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第五章
あなたに辿り着いてみせる
あたたかな光が差す場所。巨大な一輪の花が咲き誇る、禁足地。ああ、ついに辿り着いたんだ……!
もう随分と遠い過去のように思えた。ここで、彼と語らったことは。
「……」
色々と、色々とね? 思い出すんだ……。
彼と話したこと。笑ったこと。寄り添ってもらったことも。
『――純粋なる思いで、強い意志を持って』
彼はそう言っていた。今の私はまっさらな気持ちになっていたんだ。それに、強い意志をもって。
「へっへっへっへっ」
もちろん、リッカもそばにいてくれたから。ねっ? 私たちは顔を見合わせて笑う。
「……ねえ、もう死なないで」
私のシンプルな気持ちだった。あなたに消えてほしくないの。
あなたは迷っていた。そのことを私は知ってしまったから。
だからもう――あなたを憎むだけじゃなくなってしまったの。
「エミルさん、お願い……」
久々に彼の名を口にした。
彼は金糸雀隊の長でもあるけれど。
エミル・ジュッツェ……エミルさんでもあるんだ。
お願い、どうか。今度こそ、どうか――。
それから二月を迎え、終わらない冬という結末を迎えてしまっても。
もう私は諦めない。
エミルさん、あなたに辿り着いてみせる。
「!」
私は目を覚ました。それはもう、思いっきり。勢いよく飛び起きる。
私は部屋のソファで座って寝ていたんだ。突然起きた私を、アルトもエドワード君も驚いた目を向けていた。私は二人をよそに窓の外を見た。
外は真っ暗だ。この暗さは、真夜中のそれで――。
「これって……」
これまでなら朝に起きていたのに。でも今は違う、違うんだ……!
「ああ、今ならまだ……!」
「わんっ!」
私の言葉にリッカも返事した。うん、リッカも準備万端だね。行こう!
「って、なになに!? どこ行くっていうの!?」
「そなた達のみか!? 余らも参るぞ!」
さっきから驚かせてばかりの二人もついてきた。うん、一緒に。
都まで馬を走らせ、駅に飛び込むように入っていく。始発まで待つ覚悟もしていた私たちは。
「夜行便……」
駅のホームに鉄道が入ってくるのを目にした。
三連休中だったからか、それとも元々あった便か。それとも――。
ううん、いい。私たちは急いで切符を手配した――。
庭園までの全力疾走していた。ひたすら走っていく。
夜の空が薄みがかっていく。夜明けはいずれ訪れる。こうしている間にも……!
「はあはあ……」
こうして走っている間に、事態が進んでしまっていたら。もし、間に合わなかったら。そうやって迷う心も生じてしまうけれど。
「待ってて、エミルさん……!」
私はひたすら祈りながら、走り続けていた。
走って、走って、走り続けて。次第に私は気づく。
霧が濃くなっていく。あの濃霧が再び発生していたんだ。
「あれ……」
足元にはリッカがいる。だけれど、アルトとエドワード君の姿はなかった。庭園に入ってからしばらくは一緒に走っていたのに。
「……っ」
二人は心配してついてきてくれたのに。それなのに見失ってしまうなんて。
「あのね、シャーリー。あの二人なら大丈夫」
「リッカ?」
リッカは断言していた。それに、その。
「僕が見つけてみせる。だからね、シャーリー。今は進もう」
「……」
頼もしい、と思った。しっかりとした態度、それこそ――強い思いをもっているかのような。
「君がエミル・ジュッチェに会いたいと願ったように。僕も願ったの」
――僕も強くなりたい、と。
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