春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第五章

共に生きられない日々②



 部屋の扉から出たタイミングで、エドワード君とはち合わせた。リッカも連れだっていた。

「すまなかった!」
「!?」

 エドワード君は開口一番、謝ってきた。しかも頭も思いっきり下げていて……?

「余がついていながら、あの者の接近を許してしまったのだ……! ああ、余はなんて未熟者よ……!」
「あ、いや……ねえ、エドワード君? 全然気にしないで、ね?」

 私は彼に近づいて、そっと肩に触れた。

「いや、そうでしょう? あの距離をいきなり詰められるとか、そんな……ね? それに」

 顔を上げたエドワード君と目が合った。

「まあ……そなたもリッカ殿も無事だった。だがな、あの者は何故……」

 彼はとても困惑していた。それもそうだった。ここまで追ってきた相手が、自らなんて。

「……ただならぬ者であった――して、シャーロット殿。その、だな」

 相手に畏怖を抱いていたエドワード君、彼は私に何か言いたいことがあるようだった。

「そなたに断っておこうと思ってな。余は――彼を海に還そうと思っておる」
「エドワード君、それって……」
「ああ、弔いだ。もちろん、憎き相手には変わらぬ。そなたも余とてそうだ。よくも思わないであろう。だが、余は教えでもあってな……すまぬ」

 そう……そっか……。エドワード君、とても私に申し訳なさそうにしている。
 これまで私を殺してきた相手を、弔うこと。エドワード君の心情的にも複雑だろうね……。

「……エドワード君。私も立ち会っていい?」
「……よいのか?」
「うん。私がどうこうできるわけではない。でも、見届けさせてほしいの」

 これまでの恨みはある。だけれど……『今回の彼』に殺されたわけじゃない。彼と過ごした日々もあった。借りもあったりもしたから、それだけで――。

「……」

 言い訳じみているな、私。
 私の心が……ただ、そうしたかっただけなのに。認めたくなんてないけれど、このままお別れなのが嫌だなって。
 あの人が……エミルさんが。あまりにも優しい顔をしてくれたから。

 知らなければ良かったのに。

「……うむ」

 エドワード君は先頭きって歩いていく。私とリッカもついていく。 




 甲板に出ると、港町が見えた。晴天の空に、穏やかな海。

「――母なる海で、安らぐがよい」

 エドワード君は代用の杖で儀式を行っていた。
 大きな水の泡が――金糸雀隊の彼を包み込む。海へ送られていく。海に還っていく。

「……女神様は優しいの。だから僕も……春の女神様が守ってくださるように……」

 リッカも目を閉じて祈りを捧げた。白く輝くリッカは、彼の黄泉路の無事を祈りながら。

「……」

 私は、亡くなった人への祈りを込めて。今はそれが限度だった――。




「……」

 エドワード君は物資の調達に寄っただけだったみたい。彼が船に戻ってくるまでの間、船で待たせてもらうことにした。

 私はベッドに腰かけて考え込んでいた。隣で寝ているリッカを撫でながら。

 鳥籠の相手が命を絶つだなんて……これまにでなかったことだった。鳥籠は元のものになっているのか、どうなのか。それは夢で確認するしかない。

 まだ日々が続いているのは確かなんだ。助かった命、追撃だってしのいでみせる。これからどうなるかはわからない。でも、無駄になんてしない。

 そうだよ、誰かが女神像を壊したの? 考えれば考えるほど、おかしいと思えてならない。私はこれまでのことを思い出し、頭を巡らせた。
 私はあの人の鳥籠にいた。アルトたちの時、どうだった? 事件なんて起こったりした? 少なくとも、彼らの『理想の日々』ではあったんだ。

 今回の事件は突発的と思えてきた――彼の理想の日々をぶち壊したかのような。

「……」

 すごく、すごく苦しいよ。

 また、繰り返しの日々を迎えてしまったら。また、私が罪をでっち上げられて。命を狙われることになる。

 私がやられるか。彼がやられるか。私たちの関係はこうでしか、成り立たないのかな?

 私は死にたくなんてない。ならば。
 私は――彼の死を見せつけられるんだ。

 その度。
 私の胸はこんなにも締めつけられるんだ……。




「――失礼するぞ、シャーロット殿。今、よいか?」

 部屋を叩く音。エドワード君、帰ってきたんだ。荷物の積み入れとかあるよね。うん、私も行かないと。

「おかえり、エドワード君」

 私は部屋の扉を開いた。リッカも起きたみたいで、こっちに来ていた。尻尾を振って迎えていた。ああ、この尻尾ぶんぶん、すごく久しぶりに思える……。

「うむ、戻ったぞ……で、さっそくだがな。そなた、出られる状態か?」

 身軽な姿の彼がいた。荷物、下に置いたままなのかな?

「う、うん? 荷物とか運ぶよ?」
「いや、荷物のことではない。この町のギルドに寄るぞ」
「ギルド?」

 いきなり出てきたワード――ギルド。エドワード君はうむ、と頷く。

「不思議な連携でもあるのだな――アルト殿から連絡が入ったと」
「!」

 連絡があった……生存している! 私たちは急いでこの町のギルドに向かうことにした。


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