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第五章
貴女は知らない① ※某人物視点
これは貴女が知らないこと。選ばなかった未来。
僕は金糸雀隊を束ねる者。女神様の命じるままに。
そして、貴女は……大罪を犯してきた人。
僕には記憶なんてない。でも、わかっていたんだ。
何度も、何度も貴女は主張してきた――自分は無実だと。
抗っていた貴女を。
何度も、何度も殺めてきたのは――僕だった。
僕は長であるから。使命だから。役目だから。そうすることが正しいことだって、思ってきた。思い続けてきた。
そうして、何度も何度も貴女のことを――。
そんなの、耐えられない。
僕には記憶なんてない。でも、僕のことだから。ずっとそう思っていたんだ。
どうして。
殺さなくちゃいけないんだろうって。
そういった気持ちが、思いが。いつだって芽生えていた。
その度にこれは使命だから、役目だからって、言い聞かせていた。
本当にね、耐えられなくなっていたんだ。
でもね、僕の中の『女神様』が命じてくる――殺せって。
もう、無理だったんだ。限界が来ていた。
僕が消えれば、貴女は助かる。
貴女が消えれば、僕は取り残される。
僕達はそうだった。そう定められていたんだ。
なら、僕の望みはこうだ。貴女に生きていてほしい。
それなら、僕が消えてもよかった。
僕達は共に生きられない、そういう定めだったと――。
今もだ。僕の意識は夜中に戻される。金糸雀隊の任務の途中、そうだ、女神様が命じられたのだ……彼女を殺せと。
僕は他の隊員に待機命令を出していた。不満が噴出しようとも、何が何でも通した。僕達は未だに集落に留まっている。
……悪いけど、君達は殺せないよ。返り討ちにあっている、そんな気がしてならないんだ。
僕さえ……僕さえ消えればきっと。彼女は助かるんだ……。
僕さえ……。
「……」
夜が明けようとしていた。僕はなんて往生際が悪いのだろう。
「――ああ、わかっている。だが、まだだ。待機せよ」
待機命令を下された彼らが焦れているようだった。わかってる、わかってるよ。君達が長であるようにと、求めているのも。役目を全うするのもそうだ……!
ただ族長の息子として生まれたばかりに、僕は背負うことになった。
僕が金糸雀隊の長であるのは――覆らない事実なんだ。
「わかっているから……」
もう、刻限だ。猛ってしまった彼らが、襲撃に向かうのだろう。彼女の仲間達が守ってくれるのを……祈るしかない。僕はそうするしか出来ない。
「それはもう定められていること……なのにね」
僕の懐にしまっているのは、彼女がくれたもの。素朴なデザインのミトン。貴女がこっそり作ってくれたこと、本当にたまらなかった。どれだけ愛しいと思えてたか――。
彼女と親密に過ごした日々もあったはずなんだ。そのまま穏やかに、彼女と共にいられるはずだったのに。
「あ……」
そうだよ、その日々は確かにあったんだ。
大罪人と、それを裁く者ではない――そんな関係も築き上げられたはずなんだ。
『うん、そうだよ。ね、そうしよう? ――連れて行きたいところがあるんだ』
僕は彼女を住まう場所に連れて行こうとしていた。それは――。
「……」
ねえ。一緒にいられる未来はあるよ。僕達にあったんだ。
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