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第四章
そなたを解放するぞ①
硬質な床の感触。見慣れた鉄製の鳥籠。ここはいつもの夢の中だ。
「水の中じゃない」
前は水の中、そして丸型の中。そこに閉じ込められていた。今はそうではないよね。
「……ある」
扉の位置は通常の位置に戻っていた。大きくなっていた双剣の形の錠前は、中くらいのサイズには戻っていた。残ったままではあった。
「……きっと、これは」
私は『彼』のことを思い浮かべた。そう、これは。
「――ここは一体? ……シャーロット殿?」
「エドワード君……」
誰によるかは、思い当たるんだ。こうして現れた――エドワード君によるものだと。
「……いや、シャーロット殿!? 何故囚われておるのだ!?」
「その、私にもなんでかわからないっていうか、でも危ないとかじゃ」
「シャーロット殿の危機ぞ! 今助けに参る!」
「いや、ちょっとまって――」
エドワード君は勢いをつけて駆けだしていく。懐から取り出したるは、宝飾刀だ。
「余にはわかる。狙うは――」
「お願い、待って!」
「……む?」
私の制止の声に、エドワード君はようやく気がつくも……時はすでに襲し、彼は錠前に斬りかかっていた。刃がぶつかるも。
「くっ!」
びくともしなかった。エドワード君は弾き飛ばされてしまう。そのまま受け身を取って着地した。
「……?」
エドワード君は受け身の体勢、立膝をついたままだった。彼は頭も抱えていた。
「だ、大丈夫……?」
私は彼を案じる。怪我はしていないようなので良かったけれど……別の心配もあるというか。
あの錠前に触れた時、どうもよろしくない映像が浮かぶようで……。それは当人しかわからないもので、後の反応からして気まずくなる内容のような……?
「……」
エドワード君は深刻な表情をしたまま、黙りこくっていた。これまでの彼らなら赤らめていたところなのに、エドワード君は違っていた。
「……余はなんと、弱く醜いことか」
……自身を嘆き、恥じているようだった。
「……すまない。シャーロット殿、すまなかった」
どこまでも悔いているようだった。
「……ううん」
エドワード君が見た内容まではわからない。私は元々彼を責める気はなかった。
「……そうか」
彼の声に安心が含まれていた。まだ浮かない顔をしているものの、彼は見渡している。私が囚われているには違いないと、辺りを警戒するかのように。
「私、本当に危険とかじゃないの。ここにいる限り、命の危険とかもないから」
「なんと、守られているということか。確かに害意などは」
エドワード君は近づき、鳥籠の柵に触れた。彼が感じ取ったのは、ある意思。それは私を傷つけようというものではないと。それは。
「――そなたへの執着か」
エドワード君は触れたまま、呟いた。
「執着っていってもね、君は特には……」
これまでの彼らはさておき、エドワード君にはそのような印象は抱かなかった。ほど遠いと、私は思っていた。それでも彼は言う。
「……理解できるぞ。余もそうだったからな。余はそなたに……縋ったままだった」
エドワード君が目で捕らえるのは、双剣を象った錠前。彼にはわかる。それは自分そのものであり、自分もまた私を囚われの身にしていたのだと。
「どこまでも縋って、甘えきって。それでは余は、いつまでも弱いままだ。だから……そなたを解放するぞ」
エドワード君は手でそっと触れるだけだった。彼はそれで良いと思っていた。
武器で傷つける必要などない。自分の意思をもってすれば、解き放ってくれるはずだと。彼にはそれが理解しているようだった。
「……余も向き合うのだ」
かつての錠前は、泡となり。そして。
――暗闇に溶けていくように消えていった。エドワード君はその様をずっと眺めていた。
「とはいえ、余の分だけではどうにもならぬのか。ええい、何とかできぬものか。余はシャーロット殿を救い出したいのだぞ!」
エドワード君は眉をしかめながら抗議していた。まだ錠前は残っているから……。
「……エドワード君、気持ちは嬉しいけどね。こればっかりは、本人にどうにかしてもらわないと」
「なんということよ……そなた、心当たりはないのか」
「心当たりはなくはないけど、知らない人としか」
「なんと、知らない人物だと! むむむ、正々堂々名乗らぬか、不届き者め」
「うん、まあ……」
正々堂々というのもなんともまあ、だった。私は気を取り直す。
「……エドワード君。話があるんだ。君はもう、私に関わってしまったの」
エドワード君もこうして関わってしまったのなら、これまで通り記憶を有することになる。彼の意思など関係なく――強制的に。
「む……?」
「うん、意味がわからないよね。本当ならね……君には関わらないで、そのまま知らないままでいてって言いたくて」
でも、そういうわけにもいかなくて。うん……伝えよう。
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