春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第五章

森のバーベキュー



 森の方に出ることになった。流れる小川に沿って進むと、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。美味しそうな匂いが漂ってきてもいる。

「お、来たっすねー! エミル兄ー、シャーロットさーん!」

 ティムさんの大きな声がした。私たちの来訪、すぐに気づいたみたい。

「……うーん、もう準備始めちゃってたか」

 エミルさんが何ともいえない表情をしていた。私たち、準備に加わる気満々だったから。

「ですね。でも、まだ手伝えそうな気はします。片付けだって、残ってますし」

 この匂い、おそらくバーベキューだと思う。焼いたりとかも出来るし。

「うん、そうだね。それもそうだ」

 エミルさんも笑って頷いた。

 ……バーベキューか。ララシアでも楽しんだね。アルトとエドワード君が準備してくれていて。リッカも美味しそうに食べていて。

「……」

 本当に美味しそう。リッカと味わいたかったな。
 ……と、浸ってしまっていた。

 アルトたちにも文で告げることになったよね。大騒ぎにはなってないと思う……うん、多分。

 近づくと、あのご家族の姿もあった。お子さんたちとじゃれ合っているのは、幼い獣人族たちだった。すっかり仲良しになっているようだった。

 ティムさんが大きく手を振っている。親しみ溢れた彼に振り返そうとするも。

「――あなたが、ですか」

 ティムさんの隣にいたのは、獣人族の女性だった。まっすぐに切り揃えられた漆黒の長い髪、迫力のある美女。そんな彼女は私を見ているようで――。

「……?」

 なんだかおかしな感覚だった。自分でも説明がつかない、奇妙なもの。

「……こほん。『あなた』がシャーロットさん、でしょうか?」
「……!」

 ……そう、私だ。私のことを呼んでいるんだよね? 反応が遅れてしまった。

「――レイチェル、尋問しているみたいだよ」
「そうっすよー、レイチェル姉、怖いっすよー」

 エミルさんの言葉に、ティムさんも乗ってきていた。麗しの人は、眉が寄っていく……。

「あの、遅れてすみません。シャーロット・ジェムと申します。しばらくお世話になります。よろしくお願いいたします」

 挨拶、こちらからしないと。私は頭を下げた。

「いえ、こちらこそ。どうぞ、お顔を上げてください。私の名はレイチェル。エミルに相談しにくいことは、どうぞご遠慮なく」

 言われるがままに顔を上げると、レイチェルさんが優しく微笑んでいた。

「……」

 私は本当に驚いてしまっていた。さっきからそう、どうしてかはわからない。こんなにも良くしてくださるのが、こう、慣れないというか……。

「いや、レイチェル。こちらでフォローしておくから。だから気を遣わなくていいから」

 エミルさんがずいっと前に出た。

「あー……そういうことですか」
「はい、そういうことっす」

 エミルさんの顔なじみのお二人、彼らは何かに頷き合っていた。

「……何かな、もう。ほら、ジェムさん。僕が焼いたりするから。魚が主体だけれど、肉もあったりするから。野菜からの方がいい?」

 エミルさんはトングを手にし、焼く気満々だった。お皿まで用意している。

「……いやぁ、お二人とも? ここは共同作業っすよ! 愛の!!」

 ティムさんが高らかに言ってきた。突っ込みそうなレイチェルさんまで、同意するかのように頷いている。

「な、何を言って……」

 落ち着きがなくなったエミルさんをよそに、ティムさんは私に近づいてくる。

「……どうか、シャーロットさんのお力添えが必要なんです。ちゃんと、見ていてくださいね、エミル兄のこと!」

 すごく切羽詰まった目で見てくる……。

「は、はい……」

 とりあえず、ちゃんと見ていればいいのかな? よくわからないけど……。


 私はその直後、彼らの言いたかったことがわかることになる。


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