春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第五章

貴女はずっとそうだった



 比較的、近場にあったのは一家の方。すっかり眠そうな子たちでも、手を振ってくれた。私も笑って手を振り返す。ご両親は結局、私にも頭を下げてきた。これも私は恐縮するばかりだった。

「……あのね、ジェムさん。少し歩くけど。いい?」
「はい、もちろんです」

 エミルさんは申し訳なさそうにしていた。私は疑問に思うことなく、先導する彼についていく。

「……びっくりしたよ」

 エミルさんが呟いていた。それから私の方を振り返る。

「ここを訪れるだろうなって、思ってはいたけれど。てっきり、貴女の愛犬とでも来るのかなって――」

 エミルさんはそこまで言うと、口を手で覆った。なんだか、自分の発言に驚いているようだった。それからは笑顔で何でもないと言ってはいた。

「……」

 驚いているのは私もといえた……それは、前のループでのこと。エミルさんは何気なく言っただけかもだけれど……というか、私とリッカのことをご存じだったのですね。

「……まあ、平日に来るとも思っていなかった。それに勝手に踏み入れたりして」
「その節は本当に申し訳なかったです……」

 今のエミルさんではないけれど。私なら大丈夫だろうと仰っていたのにね……。

「本当に無謀だね」
「はい……」

 一緒に迷うことになったのだから……。
 それにしてもエミルさん、笑顔で詰めてくるね……却って、堪えるというもか……。でも、落ち度はこちらにあるわけで……。
 お世話になる家に着くまで、続くのかな――。

「――そうやって、省みずに助けたりして」
「エミルさん……?」

 笑顔がなくなった彼は、私をまっすぐに見ていた。

「……なんだろうね、これ。僕にもわからない……でもね、貴女は『ずっと』そうだった気がしてならなくて」
「エミルさん……?」

 この世界のループは、積み重なるものもあるから。無意識下でも、何らかの変化を与えていたりもする。だから、エミルさんはこうなのかな?
 ……でも、私とこの人は図書室でのやりとりだけ。そうでしょう?

「……うん、僕からもお礼を言っておかないとね。ジェムさん、あの子たちを見つけてくれてありがとう」

 そう言ったエミルさんは、困ったように笑っていた。

「ご両親はすぐに見つかったんだけれど、子供達は中々で……僕も祈るような気持ちで、あの地に辿り着いた。そうしたら、ジェムさんたちがいた」
「そんな……」

 私が辿り着けたのはそこまで、それなのに。

「でも、ご両親を見つけたのはエミルさんでしょう? 私だけじゃとても……」
「……というか、ジェムさんってさ?」

 私が手を振って否定すると、エミルさんは首を傾げた。ええと……?

「追いかけたのも、助けたのも貴女なんだから。もっと誇ればいいのに」
「え……」

 呆れたような顔、初めて見たともいうか。

「貴女達が辿り着いたのはね、清浄なる地でもあった。邪な気持ちを持つ者を拒む場所。そのようなところに着けたのも素晴らしいことだし」
「あの……」
「見ず知らずの子供達だって、ちゃんと支えてあげて。それに……僕のことも庇おうとしてもくれていた」
「いえ……」

 はにかむエミルさんも綺麗だと思った。それもあるのだけれど……その。

「ジェムさん? どうしたの?」
「……すみません」

 この人、ストレートに褒めてくるものだから……私はただただ気恥ずかしくなっていた。彼の顔をうまく見られない。顔はさすがに赤くなってない、ないはず……。

「疲れでも出たのかな――」

 私の様子を見ようと、エミルさんは近づいてくる。でも、途中で足を止めた。

「あー……」

 私の顔をじっと見ると。

「……うん、疲れが出たんだね。あと少しだから」
「はい……」

 音でわかる。エミルさんは踵を返したようだ。そう、そうなんだ、疲れが出たから。

「おぶる?」
「い、いえいえ、大丈夫です……!」

 そう提案してきた。私は親切心を有り難く思いつつも、遠慮した。


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