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第五章
可憐な訪問者
この地での日々が続く。エミルさんたちはこの日も不在だった。
私は教わったキルト作り、それと森に赴いて薬草の採取もしていた。最低限の用具は持ち歩いていたので、薬も作れるかなと。
エミルさんが来られない時。主にレイチェルさんが、たまにティムさんが来てくださった。皆さんも御多忙でしょうに……。
そして。
『おっと、あなたがシャーロットちゃんね? うちのエミルがお世話になっているっていう!』
とても快活な女性。エミルさんに顔立ちが似ている彼女は、叔母さんだという。あと、お世話になっているのはこちらと訂正したら、豪快に笑って返された。
そういえば、あまり他の人たちとは会わないな。もっと色んな人の話も聞いておきたかった。それこそ、解決の手がかりとなるような――。
「――こんばんは。お食事をお持ちしました」
いつの間にか、夕ご飯時になっていたんだ。獣人族の少女がバスケットを持ってやってきていた。
あ、そっか。エミルさんがお願いした方かな? 私は食べようとしていた保存食をそっと机に置いた。
「わざわざすみません。ありがとうございます。上がってください――」
私は扉を開き、彼女と面した。
「……!」
なんというか……驚いた。ほんわかとした、愛らしい子。諍いと無縁そうな、温厚そうな出で立ちだった。
繊細そうなエミルさんも、何気に只者じゃないし。レイチェルさんも隙がないし、ティムさんはガタイがいいし。獣人族のイメージはそっち寄りになってしまっていた。うん、偏見だったかも……?
「あの……上がってもいいの?」
少女はバスケットを抱えたまま、恥ずかしそうにしていた。彼女の長い尻尾がピンと立っている。緊張しているのかな……?
「あ……」
私も私で、今になって恥ずかしくなってきた。最近、コミュニケーションが上手くいくようになったからか、調子に乗ってしまっていたかな――。
「……ふふ、良かった。実はね、二人分あるの。一緒に食べていい?」
「は、はい……!」
嫌そうじゃない……嫌そうじゃない! 私はそう自身に言い聞かせて、彼女に入ってもらうことにした。
き、緊張するけれど。でも、頑張って話そう……!
彼女がバスケットを机の上に置く。私はカトラリー類を並べる。さあ、共に食事をと向い合せに座ったところで。
「……」
「……」
じっと私を見つめる彼女。話題を選び悩んでいる私。最近話せるようになったと、過信していたんだ……私はコミュ障だったじゃない……。
話題……聞きたいことならある。
子供たちは知らないと言っていたけれど……でも、それって幼いからってこと。それもあるのかもしれない。なら、私と同じくらいの彼女なら?
質問内容としてはアレだけれど、でも、このまま黙っているのも……よし。
「あの、突然の質問なのですが……!」
「ふふ、なあに?」
彼女は相変わらず私を見つめたまま。それでいて、愛らしく微笑んでいる。
「金糸雀隊、御存知ですか? 見かけたり、とか」
「……」
――彼女は笑顔のまま。ずっと、嫋やかに。
「ふふ、噂で聞いたりとかは。精鋭集団、なのでしょう?」
「……」
変わりない笑い顔で――そう口にしていた。
「どうしてなの? なぜそのような質問を?」
「それは……」
逆に聞かれた。彼女は可愛らしい顔に相応しい、笑顔をしている。しているのに……心が落ち着かない。
「……子供たちとそういう話題になって」
「そうなの?」
「……はい。それに、この近くでも見かけたことがあって」
「まあ、そうなの。それは、任務の最中だったのでは?」
青白くなっていく私とは違い、頬を紅潮させたままの彼女。
「……ねえ? せっかくの手料理なの、食べましょう?」
「そうですね……」
彼女の手作りだったんだ。なら、きちんとご馳走になろう。彼女はバスケットを開いて中身を見せてきた。ああ、より一層美味しそうな匂いが――。
「……?」
微かにだけど、わかる。この匂いって、いわゆる……。
「――どうして、たべないの? とぉっても、おいしいのに?」
「え」
この声は彼女? こんな纏わりつくような……粘着質な声、していた……?
彼女の長いしっぽがゆらゆらと揺れている。私を惑わそうとしているかのように――。
「……せっかくですが、私はいただけません」
声が震える。こんな、可愛らしい笑顔の子が。にこにこ友好的な子が。こんな、こんな……。
「口には……できません」
私は拒絶の意を示した。食べるわけにはいかない、だって。
――睡眠作用のある薬草、それの匂いがしたから。
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