春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
413 / 557
第五章

準備室にて

しおりを挟む


 学園の図書室は、休日も午前中のみ解放されていた。確かエミルさんは初日もいらっしゃったはず。

「失礼します」

 初日の今日はそこそこ人がいた。カウンターも列をなしている。

「エミルさん……」

 柔和に応対しているのは、エミルさんだ。うん、いたね……。
 本の返却、しないと。学校のもだけれど、エミルさんからお借りした本も。

「……」 

 私はあの夢を見たあと、考えていた。エミルさんには『口外』はしないと誓っていた。なら、素知らぬ顔をした方がいいかとも。
 でも……正直に伝えることにした。口外しないのはそう、それでも私は思い出してしまったと。どのみち、鋭いエミルさんにはバレてしまう気もしていた。


 さあ、私の番だ。後ろに人も並んでいるけれど、どうにかお話できないか、それを提案してみよう。

「あ……ジェムさん」

 私を見ると、エミルさんの目元は深く笑んでいた。

「……」

 私は自分でもわからずにドキッとしてまったけれど、いけないと笑顔で返す。エミルさんも微笑んだままだった。

「ふふ、来てくれる予感がしてたんだ。嬉しいな」
「……っ」

 いつもの綺麗な笑顔に加えて――艶めかしさもあるかのような。

「どうかした?」
「い、いえ……」
「そう?」

 気がつくと、いつもの彼の顔があった。そうそう、いつもの彼。優しい眼差しなのも変わりのないもの。

「……」
「……」

 互いににこやかに見つめ合ったまま。と、こうしている場合ではないんだ。なんとか切り出さないと。
 そう思っていた時に、話しかけてきたのはエミルさんだった。

「ねえ、ジェムさん? この後、時間があるかな? お願いしたいことがあって」
「そうなんですか? こちらは問題ありませんよ」
「良かった。じゃ、終わるまで待ってもらってていいかな? 奥に準備室があるから、そこでゆっくりしてもらっててもいいし」

 奥。エミルさんが座っている場所の背後。扉を隔てた先にある場所。図書委員専用の場所に、長居するのも……。

「……ある意味、ごめん。注目浴びさせちゃったから」
「っ!」

 後ろの人からもそう。行き交う人たちからもそう。視線が止まない。エミルさんの発言により、私は妙に注目されてしまっているんだ……!

「……はい、お言葉に甘えます。大人しくしていますので」
「うん。それじゃ、どうぞ?」
「お邪魔します」

 エミルさんは返却処理を手早く済ますと、一旦立ち上がった。制服のポケットから鍵を出して、開錠していた。彼によって扉は開かれ。

「書庫内にも本はあるし、お茶も好きに飲んでいいから。ね?」

 エミルさんの言葉と共に、扉は閉められていく――。

「……」

 鍵がかかる部屋。そうだよね、それはそうだよね……。

「……」

 理由は不明にせよ、鳥籠を形成するほどの執着の持ち主。そんな相手と密室で二人きり……。

「ううん、人に聞かせられる話でもないし。そんな長くでもないし」

 今回の私からの話、それは『覚えていた、でも口外する気はない』と。それさえ伝えられればいい。

「本を読んでいいとは仰っていたけれど」

 準備室には本棚と、アンティーク調の長机があった。積み上げられた書類もある。さらに見渡すと、給湯室にあたる部屋もあった。

「ふふ」

 前世の図書委員時代に思いを馳せた。私たちの学校の図書室にも当然、準備室はあった。あっちはパソコンやタブレットでの管理だったり、色々と違ってはいた。それでも懐かしくて。

「……っと、こうしてよう」

 こう、勝手に触るのも悪いと思ったので。私は椅子はお借りするにしても、大人しく座り続けることにした。
 私の鞄から取り出したのは、フォトアルバム。写真のリッカを眺めながら、私は待つことにした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します

恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。 なろうに別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。 一部加筆修正しています。 2025/9/9完結しました。ありがとうございました。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます

山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった 「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」 そう思った時すべてを思い出した。 ここは乙女ゲームの世界 そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ 私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない バットエンド処刑されて終わりなのだ こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

処理中です...