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第五章
共に生きられない日々③
しおりを挟む南国の港町であるここは、とても賑わっていた。白と青を基調とした建物群は洗練されてもいた。町の中心にあるギルド、それが見えてきた。
ギルドに入ると、エドワード君は声をかけられていた。こう、やたらと陽気そうな人に。
「ちーっす! 君らがそうでしょ? 中央ギルドの子から、連絡がきててさー? 伝言伝えてほしいってさ? なんかー、喋り方が特徴的な子とー?」
「ふむ? それでよく余とわかったものだな」
エドワード君は本気で言っていた。私は様になっているとは思っている。合っているとも、うん。
「で、白くて可愛いモフモフワンコと」
「わんっ」
リッカが元気よく返事した。男性は『良い返事だねっ!』とご機嫌だった。悪い人ではないんだ、うん。
「あとは……えーっと、やたらと内容が長くて。なんか、見た目はクールビューティで、世界で一番可愛いとか綺麗とか? で、性格がしっかりしているけれど、抜けているところもあって? 頑張り屋で、まっすぐで。言動も何もかも愛しくて。ワンコを愛でるように、こっちにもとか――」
「……もうよい、よいのだ! 全員おるぞ、揃っておる!」
まだ続きそうだったので、エドワード君の方で強制的に中断させていた。内容全部伝えようとしてくださったので、すごく律儀な人という感想を抱いた。
「……ワンコを愛でるのはそうだから、私か」
他は、うん……買い被りとバイアスかかっているんだろうな、としか。
私たちはギルド内の一室に通された。通信機のようなものが、壁にかけられていた。受話器のようなものをとった男性は、ボタンで操作すると私に手渡してきた。
「ありがとうございました」
「うむ、ご助力感謝いたす」
見ず知らずの相手でしたでしょうに、本当に有り難かった。
「いえいえー、大型ギルドに恩を売りたくてねー?」
気にすんな、と盛大に笑って部屋を出ていった。それは本音でもあって、気遣いでもあると思うことにした。
椅子をお借りして、受話器に耳をあてた。代表して私が聞く流れになっていた。私のお膝の上のリッカと、覗き込むようなエドワード君。彼らはぎりぎり聞こえるかどうか、だった。あとで内容を伝えることにしよう。
「ええと、このボタンを押したら開始で」
アルトと直接話せるわけではなく、彼からの伝言が聞けるとのことだった。うん、近況を知ることができるのなら……無事だとわかったのなら。
『――シャーロット、聞こえる? 無事ってことだよね、そういうことだよね? ああー……良かった。リッカやエドワードも大丈夫だよね? こっちは揃って問題ないよ。俺達、しぶといから』
アルトの声から、心配する心が伝わってくる。私は『うん』と答えた。
あの状況で全員無事だったこと……良かった、本当に良かった……。
『あのさ、シャーロット。君は無事に戻って来られるよ――犯人が名乗り出たから』
「犯人が……?」
私はつい口に出してしまった。リッカたちが何事かと私の方を見た。
「あの、女神像を壊した犯人がね、名乗り出て……それで」
『……まあ、そいつはさ』
――自白したことにより、処されたと。
「……」
それは……残った金糸雀隊の手によって。そうでしょうね。
その人が女神像を壊そうとしたから、このようなことになってしまった。その人が招いた事態……そして、顛末。
だからといって、私は行為に及んだ人物を憎むかというと……それはそう、でもこうとも思っていた。
その人だって一緒だと――問答無用で命を奪われたわけだから。
「そうだ……どんな人なんだろ」
今回の事件の犯人、私は知っておきたかった。あの放送で名前も名乗ったはず。
『まあ……おかしな話なんだよ。おかしなことばかりというか』
「アルト……?」
『まず……うん、まあ。女神像の破壊なんだけど。学園のも広場のも、破壊されていなかった』
「!?」
私はとても驚いた。説明しているもアルト戸惑っているようだった。彼自身、何を言っているんだろう感がひしひしと伝わってくる。
でも、女神像が破壊されたから。だからじゃないの? 本当にどういうこと……。
さらに、アルトが告げるのは――さらに困惑する事実だった。
『放送でも犯人のことは告げられた――名も無き男だってさ』
名前がない……? 放送からわかったのは、その事実のみ。手がかりがそれだけだとしたら、途方もない話だよ……。
『……っと、そろそろ時間切れかも』
受話器からピーピー音がした。アルトは時間めいっぱい使っていたようだった。
『俺、ララシアで待ってるからね。安全第一で帰っておいで――』
そこで会話が途切れた。
私はダイヤノクトに帰れるんだ。もう、追手に怯えることもない。事件だってもう、起こらないはず――。
船に揺られながら、今夜も鳥籠の夢を見た。
「ああ……」
私を囲うのは――木の鳥籠。その本人がもういないのに……まだ。
私はまだ彼に囚われたままなんだ――。
ララシアを経由して、ダイヤノクトに戻ってきた。私は無事な彼らを見て、心から安堵した。
私の家で――『彼』の正体を告げることにした。
リッカの気持ち、すごくわかるよ。本当に話しづらいことだった。それでも、これは共有しないといけないことだった。
私の話を受けたみんなは、色々と思うところがあるのだと思う。みんな、それぞれの思いが。それでも変わらないのは。
――命を奪ってきた存在。敵とみなす認識。
……そうだよね、それは確かにそうなんだ。
あの集落のこと、話した方がいいのかな。今となってわかった。あそこは金糸雀隊の本拠地のようなものだった。約束なんて反故したって。
「……」
私は開こうとした口を閉じた。そうだよ、今は言わないだけ。約束を守るとか、義理とかそんなんじゃない。今はただ……それだけ。
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