく微笑んできた……先生? 彼は懐から何かを取り出してもいた。
「クラーラ……っと、クラーラ様からの手紙だ――恩赦が出されたってことだよ」
「!」
先生から手渡されたのは手紙。読んでいいと……それでしたらと、私は目を通す。
――その内容は私のことを心配していたこと。暴漢から助ける為にしてくれたと、伝えたと。嘆願書も用いたと。
クラーラさんは手を尽くしてくださった……クラーラさん。手紙はそう……。
――シャーロット・ジェムは国外追放。さらに、ララシアの復興を手助けせよ。そう、結論づけられていた。
「あ……」
……手紙を持つ手が震えてしまう。ダイヤノクトではもう生きられない。けれども、別の場所ならば――シャーロット・ジェムの生は許される。
「……そなたは許されたのだな」
「!」
いつの間に起きていたんだ……。エドワード君はリッカを抱っこすると、そっと砂浜に下ろした。そのまま腰を据えている。
「これはモルゲン先生。ご足労痛み入る」
「……ああ。どうってことないさ。それでだ、エドワード」
挨拶はそれくらいにと、先生はエドワード君に目を向けた。とても鋭い目つきだった……。
「……ああ、わかっている。シャーロット殿は許されて然るべきだ。だた、余は違う。余には――明確に殺意があった」
こればかりは逃れられないと、エドワード君は口にする。申し訳ないと彼の顔が語ってもいて……。
「……すまぬな。そなたも、ララシアも。余は、まだ目を背けてはいけないものがあったようだ」
「……そんな」
私は自分が許されたのだから、そう思わずにはいられない。私と違って彼は危害を加えていない……これまでとは違うのに、と。
「……ああ、そうだな。お前に対して、クラーラからお怒りの伝言を預かっているよ」
「直接聞くべきだが、聞こう。よろしく頼む」
エドワード君は座を正した。彼も私もモルゲン先生の言葉を待つ。
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