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第五章
プロローグ――共に生きられなかった日々
ふわふわの手触り。撫でる手から伝わるのはぬくもり。白いモフモフは今日も、私の側で寝ていた。
奥深い森――秘境ともいえる、知られざる場所。夜になると辺りはより暗くなっていた。
私たちはこうして焚火を囲んでいる。
揺らめく炎、眺めているうちに眠くなったんだね。たくさん、頑張ったもんね。
……君はいつもだけれど、今回は本当に、ね? 大奮闘してくれたから。
たくさん頑張って……無理もさせてしまったね。
本当にごめんね……せめて、今はゆっくり休んでいてね。
「わあ……」
見上げると月が輝く夜空。木々の隙間から、夜の光が注がれる。綺麗――。
「あ」
隣で一緒に見上げている存在……いつの間に起きていたんだ。私が彼の方を向くと、可愛い可愛いモフモフワンコは笑顔になった。
「か、かわいい……」
もう何回言ったかわからないけれど、何度だって言いたい……可愛いと! 夜だから抑え目にしているけれど……可愛い!
「ああ……」
私が一人悶絶していると、モフモフは首を傾げてきた……出た! 渾身の首傾げポーズ! 可愛いねぇ! この角度、角度がね? たまらなくてねぇ!?
ああー……可愛いねぇ、可愛いねぇ! ワンコは総じて可愛いけれど、この子は、この子は特段と可愛くてねぇ……!
元々、犬は好きだった。私の幼馴染が飼っていて、私もよく遊んだりしていたから。
ああ……名前が思い出せないな。姿も……。
前世だからなのかも……そういうことなのかな。
この世界に私は生まれ変わった。前世の記憶も所持していたんだ。
人と人は分かたれようとも。強い思いによって、やがては再び巡り合うと。生命は巡り巡るものだって。小さい頃に教わったこと。
この世界に伝わる伝承。未だに私にはピンと来ないもの。縁だってないと思っているもの。
私は前にいた.世界では、それほどの関係は築いてなかったって思う。それほどの思いを抱かれたなんてことも、そう。
私の前世、皇冬花。日本で暮らしていた女子高生だった。受験も終えて、卒業の日を迎えて――私、冬花は死んでしまった。死因は転落死。私一人ではなく、教師と共にだった。
「……」
私の好きだった人……片桐先生。
……ってね、彼のことを考えては沈んでばかりで。優しいこの子にも心配もさせてしまって。うん、大丈夫だからね?
君がいてくれるから。私は気持ちも軽くなるの。救われてもいるんだ。
「本当にうちの――」
私は、言葉を止めた。
我が家のモフモフじゃないんだ……そうだ、この子は本来ならば――。
「……」
……私が、おいそれと触れていい存在ではなくて……それに。
この冬を越えて、春が訪れたら、そうしたらもう――。
「……ううん」
『今回』も乗り越えられたんだ。今は平和な時を大事にしたい。楽しく、笑って。
君と笑っていられる日々を、一日一日大切にしていきたいんだ。
「ね、前に君が言ってくれたこと。たくさんお出かけしたいところがあるって」
いつも君には寂しい思いもさせているから。ね、一緒に行こうね? うん、すごく嬉しそう。そんなに尻尾を振ってまあ……ふふふ。
可愛いねぇ。尻尾、そんなに振るんだ。そんなに高速で振るんだねぇ……!
本当に可愛いねぇ!
「……」
ねえ、もうすぐ春だね。
君の大好きな人と逢えるよ――。
奥深い森――秘境ともいえる、知られざる場所。夜になると辺りはより暗くなっていた。
私たちはこうして焚火を囲んでいる。
揺らめく炎、眺めているうちに眠くなったんだね。たくさん、頑張ったもんね。
……君はいつもだけれど、今回は本当に、ね? 大奮闘してくれたから。
たくさん頑張って……無理もさせてしまったね。
本当にごめんね……せめて、今はゆっくり休んでいてね。
「わあ……」
見上げると月が輝く夜空。木々の隙間から、夜の光が注がれる。綺麗――。
「あ」
隣で一緒に見上げている存在……いつの間に起きていたんだ。私が彼の方を向くと、可愛い可愛いモフモフワンコは笑顔になった。
「か、かわいい……」
もう何回言ったかわからないけれど、何度だって言いたい……可愛いと! 夜だから抑え目にしているけれど……可愛い!
「ああ……」
私が一人悶絶していると、モフモフは首を傾げてきた……出た! 渾身の首傾げポーズ! 可愛いねぇ! この角度、角度がね? たまらなくてねぇ!?
ああー……可愛いねぇ、可愛いねぇ! ワンコは総じて可愛いけれど、この子は、この子は特段と可愛くてねぇ……!
元々、犬は好きだった。私の幼馴染が飼っていて、私もよく遊んだりしていたから。
ああ……名前が思い出せないな。姿も……。
前世だからなのかも……そういうことなのかな。
この世界に私は生まれ変わった。前世の記憶も所持していたんだ。
人と人は分かたれようとも。強い思いによって、やがては再び巡り合うと。生命は巡り巡るものだって。小さい頃に教わったこと。
この世界に伝わる伝承。未だに私にはピンと来ないもの。縁だってないと思っているもの。
私は前にいた.世界では、それほどの関係は築いてなかったって思う。それほどの思いを抱かれたなんてことも、そう。
私の前世、皇冬花。日本で暮らしていた女子高生だった。受験も終えて、卒業の日を迎えて――私、冬花は死んでしまった。死因は転落死。私一人ではなく、教師と共にだった。
「……」
私の好きだった人……片桐先生。
……ってね、彼のことを考えては沈んでばかりで。優しいこの子にも心配もさせてしまって。うん、大丈夫だからね?
君がいてくれるから。私は気持ちも軽くなるの。救われてもいるんだ。
「本当にうちの――」
私は、言葉を止めた。
我が家のモフモフじゃないんだ……そうだ、この子は本来ならば――。
「……」
……私が、おいそれと触れていい存在ではなくて……それに。
この冬を越えて、春が訪れたら、そうしたらもう――。
「……ううん」
『今回』も乗り越えられたんだ。今は平和な時を大事にしたい。楽しく、笑って。
君と笑っていられる日々を、一日一日大切にしていきたいんだ。
「ね、前に君が言ってくれたこと。たくさんお出かけしたいところがあるって」
いつも君には寂しい思いもさせているから。ね、一緒に行こうね? うん、すごく嬉しそう。そんなに尻尾を振ってまあ……ふふふ。
可愛いねぇ。尻尾、そんなに振るんだ。そんなに高速で振るんだねぇ……!
本当に可愛いねぇ!
「……」
ねえ、もうすぐ春だね。
君の大好きな人と逢えるよ――。
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