春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第五章

お互い出来ることを


 私たちは一度、別行動をとることにした。エミルさんは、金糸雀隊の説得。私はリッカと二人の捜索へ。

「ここでまた落ち合おう。今後のことも話したいんだ」
「わかった。それでは、また」

 結構待たせてしまったから。さあ、急いで捜し当てよう。




「あれ……?」

 お鼻でくんくんする捜索犬について行くと、一般解放の庭園に辿り着いた。そこで待っていたのは、二人だった。そっか、自力で帰れたんだ。

「あー……無事だ……いや、ほんとにさ……生きた心地がしなくてさ……」

 私たちの無事の姿を見て、へなへなと脱力するアルト。

「気が気でなかったのだぞ! そなた達を見失ってしまった後、どれだけ心配したことが!」

 半泣きしつつ、怒りもしつつなエドワード君。

「良かった、二人とも無事で。こっちもね、なんとかなったから」

 さあ、二人も無事だった。私は彼らと落ち合う場所に向かうことに。



「エミルさんと合流できるようになったから。ここから逆転して……って」

 どうしたことか、二人は何とも言えない顔をしていた。

「悔しいけどさ、多分俺達は呼ばれないと思う」
「うむ。あの霧が答えぞ。招かれているのはそなたと、リッカ殿くらいか」

 私たちくらい……。

「うん。それならさ、こっちはこっちで出来ることをするからさ。はい、シャーロット」
「あれ、これって」

 通信機だった。これはまた懐かしいものを。しかもアルトも持っているようだった。

「これ、兄貴にもたされたやつ。故障した時用にスペアもって。いやぁ、もらっといて良かったわー。連絡いつもうざかったけど、捨てないで良かったわー」

 そっか、通信出来るようになるんだ。それは助かる。それはそれとして、先生が気の毒ともいうか……。

「うん、まあ、うん。ありがとうね?」
「やったぁ、お礼言われた! 俺が兄貴にありがとう言いたい!」
「あ、うん……」

 うん、どうしたものか。ガッツポーズするアルトに、エドワード君も肩を竦めていた。うん……。


 互いに惜しみつつ別れた。そうだね、お互い出来ることを。




 私たちは、さっきの場所に戻ってきた。エミルさんの姿は無かった。


 心配しつつも、彼が来るのを待つ。しばらくして、彼がやってきた。くたびれている様子でもあった。

「お待たせ…まあ、なんとか説得できたんだけど」

 彼の浮かない表情から察する。ああ、と私は思った。
 金糸雀隊の彼らは納得したわけではない――大人しくしている時間はわずか、と。

「それで、僕たちがするべきことは――」

 そう、限られた時間で。今という好機の中で、私たちがすべきこと。それは。

「――すべての元凶を壊そう」

 エミルさんが告げたこと、それが私たちがすべきことだと。

「元凶、ですか?」
「……走りながら、説明するね」

 エミルさんが駆け出していった。リッカが負けじとついていく。ええ、私も。




 あの花園を出て、私たちは再び森の中へ。濃霧が発生する中、駆けるエミルさんは迷いがない。

「――彼らが……僕が。こうも怒ったのもね?」

 まずかったから、とエミルさんは言う。

「何者かによって、壊されかけたんだ――僕らの女神像が」
「!?」

 ええと、待って? そう、女神像が――『壊されかけた』。事に及ぼうとしていた犯人は、破壊しきっていなかったんだ。自首したのも、あとになってだから。今も犯人は逃げている、それで合っているかな。

 どのみち、春の女神を崇拝している彼らが激怒と。それはわかる。わかるけれど……。

「それはね、学園や都にあるものではない――『僕達の』の女神像。獣人族の祖先が造り上げたものだ」

 それはとても、とても大切なものなのでしょう。

「その女神像がいつしか、意思を宿していた。そして、僕達に命ずるようになっていた。こちらもどうしたことか――力に満ち溢れていたんだ」
「それって……」

 あの忌々しい放送、それがもしかしたら。私がそう思っていると、エミルさんも頷いていた。

「元々、国の暗部のこと、引き受けてもいたから。僕達は当然、受け入れていた。何も疑問に思うこともなく……」

 エミルさんは重苦しそうに言う。国の暗部……ううん、今は触れることではない。

「それを当然のように、正義と信じ続けて……貴女のことを……」
「エミルさん……」

 エミルさんはきっと、後悔していると。私に対する罪悪感、それが如実に現れていたから。

「ねえ、ジェムさん……本当に僕はなんてことを」

 ……うん、それも今じゃない。

「エミルさん、今はいいから。ただ、目指しましょう」
「ジェムさん……うん」

 そうだよ、それこそ。いつの間にか追い越していた――光輝くリッカのように。あ、エミルさんに次は曲がってほしいと教えられていた。即対応もできる子。賢い。

「不思議な子だね。あの子は、きっと――」

 エミルさんは走る子犬を眺めていた。とても眩しそうに――。 



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