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第五章
賑やかな二人
「――なんかさぁ、脳内で勝手に話が進んでいるヤツがいる。こっわ」
どこからともなく現れた青年は、来て早々に私たちを引きはがした。自然と私を背中の後ろに回す造作まで。
「こっわ、怖かったねぇ、シャーロット? 俺が来たからね? もう安心だよ」
「な、何故だ! 何故、そなたは間に立つのだ!?」
「え、立ちますけど? 大事な子が変な野郎に絡まれているんですけど?」
「絡んでなどおらぬ! ああ、シャーロットどのぉぉぉ……!」
優しい笑顔をこちらに向けつつも、エドワード君は牽制したまま。相手が近づこうとする度に、立ち塞がるのは私の現世の幼馴染。ディフェンスの極み、心配性でもあるアルトだった。
アルトは学園を自主退学していた。彼もララシアに滞在していて、ギルドと往復の生活を送っていた。数日ぶりの再会だった。仕事帰りの彼は今日も、大きな袋を抱えていた。
「もう、アルト。ほら、エドワード君も悲しそうにしているし」
「余は、余は怖い思いをさせてしまっていたのか……? ああ、シャーロット殿……」
悪意があってやったわけでもないでしょうに。尻尾が下がっているかのように、エドワード君はしょげているし……。
「怖いとか、ないからね?」
「ああ……シャーロット殿……その言葉、嬉しいぞ……」
アルトは『いやぁ……油断し過ぎだってぇ』と、まだ訝しんでいたけれど。
「アルトもお疲れ様、おかえりなさい」
ギルド仕事で疲れているだろうし。話、長引きそうだし。ごめん。
「……。ふふ、ただいま。君もね、今日も頑張ったね」
アルトは穏やかな顔で労ってくれた。謎にテンションが上がる時もあるけれど、本当は落ち着いたところもあるんだよね。私も助けられている。
「ああ……いい……」
「……アルト?」
なんだろ、浸っているというか……。
「おかえりなさい、とか……こんなん、もう夫婦じゃん……?」
アルトは両頬に手を添えて、顔を赤くしている。乙女のような仕草で照れている……いや、夫婦って。
アルトこそ脳内で飛躍しているんじゃ……私がそう思っていると。
「余もゆうてもらっておるぞ! おかえりなさい、とな!」
そうやって鼻を鳴らすのはエドワード君。
「……」
「……」
アルトにつられて私も黙ってしまった。その、無邪気だなぁ、というか。
「だからといって、夫婦というのはな? そなた、それはあまりにも早急ぞ? それにだ、アルト殿! 脳内妄想のこと、そなたに言われるのはその……複雑だ!」
それでいて、現実も突きつけてくるというか……。腰に両手をあてたエドワード君に、アルトは『ぐぬぬ……』と漏らしている。
「なんというか……」
騒がし……賑やかともいうか。二人とも本当に元気だなぁ……まだ盛り上がっているし。
「ええと、私はこのへんで。リッカ、待っているから」
労働疲れもなんのその、リッカのお散歩タイムが待っている。私はここらへんで抜けさせてもらうことにした。
「あー、そうだね。リッカによろしくね」
「ふむ。他ならぬリッカ殿ぞ。では、またな」
言い合いがピタリと止む。二人はあっさりと送り出してくれた。私がリッカ優先なのは、公認なんだね。
「……それとだ。そなた、忘れておらぬだろうな? 例の件の――」
「いやいや、忘れるわけがないし。エドワードこそ準備は――」
別の話にも移っているみたい。なんだろ、二人で話し合っていることなのかな。肩を寄せあって、ひそひそ話している。これじゃ盗み聞きだし、私も滞在先に戻ることにしようっと。
「ふふ」
私は二人を遠巻きに見ていた。二人は話がまだまだ盛り上がっているようだった。なんだかんだで仲が良いんだよね。アルトが名前呼びするのも珍しいし。微笑ましいな。
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