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第五章
心地良い目覚め
その後、エミルさんが香ごと渡してくださった。安らぐような香りだった。
「……慣れない環境だから。そりゃ眠れないよね」
エミルさんも一緒に家まで入ってくれた。ベッドまで付き添ってくれるみたい。
私、ワンピースのままだけれど、そのままベッドで横になった。布団をかけてくれたのはエミルさん。
「ありがとうございます――」
眠る私に、側についていてくれる……すごく、安心する。
「うん、おやすみ。安心して眠ってね」
深い眠りに落ちていきそう――。
「――僕が守るから」
エミルさんはどこにも行かない。ベッドの近くにある椅子に腰かけていた。
「……ずっと、そうしたかった。そんな気がするんだ。だからかな――こんなにも満たされているのは」
どこまでも優しい声だった。
「ん……」
ベッドからは木の香り。ふかふかの布団はいつまでも包まれていたいくらい。お香も安らぎを与えてくれる。私は心地よい眠りから目を覚ました。
「おはよう、ジェムさん」
「おはようござ……」
……?
……!?
私の眠気は吹き飛んだ。慌てて体を起こす。いやいや……いやいや!
「そんな急に飛び起きて、大丈夫?」
近くの椅子に座り、本を片手に寛ぐエミルさん。彼は悠長に聞いてくる。
「は、はい……そちらは問題なく……」
そちらは問題ない、問題、というか。気になること、そうなると。
「エミルさん? ……どうしてこちらに?」
どうして眠る私の側にいたのか。それに窓の外を見ると、もう夕暮れ時。まさかずっとってことはないとは……。
「どうしてって。心配だったから。よく眠れているようで良かった」
「そ、そうですか……」
ずっとだったようで……良かれと思ってのこと、そうなんだよね? 寝顔とか見られるのは正直、抵抗はあるけれど……私を心配したということで。
「どう? 食べられそう? 無理はしないで、ね?」
にこやかに尋ねてくるエミルさん、本当に親切心からの行動なんだ……。
「はい、よく眠れましたので。お腹も空いてきました」
「そう、良かった。身支度終えたら、もう一度出てきてもらえる? 今ならまだ、準備始めたばかりだろうし」
「それなら手伝えそうですね。承知しました」
エミルさんのおかげで、快眠もできた。安心できたのが大きかったと思う。
「うん。それじゃ、またあとでね」
エミルさんは小屋の外に出ていった。さあ、手早く支度をしよう。着替えを行うわけではないから、パパっと。
「……っ」
小屋の外に出て、私の目を止まったのは。
空を見上げて黄昏れていた、エミルさん。夕闇を帯びた彼は、あまりにも綺麗で――。
「……」
儚くて。私は見惚れてしまっていた。
「……あの、お待たせしました」
……いけない。私は気を引き締めて、声を掛けることにした。
「……あ、ジェムさん。こっちこそ。ぼーっとしてた」
私に気がつくと、エミルさんは笑いかけていた。少し照れくさそうに。
それじゃ行こう、とエミルさんが手招きをする。そう、何事もなかったかのように。
「エミルさん……」
彼はきっと、思いに耽っていたんだ。何かを思い悩んでいると――。
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