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第五章
エミルさん、フリーズしてる?
「――いやぁ、壊しましたねぇ! エミル兄!」
「私達への手間賃は結構です。ただし、材料費は請求します」
翌日になって、私たちは壊れた扉の修理をしていた。天気は快晴、こんなに晴れたのも久々かも。
ティムさんとレイチェルさんで段取り良く進めていく。私は作業の邪魔にならないようにサポートするのが精一杯だった。
「……この度は申し訳ない。それでね、僕が壊したんだから。僕にも直させてくれないかな?」
「いいえ、エミル。ここは手際よい私たちにお任せを。あなたには薪割りをお願いしていますから」
「……うん、扉の修理と薪割り関係ないよね?」
と言いつつ、エミルさんは律儀に次々と薪を割っていた。腕前は見事だった。
ティムさんも『エミル兄の器用基準がわかんないっす』と突っ込んでいた。確かに。
「……って、シャーロットさん。今回のことは……いや、どう言えばいいっすかね……」
ティムさんは言いかけて、そして止めた。彼が言おうとしていることはわかる。きっと、気にしていることも。あなたが悪いということは決してない、でも私にはどう反応したらいいのか、それがわからないものだった。
「……。一休憩、いれましょうか」
レイチェルさんの提案で、私たちは休憩することにした。
地面に敷かれた大布の上に座り、私たちはお茶をしていた。お茶の葉は私の方で提供していみた。口にするまでドキドキしていたけれど、わりと好評のようで良かった。
「――して、シャーロットさん。エミルの家で暮らすことになると」
「は、はい……」
「異性。それも婚前の、ですか。よろしいのでしょうか?」
当然の質問だとは思う。受けるこちらには、これこそ心臓に悪い質問だった。
「すみません。私が暮らすところが居住区の為、提供することが出来ず」
「いえいえ……!」
確かに、レイチェルさんの所。同性の方の方が、というのもある。あるんだけど……。
「レイチェル。僕が側で支えるから。だから心配しないで」
「あなたがそう仰るのでしたら……」
エミルさんがはっきりと口にした。レイチェルさんも反対することはなかった。むしろ。
「ならば、もう伴侶に――番わられてはいかがですか?」
「!?」
あ、危なかった……! 私、お茶を噴き出すところだった。なんとか、踏みとどまったけれど……。
「……」
エミルさんは紅茶を口にしたまま。すごい、さすが。動じてない――。
「エミル兄、フリーズっすか?」
「ものの見事に固まってますね」
……。
……本当だ。微笑みをたえたまま、喋りも動きもしない。
「……おほん。レイチェル、君にしては過激な発言だね。それでいて軽率な発言だ」
あ、動き出した。レイチェルさんはさらっと『すみません』とだけ。
「ごめんね、ジェムさん? 変な話しちゃって」
「いえ、こちらは全然……」
いつものエミルさんが、私のことを優しく気にかけてくれていた。むしろエミルさんの方が……。
「いいと思うっすけどねー」
「ですね」
二人は目を合わせて、頷き合っていた。
「……さてと。休憩は十分だよね? さあ、作業を再開しよう!」
エミルさんが突然仕切り出した。お二人は呆れた目で見ている。それでも、従うかのようで作業を再開していた。私もお茶セットを片付けたあと、すぐに加わることにした。
「かわいいんだから、エミル兄はー。そんなに二人きりになりたいんすねー」
ティムさんの揶揄いの言葉に。
「……」
エミルさんはまたしてもフリーズしていた。
エミルさんの家でお世話になることになった。といっても、日中はエミルさんはほぼご不在。それに夜は別々の個室。
霧が晴れて、この集落を出ていく。その時までは。
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