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第五章
図書室の記憶
放課後になった。今に至るまで、私はずっと考えていた。授業中だろうと、休み時間だろうと。リッカをこうも気落ちさせた原因を。
人に慣れない、怖がっていたリッカ。それでも、最近は笑うようにもなったのに。
「……最近な気がする」
『猫の匂い、すごい。猫に会ってたんだ……また』
ある日のこと。リッカがすごく不機嫌になっていた。猫が苦手だったりしたから、それもあってかな。まず様子がおかしかったのはその時。
「……でもやっぱり」
それからしばらくして。リッカと女神様の聖地に出掛けた時だったかな。
『――あのね、シャーリー』
と、話しかけてきたけれど。
『ううん、何でもない……』
って、口を閉ざしてしまったこと……。
リッカは何か、言いたそうにしていた。
あの時、やっぱり聞いておけば良かったんだ……後になって後悔してばかり。あの時、あの時がって。
「……待っていてね、リッカ」
とことん日々を繰り返させるというのなら、私だって利用してやる。今からだって探ってやるんだ。
私は考え事をしながらも、歩いて向かっていた場所――学園の図書室だった。
本校舎に一角にあるそこは、確かな蔵書の数を誇っていた。梯子を使用するほどに、高さがある本棚がずらりと並べられている。知識の宝庫ともいえる場所。
あの聖地に行った日、確かにあの時からだった。他にも要因があるかもしれないけれど、手がかりはまずそこだと、私はふんだ。
調べよう。知ろう。そして、明日にでも単独で赴こう。
私は図書室の扉を開いた。
もう十二月には戻れない。その時は図書室に訪れることはなかった。だから、今回は『初めて』の訪れとなる。
それにしても、図書室か。この本独特の匂いが好き。空間も馴染みがあって、落ち着くともいうか。いいよね、図書室――。
「……あれ?」
私の脳内に、おぼろ気ながらも蘇る記憶。これは……冬花の頃? 高校の図書室で、私が本を並べていて……って、あれ……?
……私、図書委員だった? この記憶、今まで思い出したこともなかったのに?
冬花も本が好きだった。一緒に活動していた委員も、本好きの集まりで。委員しかいない時とか、同士で話をしたりして……?
私、高校入ってから一人ぼっちだったはず……? 片桐先生以外、そうだったはずなのに?
「……っ」
思い出せるのは、ほんの断片的なことくらい……今のって。
「……ううん」
今はともかく、本を探そう。前借りたのは、ガイドムック。それから、春の女神様に関する文献も探してみよう。
かつて訪れた聖地、その情報。それは思ったような成果は得られなかった……。
ガイドムックが一番、情報が乗っていたくらいだった。うん、もう一度借りることにしよう。
「そういえば……」
あの聖地の近くで会ったのは……金糸雀隊だった。正確には帰り道の登山道で、だけれど。
――金糸雀隊。私たち、特に私にとっての『死神』ともいえる存在だ。罪人と断定されたら最期、彼らは命を刈り取っていく。それも、尋常ならざる力で。
本当に何度……何度、命を奪われたことか。
その一人、しかも『長』と呼ばれる人物。
「あ……」
そう……そうなんだ。その時もなんだ、リッカの様子がおかしかったのは。
因縁のある金糸雀隊と会ったから? でも、彼らは元々は――春の女神の信仰者。とても信心深いともいう。
……しかも治療までしてくれたという。当時の私は罪人ではなかったから、そういうことだとは思う、多分。
「うーん……」
とはいえ、相手が相手であるから。リッカの気が滅入るのもわかるんだ。
聖地の近くに行く、また金糸雀隊に出くわす可能性もある。だとしても、今の私に容疑はかかってはいない。慎重に動けばいい。うん……やっぱり赴こう。
私はガイドムックと、それと数冊本を借りることにした。春の女神関連の書だった。国民として教えられはするけれど、改めて知っていこうと。
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