春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第五章

大罪人には――



 次々に襲いかかる金糸雀隊たち、彼らは攻撃の手を止めない。多勢に無勢、それでも私たちは抗っていた。

 エドワード君は、水の魔力と剣技を駆使して。

 アルトは培ってきた戦闘力で、狙われている私を守りつつも撃退していく。

「……っ!」

 私だってそう、この魔力をぶちまけていた。
 さあ、凍てつかせよう。これまでの怒りをぶつけるかのように。

 何度、苦しめられてきたことか。
 何度、殺されてきたことか。
 何度、何度。何回も、何回も、繰り返しの日々を経て、何度も――。



 激戦は続いていた。その果てに――。

「く、くそ……」
「我らはなんと……しても……」

 金糸雀隊たちは――地面に伏せていた。息も絶え絶えだった。かなりの痛手を負わせることができた。

 ……。
 ……胸なんて痛まない。どれだけ、どれだけ……この人たちにやられたことか。

「はあはあ……」 

 とはいえ、私たちも立っているのがやっとだ。

「なんで長は来ないんですかぁ……」
「……こちらが知りたいくらいです。何をしているんだか」

 金糸雀隊の一人が涙ながらに言っている。他の人たちも士気が下がっているようだった。

 ――『長』と呼ばれる男がいない。
 真っ先に私を殺めてきた彼が。尋常ならざる強さを持った彼が。

 ……いえ、いないならそれはそれで。今回は不可解なことが多すぎる。今になって女神像の破壊? 広場の? 学園の? わからないことが多すぎるから、立て直そう。

「……リッカ」

 君が遠くに行っていたこと、幸いだったんだ。危ない目に遭わなくて済むね。

「近くでリヒターが待機している。馬に乗って――」

 そう言い終える前に、アルトは。

「アルト!?」

 ――彼はふっとばされていた。受け身はとれたものの、完全に不意をくらっていた。自分を吹き飛ばした相手を呆然と見上げている。私も共に相手を見た……ああ。

「……」

 出で立ちからして違っていた。纏うオーラも違う。そうだ、彼は。

「……これが、我の役目。我の使命だ。何を迷うことがある――我は『長』として」

 ――金糸雀隊、隊長。覚悟を持った彼が、私に狙いを定める。

「……っ」

 この寒空の下、私の額に汗が伝う。相手の静かなる殺気に呑まれそうになる。
 逃げようと背中を見せたら。降伏しようとひれ伏せたとしても。
 彼はきっと逃がしも許しもしない――私の命を絶つまでは。

「させないっての!」
「何としても守りきるぞ!」

 アルトもエドワード君も、私だってそう。長と対する決意をした。



 繰り出されるは相手からの猛攻、速さも繰り出す一撃もそう――人間の力とは思えないもの。

「くっ……」
「こ、これほどまでの強さだったのか……」

 私たちは防戦一方だった……相手が強すぎる。
 迷いがなさすぎる。
 この強さはなに、なんだというの。

「……あ」

 聞こえたのは咆哮。夜空に響き渡る遠吠え。

「がるるるるるる――」

 戦っている内に高揚していったのか、長は猛っていた。そう――理性を失った獣、そのもの。
 ……獣?

「……ぐはっ」
「くっ……」
「!」

 一瞬にして――二人が倒れてしまった。荒ぶる呼吸のまま、長は私の方に体を向ける。

「……シャーロット・ジェム」
「……」 

 私に、向けられるものは。

「……我の使命、役目。それは――大罪人を罰すること」
「あ……」
「我らが女神が命じた――大罪人、シャーロット・ジェムを殺めよ、と」
「……」

 殺意、なんだ。

 ねえ、どうしてなの。
 どうして、こんなにも心が苦しいの。重く、つぶされそうになっているの。
 今にも殺されそうだから? その恐怖から?

「シャーロット・ジェムを殺せ。すべては女神様の意のままに――」

 ……ねえ、待って。女神様が? 女神様が望んでいるの? そんなおかしな話が――。

「大罪人には死を。大罪人には死を。大罪人には死を。大罪人には死を。大罪人には死を――」

 壊れたように、何度も呟く長。そうだ、惑っている場合じゃない。今、立っていられるのは、私ぐらいだ。私が守らないと。

「簡単にやられたりしない……!」

 私を凌駕する強さを持つ相手。ああ、足が震える……でも、退けない、退けないんだ!

 最期の氷の魔法になる……だったら、全身全霊を込めて……!
 相手にぶつける……!
 私は目を閉じて、全魔力を放出した。最大級の氷の魔法、相手を覆いつくしていく。

「……」

 静かだ。私は目を開けた。そこにいるのは、氷漬けとなった長の姿――。

 バキ。バキバキ。
 音が、した。

「あ……」
「――無駄な抵抗を」

 内部から破壊されていく、氷。砕かれたのは、私の魔力……。

「……」

 もう、私の氷の魔力は尽きてしまったけれど。

「借りるね、エドワード君」
「む、そなた……」

 エドワード君の宝飾刀を拝借した。たたではやられはしない。せめて、一矢を報いてみせる。時間稼ぎだっていい。リヒターさんやリナさんが察して――せめてこの二人を助けてくれたら。

「女、まだ抗うか」
「ええ」

 私は震える両手で宝飾刀を構えた。そうだよ、最期まで抗ってみせる。




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