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第四章
それぞれの地で
しおりを挟むあれから一か月が経過した。
私たちはララシアの復興に力を注いでいた。特に浄化薬の研究を。もっと効率良く、散布できるように。浄化作業を進めながらも、研究に勤しんでいた。
『大体持ってきたぞ。また届けにくるからな。なに、観光のついでだ、ついで。だから気にするなよ?』
店にあった用具や書物、それを届けに来てくださったのはモルゲン先生。
……あれで今生の別れと思いきや、そんなことはなかった。頻繁ではないものの、休暇をとってララシアに遊びにきていた。
ララシアの海は無事ということもあってか、ビーチ目当てに来る観光客は増えつつあった。宿泊施設は現状、海辺にあるホテルのみ。今は空きが目立つけれど、埋まっていけば。それも目標の一つだった。
観光客も戻りつつあるし、各地に散ったララシアの民もまた、舞い戻ってきていた。海賊の皆さんも定期的に寄っては物資を置いていってくださる。本当に有難いです。
ララシアの空も――青を取り戻しつつある。今日も穏やかな気候だ。
「うーん」
温暖な気候、心地よい波の音。心を落ち着かせてくれるもの。心に落ち着きを――。
「――エドワードさぁ、学園サボりすぎじゃない? ずっとララシアにいない? 学園行けよ」
「またイビリか! 余はきちんと学園に行っておるぞ……たまにサボるくらいだ。というよりな、余は聞いたぞ。そなたこそサボりの常習犯だったとな!」
「はー? 過去の話ですがー? 俺にはもう関係ないんでー?」
……落ち着きはどこかへ行った。騒々しい二人が、騒々しくやってきた。
アルトは学園を辞めた……先生の奮闘虚しくだった。ララシアに滞在しつつ、中央ギルドでの仕事を請け負う。ここぞとばかりにファストトラベルを活用していた。
「……なんだかんだで仲がいいけどね」
アルトはエドワード君を名前で呼ぶようになった。なんでも、自分と重なるところがあると言い出した。共通点あったんだ、なるほど。
「あ、シャーロット! お疲れー。俺もね、お疲れ。はい、報酬。一緒に役立てようね? 一緒に……ね?」
アルトが渡してきたのは、麻の大きな袋だった。金貨類や素材がたくさん入っていた。
「ありがと……うっ!」
「ああ大変。重かったかな? ごめんね? 俺が持つね」
「……お願い」
重かった。
「はーい、シャーロット! リナが撮影にやってきたよー」
ある日。リナさんは兄を従えてララシアにやってきていた。バカンススタイルである。付き添いのお兄さんが頭を下げてきた。私たちは挨拶を交わした。
「んー、リナもね。ホントはすぐにララシアにきたいんだけどー」
兄が撮影準備で離れた隙に、リナさんは言い出してきた。私はギョッとした、けれども思い直す。
「……そう、言ってみただけ。『リナ』は、ちゃんと卒業したいから。まずはそこから」
どこか寂しそうにリナさんは言った。お兄さんが彼女を呼んでいる。すると、すぐに表情を切り替えていた。
「っと、いかなきゃ。あと、リッヒね。中々来られないみたいだね」
「はい……リヒターさん、仕えているから。でも元気でやってるって」
リヒターさんには仕える主がいる。主優先であるのは存じていることであり、彼はそれで良いと思っていた。
「あー、なるほどね。大量の手紙が連日届いていると」
「……いえ、大量でも連日ということは決して」
数枚あったり、頻度もそこそこだけど……うん、決して。
お手紙は嬉しいもの……私からは返せない決まりだった。アルトたちが言伝を伝えてくれていたから、それで充分有り難くはあった。
うん、本日もリヒターさんから手紙が来ていた。その内容はというと。
ダイヤノクト、お店の近況のこと。お店は別の薬師さんが借りたいということで、店舗を貸す形になっていた。曰くつきでも、設備が揃っているのと破格の賃貸料につられたようだ。オーナーさんもお元気だって。
リヒターさんは綺麗な字で綴っていた。自分たちは元気でやっている。あと、春の長期休みに入ったら、暇をもらうとも。
「フォローしてくれてる……とことん」
賃貸料はその薬師が払う。その人の厚意もあって、売上の一部は孤児院にも入っているという。リヒターさんがやってくれたんだよね。手回しの鬼だった。
「うん、元気そうでよかった」
今は簡単には会えなくなったけれど、皆それぞれの地で元気にやっている。私は微笑んだ。
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