春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第五章

早朝の教室、ロルフ君と



 私が朝一番かと思ったけれど、そうではなかった。教室には既に先客がいた。

「――お、シャーリーちゃんじゃーん! おはようおはよう!」

 朝からテンションが高いのがすごい。ロルフ君が両手をぶんぶん振っていた。
 あの夢以来の、彼。こうして見ると、彼はいつもの彼ともいうか。

「……?」

 私はふと、思った。ロルフ君て、そういえば――どこまで把握しているんだろう?
 アルトたちのこと、ヤンデレたちとも称していた。その事実云々はさておいて。私の前世のことだけじゃなく、彼はどこまで知っているのかと。

「……一緒に学園生活。やり直し、だね」

 私がそう口にすると、彼は笑顔のまま止まった。

「……うん。そう、だね」

 それだけ返事すると、彼は黙り込んだ。口が回るロルフ君にしては、熟考しているようでもあった。

「ねえ、ロルフ君。『本当に久々』なことを知っているよね?」
「それは……うん、まあね」

 彼は誤魔化すことはなかった。夢での出来事、覚えてない振りも出来たでしょうに。

「……何故か、知りたい?」

 ――冬ちゃん、と。いつの間に距離を詰めてきた彼が、私の耳元に囁いてきた。
 慣れ親しんだ『日向ちゃん』相手なのに……私ときたらドキリとしてしまった。あまりにも蠱惑的ともいうか……聞いたこともない声でもあったから。

「それはやっぱりさ? もっと願って……望んで。オレのこと」
「あの、ロルフ君……?」

 爽やかな朝の風景に似つかわしくないほど、密着している私たち。

「もっと夢で逢えたなら。そう強く――」
「あのさ、ロルフ君――」

 彼の囁きが止まらない。私はもう離れようとしていたところ――。

「って、言ったじゃーん? もっと会いたいよー、してよーって!」
「へ」

 おちゃらけて、笑う彼。瞬時に離れた彼は、私の背中を軽く叩いてきた。数回。痛くはないけれど。

「でさでさ? オレも気になることがあってさー?」
「う、うん? どうしたの?」

 普段の調子で話している。それこそ何もなかったかのように。なんだったんだろ……? 私も彼に合わせて、平常心に戻ろうとする。

「……リッカちゃん、一緒じゃなかったね?」
「あ、うん……今、村にいるんだ」

 私は鋭い指摘に返事に惑うも、ここは答えることにした。隠すことでもなかったから。
 ロルフ君、リッカと一緒に来なかったって、どこかで知ったのかな。情報通でもあるというか。

「そっか……体調でも悪いの?」
「うんと……疲れ、かな。ちゃんと面倒みてくださる方もいるから」
「そっか……」
「?」

 ロルフ君は真剣な表情をしていた。リッカのことを本気で心配しているって、それが伝わってきていた。
 彼は元々犬が好きだというし、リッカのこともよく可愛がってくれていた。初対面からして優しかったよね。

「……あ、いや。なんだろ、これ……」

 ロルフ君は自身の胸元に手をあてていた。
 
「なんか、変な感じ……」

 彼自身がわかっていないかのような、不思議な感覚。それに陥っているようだった。

「……ま、うん、あれだ! オレもさ、お見舞いにいってもいーい?」
「うん、それはもちろん。リッカ、君に懐いているし」

 それこそ出会った直後でも。リッカは君のことを気にしていたりもした。ちょっと妬けるくらいに。とはいえ、明るいロルフ君に会ったら、あの子の気分も晴れそうだよね。

「そっかぁ……」

 ロルフ君は心から嬉しそうな顔をしていた。私まで嬉しくなるような。

 それから、続々とクラスメイトたちが入ってきた。明るいノリでロルフ君が出迎える。私も挨拶をした。さっきまで静かだった教室が、あっという間に賑やかになっていた。

 学園生活がまた、始まる。


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