春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第五章

小さな足で、小さな体で


「リッカが認めなくてもね、私はそう思っているからね。君は強い子だって」

 それにね、リッカ。

「また……姿を現わしてくれて、ありがとう。会いたかったよ、会いたかったんだよ」

 私はね、こう考えていたの。誰かの鳥籠に囚われた時――君との未来が消失してしまうのだと。今もきっと、エミルさんの鳥籠の中。だから、君は消えていたのかもしれない。なのにね?

「ぬいぐるみ、置いてきちゃったけど。会いたいって願っていたの」

 お花のぬいぐるみ。君が喜ぶと思って贈ったもの。願いを込めたの。

「……これ?」

 リッカの口元が、淡く、白く発光した。彼がくわえていたのは――あのぬいぐるみだった。
ぽとりと地面に落ちてしまったけど、リッカは大切そうに抱きしめた。

「あのね。おばあちゃんとの旅の途中だったの。僕がね……薄れていくようだったの」
「それって……」

 私が誰かに囚われた時、リッカは消失していってしまうから……今回も例にももれずだったんだ……。

「そんな時にね、このお花さんが現れたの。僕、ぎゅっとしてたの。シャーリーの匂いがした。優しい声がしたんだ」
「そう、そうなんだね……」

 そっか、ちゃんと届いていたんだ……ねえ、リッカ。

「私、強く願ったんだよ。リッカに会いたいよーって。リッカと一緒にいたいから」

 本当なんだよ。私の心からの願いなんだ。君に伝わってほしいのに。

「……僕もね、ずっと思っていたの。シャーリーと一緒にいたいって。でもね、いつもそれはかなわなかった。アルト達の想いの強さに、押しつぶされていたの」
「……リッカ」
「僕はね、消えるのを待っているだけだった。僕が弱くて、勇気がなかったから……」

 ――でも、って。リッカは足を一歩ずつ前へ。少しずつだけど、私に近づいてくる。

「それはもう嫌。僕、シャーリーと一緒にいたい。弱くて勇気がないけれど、負けたくないの」

 ゆっくりとした足取り、でもしっかりとしたものだった。小さなあんよで、踏みしめてくる。

「……だからね、伝えたいの。僕がずっと言えなかった『事実』を――」

 小さな体で、勇気を出して。

「あの嵐の日、いつもしていなかった『匂い』がしていたの。それが一緒で――」




「――む? そなた、顔色が優れないな。休んだ方がよいのではないか」

 扉を開けた先に、すぐエドワード君がいた。彼は、『あ』と声を出した。

「い、いや、余は盗み聞きなどしてはおらぬ! おらぬのだぞ!」
「う、うん。そこは信じてるから。心配かけちゃったね?」
「シャーロットどのぉぉぉ」

 そんな泣きそうな顔しなくても、本当に大丈夫だからね?

「……うん、休ませてもらおうかな」
「うむ。そこの個室を使うが良いぞ」
「ありがとう。おやすみ」

 ……そうだね、疲れたかな。お言葉に甘えて、リッカと一緒に眠ることにした。

「うむ、しっかり休むといいぞ」
「うん、おやすみなさい。エドワード君も休んでね? 交代するから」
「うむ」

 そうだね、君にも。アルトやリヒターさん、リナさん。先生にもそう。




 個室に入り、私はベッドへと向かう。リッカは上がってこようとしない。ベッドの下で寝ようとしていた。

「……うん」

 そうだね、気持ちの整理がつかないよね。君が言えなかったこと……抱えてきたこと。私だって迷いなく言えたかどうか……。

「おやすみ、リッカ」
「うん、シャーリー……」

 私はリッカに教えてもらったこと、伝えない、と……。
 ベッドに倒れ込んだ私は、泥のように眠っていく――。



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