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第五章
光り輝くワンコ
「あとね、みんな? 今まで通りのでいいよ? 僕は僕。偉いのは春の女神様なんだっ」
リッカは、今までの話し方に戻してほしそうだった。集団でわーって畏まれるの、リッカも慣れないようだよね。
それでも彼らはリッカを敬いたいようだった。『ですが……』と連呼していた。
「しかし……いえ」
エミルさんはこれこそ命だと思ったようだ。
「わかったよ。でも、リッカ様は許してほしい。いいかな?」
「うん、わかったっ」
眩しいリッカは満足そうにしていた。彼は私の腕の中、こう言った。
「ねえ、シャーリー。僕、お腹空いているの」
涎垂らしながら。あ、そっか。朝食どころか、お昼抜きだもんね。お腹もぐーぐー鳴らしちゃって。
「うん、わかった。君のごはん携帯しているから、落ち着いたところで食べようね?」
「うんっ」
いつもの君だ……いつもの。私は少しホッとした。
「ごはん。そっか、それもそうだ。皆、リッカ様をもてなそう!」
エミルさんの一声で、一気に賛同の声が上がった。
「わあ!」
ごきげんワンコは目を輝かせていた。
「僕、バーベキューがいい! あのね、お肉もお芋も美味しかったの!」
リッカ……ララシアの頃のことだね。ああ、この集落のも味わえるんだね……。
「かしこまりました。では、リッカ様。そして、シャーリー様。今後ともよしなに――」
「あ、あの……! 私も普通に接してください。様とか、本当にいいですから……!」
私は発言した女性に対し、慌てて訂正した。というか、この人たち全般に向けてでもあった。
私こそ一般人だから……! さすがにリッカとは違い、私の要求はすんなりと通った。良かった……。
あと、大丈夫だとは思ったけれど念の為――リッカが春の女神の眷属であること。それを口外はしないでくださいと。そこはリッカの身を案じる為と固く約束してくれた。
「……先生」
結構な人数にばれてしまいました。
私は考えた。
今では信頼しているあの三人にも――リッカのこと、話していいのではと。
先生に相談してからとも思ったけれど……ううん、なんか反対されそうな気がしていて。
いいよね、リッカ?
それからの彼らは大はりきりだった。それぞれ準備にとりかかっていく。金糸雀隊の人たち、戦ってなければ普通に生活しているんだ。そうだよね……。
「……その、あなたとお話したくて」
「……っす」
残っていたのは、レイチェルさんとティムさんだった。
……思い出す。エミルさんに次いで因縁があった彼ら。彼らに記憶なんて――。
「私は思うのです。今回のこと初めてとは思えなくて」
「……そうです。しかも俺、リッカ様に……ああ……!」
積み重ねてきた日々だから、どこかの片隅に残っていたのかも。
「……」
うん、そうだよ。どれだけ痛めつけられてきたことか。どれだけ、あなたたちにって。私はそう思い続けるんだろうね。私の記憶に残り続けるから。
「へっへっへっへっ」
リッカが笑顔だった。輝かしい彼を見ていると、私も心が落ち着いてきた。凪ぐように。
「リッカが晴らしてくれたから、今はそれでいいです」
納得のいかない感情、これからも抱えていくんだと思う。それでもって、私はね。
エミルさんもそうだし、あなたたちもそうなんだ。
――共に生きられるようになったのなら。それは確かなことだった。
「ちょっと休ませてください。そうさせてもらったら、私も手伝いたくて」
「よいのですか……いえ、そうですね。お願いしましょうか」
「はい、よろしくっす」
レイチェルさんも、ティムさんも表情が和らいだ。まだぎこちなさは残るけれど、それもいつかは。
「よし、僕も準備手伝うよ! 族長である僕が率先して、ね?」
「それでは、薪割りをお願いします」
「エミル兄は薪割り達人っすから!」
乗り気だったエミルさんに、それとなく逸らす彼ら。
「いつも薪割りばっか……僕だってやれば出来るのに」
「薪割りは立派な仕事です。あなたが適任なのです」
「エミル兄の腕前には敵わないっす!」
不平不満をもらすエミルさんに、なだめる彼ら。いつものやりとりのようだった。
朝昼兼用のバーベキュー、夜は会食料理をごちそうになった。獣人族に伝わる、格式ある料理だとか。いつかアルトたちを招きたいとも話していた。
遠慮なく食べていたリッカのお腹、それはもうパンパンだった。
「……」
食べさせ過ぎたかも。私、しっかりしないと……!
今夜は泊まらせていただくことにした。以前、お世話になった家で。彼らも最初は本邸の滞在を進めていたけれど、最終的には引き下がった。エミルさんの後押しもあったから。
家に着くと、送ってくれたエミルさんとも別れた。彼も隣に泊まるようだった。うん、前のことを思い出すな。
激動の時間も過ごし、疲労もピークに迎えていた私たち。本当に疲れた……。
何より、リッカにも無理をさせたよね。でも、それはそれだったようで。リッカは散歩に行きたい、と乗り気だった。お腹も落ち着いたようだし、そうだね。
お散歩行こうね、リッカ――。
「……リッカ、聞いてもいい?」
「うん、どうしたの?」
「うん……ずっと光ったまま?」
リッカは発光し続けている。夜の散歩にはいいけれど、寝る時までとなると……私もだけど、この子も寝られるのかなって……?
「あ」
リッカは光を消した。あっさりとだった。でもって、また光ったりもしていた。リッカの意思で出したりひっこめたり出来るようだった。リッカはすごいねぇ。
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