春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第五章

冬は終わらない



 私は思いの外、早くに追いつくことができた。

 リッカは海辺に留まっていた。彼は吠えている――誰かに話しかけているようだった。

「……水の女神様?」

 思い当たった私は、そう口にした。リッカは振り返ると頷く……悲しそうに。

「……うん。僕、お願いしていたの。ダイヤノクト……ご主人様の元に連れていってくださいって」
「……そっか」

 これ以上は私は察した。リッカは懇願した、けれども――水の女神様からの応答がないと。

「ああ……」

 こうして立っているだけでも、寒さにやられそう。
 寒さはますます厳しくなっていく。この寒さは故郷のそれを凌駕するほどまでに。

「……」

 意識がもっていかれそう……私の頭に巡るのは、これまでのこと。
 生まれた時から親がいなかったこと。孤児院での暮らし。独立してお店をもったこと。学園に通うことになって――数奇な出来事に振り回されるようになって。

 大切な人たちにも出会えたこと。

 そう……だね、リッカ……君とも……。

「シャーリー……シャーリー……!」

 ああ……泣いて、いるのかな……君は鳴き続けているね……?

「こんな、ことって……」

 こんな……一番よくわからないことで……終わろうとしているの……?
 突然訪れた寒さ……私の意識が朦朧としているのは……確か……で……。

「私は……大丈夫……だよ……」

 こんな……こんなことで……終わるわけには……。
 みんなは……みんなは、だいじょうぶ……?
 せめて、あんぜんな……ところに……あたたかな……。

「シャーリー……」

 もふもふ……?
 ぴったりとくっついて……くれるのは……。

「ふふ……」

 あったかい……。
 あったかいね、リッカ――。



 リッカの泣く声が止まない。

「くーん、くーん……」 

 温暖な気候、常夏の国ララシアでさえも、一面の雪景色。凍える冬の寒さ。
 もう、私は――。

「くーん――」

 君を置いて逝ってしまうんだ――。



 事件は解決したのに。

 起こらなかったのに。

 どうして。




「!」

 私は飛び起きた。暗い部屋、ここは――。

「寒い……」

 あの寒さほどではないけれど――馴染みの寒さといえた。

「戻ってきたんだ……ねえ、リッカ」

 私を心配そうに見ているリッカ、彼は枕元まで来ていた。

 ララシアの豪華なホテルの一室ではない。
 いつもの私の部屋だった。

「……そっか」

 部屋にも配置するようにしたカレンダー、日付は――新年の始まり。
 まだ祭りの準備も行われていない。私たち、こんなにも早く目が覚めたんだね。

「……わん」

 リッカはベッドから飛び降りると、すぐさま階下の玄関に向かっていた。そうなんだ、誰かが訪れてきているんだね……。

「……」

 君も私もね、思うところがあるよね。
 春の訪れを待つのみだったのに、猛烈な寒さが襲ってきて――それからの巻き戻し。

 リッカとは離れなくて済んだとしても。

 この日々は終わってなんてなくて……。 

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