春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第五章

爆走ワンコ


 海岸線をたくさん歩いたね。あともう少しで折り返し、おうちに戻ろうね。

「リッカ。今日のお夕飯、何が食べたい?」

 こちらは身を寄せている立場、贅沢しようとは思っていなかった。皆さんも自分たちのことより、復興のことを優先と。費用もそちらに多く充てられていた。
 といっても、たまにはと思ってしまった。本日訪れた商船は、しばらくは留まっているという。そこで何かを買いたいと思っていたんだ。ダイヤノクトの通貨、使えるみたいだし。

「お肉とか、じゃがいもとか、チーズとか! ワンコ用のもあるんだって。今日はね、たくさん食べていいんだよ?」

 ああ、リッカったら。もう涎垂らしているねぇ。美味しそうだもんねぇ? 私の顔も顔で緩みきっていた。

「……くんくん」

 リッカ、辺りを嗅いでいる。上を向いて、やたらと? えっと、匂い届いているのかな? リッカの嗅覚って本当にすごい。

「わんっ!」

 匂いの元がわかったのか、リッカはひと吠えした。それからはもう――速い。

「ちょ、リッカ……!?」

 暴走ワンコのおでましだった……! しゃかりきに走る彼は、全力で私を置いていこうとする……!?
 ううん、置いていく気はないんだろうね。リッカはただただ、一途に匂いの元に向かおうとしているだけで。だけなんだけど……。

「っていうか、そっちじゃなくてっ……」

 どうしちゃったの!? そっちは商船とは逆方向、なのにリッカの勢いは止まらない。
 私とて全力でくらいついていく。全身全霊をかけて、リッカに追いつこうと――。

「ひいひい……」

 ……流石に無理だった。私は呼吸困難の中、走る速度が落ちきってしまっていた。

 氷の魔力で滑っていこうとも考えたけれど、この先は岩場で行き止まりとなっていた。走り続けていれば、いずれは追いつくだろうと。私は息を切らしながらも、リッカを追いかけることにした。




「あれ……」

 その内に漂ってくるのは、美味しそうな匂い。私の嗅覚でもわかるくらいだった。となると、リッカの嗅覚は間違ってなかったと。
 そのリッカの背中が見えた。なんだろ、何かくわえているともいうか……?

「――リッカさぁ、シャーロット置いてきちゃったの? せめてゆっくり来てくれればいいけど……」
「芳しい香りに誘われてきたのだな、そなたは。なに、余が迎えに参ろうぞ! リッカ殿は食していればよいぞ」

 ワンコに合わせて屈んでいるのは、アルトとエドワード君かな。リッカがくわえているのは……あれ、お肉か。焼いただけの。もぐもぐしているね……夢中だね……。

「……はっ! シャーロットの気配! って、やっぱり走ってきたんだね」

 と、同時に。アルトはすぐ近くまでやってきていた。息切れを起こしている私を心配そうに見ている。と、同時に。コップ入りの水を差し出してくれた。

「あ、ありがと……」
「いいんだよぉ……」

 助かったと私は頂戴することにした。ねっとりとした視線はするけれど、今は渇きを潤したかった。私は水を飲むことに集中する。

「シャーロット殿、豪の者ぞ……あのような眼に耐えうるとは……」

 エドワード君は一人、震撼していた。いや、私も平気とかでは……。
 というか、なんで水飲む姿を見られているのかが、不明だけど……まあ、アルトだし。

「なんか、エドワードが言っているけどね? 気にしないでね? つか、俺クラスになるとね? こうやって来るのがわかるんだよね? 迎えにとか、言っている時点でね?」
「ぐぬぬ……大人気ないものよ……」

 なんかマウントをとっているアルトに、今度はエドワード君が『ぐぬぬ……』と悔しそうにしていた。わちゃわちゃしている二人だなぁ……。

「もぐもぐ」
「わあ、リッカ……」

 リッカもとりあえずはこっちを見てくれた。尻尾も振っている。しっかりとお肉はくわえていた。いいんだよ、リッカ。お肉、美味しそうだねぇ。食べてていいんだよ……。


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