春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第五章

雨の中のおはなし会

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 私は今、あのご一家の元を訪れていた。

 あの後、読書に集中しようと思ったけれど。こう、世話になりっぱなしという事実が、頭をぐるぐるとしてしまっていた。気分転換も兼ねてということもだった。

「きゃー」
「あははは」

 子供達が室内を元気に走り回っていた。遊びにきた獣人の子供たちも一緒になって、だった。

「もう、静かにしなさい! ……うるさくて、ごめんなさいね?」
「いえいえっ! こちらも突然訪れてすみません」
「いえいえ。歓迎しますよ。ゆっくりしていってくださいね」
「ありがとうございます……」

 私はお茶を出されて、おもてなしを受けていた。お母さんと向い合せにテーブルに着いていた。子供たちは元気元気。

「じゃー、お姉ちゃん、絵本読んで―」

 私が持参してきた絵本に、子供たちの視線は集中していた。

「もちろん。じゃあ、みんな大人しく座ってね?」
「はーい」

 返事も元気良かった、それは良いことだよね。私が床に座ると、子供たちも囲む。私はゆっくりと絵本を読み始めた。ああ、目を輝かせている……可愛いなぁ……。



 しばらく読み進めていると、あるページが目につく。春の女神様の愛鳥でもある――一羽のカナリア。

 ……金糸雀隊のこと、聞いてみる? こんな無邪気に楽しんでいる子たち相手にだけど……。

「……ねえ、みんな? 金糸雀隊って知っている?」

 聞いてしまった。ああ、緊張する……これで知っているとか、色々語るとなると――。

「かなりあたい? なにそれー?」
「たい、ってなに? なーに?」

 獣人族の子たちがそう答えていた。本当に不思議そうにしていた。

「僕、カナリアは知っているよ。お姉ちゃんの髪の色と一緒なんだよ」
「わー、綺麗だねぇ。小鳥さん、かわいいよね」
「お米が大好きな鳥さんとか! とってもかわいいんだよー」
「鳥さん、雨の中ってどうしているのかなー?」

 可愛いけれど……脱線していく、話が大きく脱線していく。今、小鳥の話から、雨の話、でもってカエルの話にまでなっていった。えっと連想づいてはいるから、脱線ではないのかな?

「……そうなんだね」

 この子たちは、本当に金糸雀隊は知らない。そういう認識で合っているんだよね? うん、良かったのかな。小さな子を脅かしたりはしていないのなら。



 こうして絵本を読んでいく内に、子供たちもウトウトとしてきたみたい。彼らは体をくっつけあって、床に寝転んでいた。お母さんが立ち上がると、包むように毛布をかけていた。愛しげに子供たちを見つめている。

「……ふう、やっと静かな時間ね」

 と、言いつつも。その瞳はとても優しい。

 私たちは席に戻った。すやすやと眠る子供たちを眺めながら。

「さて、再開しようかしら」

 彼女が近くの箱から取り出したのは、洋裁セットだった。商売道具ともいう。

「そうね、シャーロットちゃんもやってみます?」
「私もですか?」

 既に完成品がいくつもあった。彼女が手がけたキルト製品、実に見事だった。

「うちの旦那もね、薪割りとか採取とか、狩りとか。そうして貢献しているんです。私も恩返しをしたくて」

 それで旦那さんがご不在だったんだ。お母さんの方は、作り上げたのをプレゼントするんだろうね。

 キルトは挑戦したことなかったな。うん、そうだ。私も。

「教えていただけますか? 私も作りたいです」
「ええ、もちろん。思いを込めて、作り上げる。さぞ喜んでくださることでしょう」
「はい、思いを込めて」

 私は素敵な考えだと思い、しっかりと頷いた。すると『まあ』と、目の前の女性は頬に両手を添えていた。ええと……?

「ええ、ええ……! 絶対に喜んでくれることでしょう……!」 
「!?」

 寝ている子を起こさないボリュームとはいえ、かなり興奮しているというか……!? そんな興奮する要素あった?

「――エミル君にあげるのでしょう?」
「え」

 私は単純に、子供たちが喜びそうな可愛いのを作るつもりだった。ここでエミルさんが――。

「あ、でも……そうですよね。一番お世話になっているのだから……」

 あれだけよくしてくださっているのに。忙しい合間を縫ってまで……ただの後輩に……。

「はい、エミルさんに作ります」
「そうそう、その意気よ」
「? そうですね。それで材料費とかですが、小屋にお金がありますので」
「いいのー、いいのよー? そうそう、子供たちと遊んでくれたお礼ってことで。さあ、作りましょ、そうしましょ」

 私以上にテンション高い、というか。張り切っているお母さん……?

 エミルさんが喜びそうなもの……うん、『アレ』にしようかな。そうしよう。

 私は彼女に教わりながら、雑談もしながら。贈り物を作り上げていく。

「……」

 お母さん、か。ふふ、お母さん……目の前の彼女にはバレないように、私は顔を綻ばせていた。



 夕ご飯時になったので、私たちはお開きとなった。あれだけ賑やかだったのが、こんなにも静かになっていた。

 雨はもう小ぶり、明日は晴れるのかな。私は傘を手に、歩いていく。

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