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第五章
キミと教室にて
あれ、ここは……?
気づけば私は――教室の中にいた。見覚えのある風景でもあって――。
「ああ……」
私は今、ここが夢の中だとわかった。この机も椅子も、黒板だって。
「……懐かしい」
外から見る景色だって、懐かしくて見慣れていたもの。
――皇冬花が見ていた世界だったから。
前世の私が見ていたもの、シャーロット・ジェムが通っている学園ではないのだと。
ああ、なんて快晴なんだろう……でも、おかしい。
どうしてこんなにも……不安になるの?
「――あ、やっぱり。『冬ちゃん』だ!」
「!」
私をそう呼ぶのは前世の幼馴染――『日向』ちゃん。
「おーおー冬ちゃん、冬ちゃん、冬ちゃーん!!」
廊下からの声だと思うんだけど、声がとてつもなく大きい。私を連呼する声と共に、ぐいぐいとやってくるのは日向ちゃん。
「いやぁ、元気そうで良かったわー! ひさしぶりー!」
ついには教室に入ってきて、私がいる窓の近くまで。あ、そっか――。
「うん――ロルフ君もね」
目の前の青年は、この世界の人間となっていた――ロルフ・ヴァールザーガー君。
彼も生まれ変わったって聞いた。天寿を全うしたってことだったかな? 満足したって、彼は言っていたから。
「えぇー?」
「?」
私が今世の名で呼ぶと、途端に彼はむくれだした。
「……いやさー? 前世のことも大事って言ってくれたけどさー? オレは今はそうだけどさー? ……でも、今くらいはさ」
「あ、そっか」
ロルフ君じゃない、日向ちゃんって。そう呼んだ方がいいのかな?
「――この姿なら、呼びやすい?」
「え」
私が一度瞬きすると、すぐに目の前の彼は――姿を変えていた。
「!?」
今の彼の姿は、私が慣れ親しんできた日向ちゃんが――成長した姿だった。
幼少の彼は美少女そのもので、中身とのギャップがすごいものだった。中性的な美しさに成長していた。
背もこんなに高くなっていたことに、驚いていた。成長期は高校に上がってからだったんだね、日向ちゃん。
高校が別れてからは、本当に会う機会が無かった。遠巻きに見たことはあったけれど、こんな間近で見ることはなかったから。うん、驚いた……。
「なれるものなんだ……」
前世の姿に。
「夢の中だから? なんでもありってこと?」
「そういうことー!」
日向ちゃんは親指を立てて、テンション高く肯定していた。あ、日向ちゃんだ。安心した。
「……冬ちゃんは、そういうわけにはいかなくてさ」
「そうなんだ……」
日向ちゃんは暗い顔をして、俯いていた。私は複雑な心境だった。冬花の姿に今、戻りたいかというと……私はどうなんだろう。彼は望んでいるみたいだけど……。
「キミが強く望んでくれたら――」
長い睫毛を伏せた彼が呟く――けれども。私からの視線に気づくと、首を振っていた。今はいい、って……。
「話、しよっか。つーかさー、聞かせてよー! 色々急すぎて、オレ、わけわかんないんでねー!」
「うん、そうだね。心配おかけしちゃって」
私の両手をとって、日向ちゃんは誘導しようとしていた。座って話そうってことかな。
「本当よー、もー! ほら、座って座ってー」
「うん――」
彼が勧めてくれた席……ええと、ここは。
「――『キミ』の席、でしょ?」
「そう、だね……」
キミ……冬花の席、だね。高校最後の席替え、窓際、一番後ろという。居場所がなくて、スマホをいじるか、寝るか……ぼんやり窓の外見ていたっけ。
あまり良い思いの席ではなかったけれど。
「で、オレはここー!」
「……」
前の席に陣取った日向ちゃん……なんだろ、ホッとしたというか。
「ほら、話そ?」
後ろを向いて、椅子の背もたれに体重をかけて、それでもって笑う。そんな日向ちゃん。
「うん」
私も笑顔になる。
日向ちゃんは昔からそうだったね。
私を引っ張ってくれていた。色々なところに連れてってくれていた。
私の拙い話も聞いてくれていた。いつだって嬉しそうに。
みんなの人気者は、私にも優しかった。
うん、心地良いな――。
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