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第五章
今回だって乗り越えてみせる
静かに待っていたという人物。リッカでなければ、気づかなかったことでしょう。寒さも堪えるということで、私も早急に招き入れることにした。
招き入れた後、その人は軽く頭を下げた。私はそんな、と手を振る。
「――早くに悪いな」
「……先生」
来訪者は学園の先生――モルゲン先生だった。
先生も繰り返しの日々の記憶を有していた。理解者でもあり、たくさん助けていただいている。
「……まあ、なんだ。無事だと喜ぶべきか――」
先生が困ったように笑っていると、リッカが小さくワンと吠えた。
「お、なんだ? リッカ?」
「あのね。モルゲンだけじゃないの」
リッカがそう言うと、扉を小さな手で叩いていた。
「店に来てるってこと?」
「うん」
リッカが断定しているので、私は閉じた扉を再び開いた。
「……シャーロットどのぉぉぉ」
朝早くということで、声は潜めていたけれど。やってきたのは今にも泣き出しそうなエドワード君と。
「無事……それは、うん。本当に良かったというか……」
目を潤ませながらも、複雑そうにしているアルトだった。でも、と彼は続ける。
「……急にさ、すげぇ寒くなって。君たちを捜している内に、ブラックアウトというか……」
「妙な話ぞ。ララシアで、あのようなことは有り得ぬことだ」
アルトもエドワード君も……ララシアの人たちもそう。あの原因不明の冬の訪れによって……。
「込み入った話になりそうだな。ひとまずは」
「はい、先生――」
扉を開けたままでしたね。閉めようとしたところ。
「あ」
大きく手を振っている、ツインテの女性。彼女は全速力でこちらにやってきている。
その後方にいるのは、表情を崩さずに追尾する長身の男性。涼しい顔で前方の女性にあっという間に追いついていた。
「……っ」
リナさん、そしてリヒターさん。しばらく会えなかった二人。ようやく会えたということと、このような事態になってしまったこと。私はたまらない気持ちになっていた。
「もう、なんなのよぉ……」
着いて早々、飛びつくように抱きついてきたリナさん。私は彼女を受け止めた。
「ご無事で何よりと、申しましたところで――事態を把握させていただきたく存じます」
妙に畏まったリヒターさんは、部屋に入るように急かしてきていた。どこか落ち着かない様子でもあった。
「我々……リナ様とも確認をとらせていただきました。こちらは謎の極寒によるものでございました。ジェム様方にいたりましては、何故――」
「わかった、わかったリヒター。ほら、部屋で話、な?」
モルゲン先生がリヒターさんの背中を押していく。『……しかし、人数増えたな』と呟きながら?
「……こちら、ダイヤノクトもなんだ」
ララシアだけではなく、この地までも。もしかしたら、世界全土に渡るもの、その可能性も有り得た。
今回は事件が起こったわけではなく――極度の寒さの襲来によるもの。
事件を解決したから、ではなく。
天災によって――終わりはもたらされるとしたら。
なんて……なんて、果てしない話なのだろう。
その場で話し合っていた私たちは途方にも暮れ、絶望にも――。
でもね、乗り越えてきたのも確かだった。
解決だってしてきたんだ。
無駄じゃなかったって、思いたかったんだ。
強がりだったとしても。
春はまだ訪れない。
また、あの日々が始まるんだ。
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