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第五章
エミルさんは多忙
しおりを挟む「……ん」
外で雷鳴が鳴っている。目覚めた私は体を起こし、窓辺に立ってカーテンを開けた。
「うわぁ……」
激しい豪雨だった。これ、外に出られるかな……ううん、出よう。エミルさん家、目の前なんだし。傘もあるし、お借りして。
私が朝の準備を終えた頃、扉を叩く音がした。
「――ジェムさん? 今、いいかな?」
「はい、開けますね」
私は急いで扉を開いた。この雨の中、待たせるわけにもいかなかった。
「おはよう、ジェムさん」
「おはようございます」
雨合羽というには、少し違うのかな。特殊な加工が施されたコート、それをエミルさんは纏っていた。この豪雨の中でも平気そうだった。ただ、表情は申し訳なさそうにしていた。
「……その、今日というか。ここしばらく、というか。僕、他の用件にかかりきりになって。あまり寄れなくなっちゃって」
「そうなのですね……」
やっぱりというか、多忙なんだ。エミルさんは……。
「ティムやレイチェルもそうなんだ。他に世話役頼めそうな人に来てもらうから。僕が引き受けるって言っておいてね……」
あのお二人まで……そっか。それにしても、エミルさんは気にされているよう。そんな、悪いな……。
「こちらはお気遣いなく。大人しくもしていますから」
「……うん、ありがとう」
あまりにも浮かない顔。なにかのお仕事とかかな? 色々ご事情はあるんだよね。
「……」
今のエミルさんに、ぶつけていいのかな……あの質問を。まあ、知らない、とか。知っていても国直属でもあるくらいかな? 良くない感情を持っているのは、被害被っている私たちくらいだろうし……。
「っと、僕行くね? 待たせているんだった」
「あ……」
エミルさんは慌ただしく去ろうとしていた。そっか、時間作って気にしてくださったんだよね……。
「夜、夜っ! それなら時間あるからっ! 困ったことがあったなら、遠慮なく、ねっ!?」
エミルさんの姿も声を遠くなっていく。どこまでもお気を遣わせてしまっていて……私は手を振ることにした。ああ、見えなくなってしまった。
「……お疲れの夜に聞くのもね」
……うーん。ひとまず、エミルさん以外の人に聞いてみようかな。
さて、約束通り、大人しくしていようかな。お借りした本もあるし、部屋に本棚があった。エミルさんにも読んでいいよって、昨日読書の話をしている時に許可戴けた。なら、本を読み耽ろうと――。
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