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続いていく日々ED⑤
しおりを挟む「……え、困ります。本当ならずっと見ていたいくらいなのに……可愛いから」
「へ」
なんて間抜けなる声。令嬢の出す声ではなくてよ。イヴ、顔を赤らめて俯いていますけれど。
「可愛くて……でもって、本当の姿でもあるわけでしょ。ああ、いつもの笑い方とかも。ユイそのものの笑顔なんだって、ああ、可愛いなぁって」
えへへ、と笑うイヴ。花も恥じらう姿、可愛いと形容できるのはあなたでは……。
「そうやって、僕だけが独占していたのに……まさか皆様にもみられるとはね。本当の彼女を知らないんだって思えてたのに……この人達が脅してくるから」
と、毒づくイヴ。急転直下の急変ぶりでしてよ……イヴ!!
「……ん?」
お待ちになって。ユイの姿を存じているのは、イヴだけなのでは? 脅しとは?
「ええ、本当に申し訳ありません……この人達が」
と、忌々しそうに告げる彼。
「ヒューゴ様からは平等にと。オスカー様からも気になる見たいと頼み込まれ。シルヴァン様は自分だけ独占かと煽りながらも必死で! 殿下にいたっては、殿下め……くう!」
何を言われたのでしょう……とにかく、決定打になったのでしょう。イヴが挑発に乗らざるを得ないような……殿下!
「……あ、一応名誉の為に。サミュエル様は必要ないからと、ご覧になってません。ご配慮されたのでしょう」
まあ、サミュエル様。あなたに救われましてよ。ええ、配慮、そうですわね?
それに、いらしていたとは。彼らもそう、あなたも友愛という絆を紡いだからでしょうか? 喜ばしきこと。
「あとは、辺境伯のご令息の……さっさと帰られましたが、何だったのでしょう?」
「!」
サミュエル様のことも驚きましたが、なんとヤニク様までおいでに? 今現在、彼とは親交のない状態。それでも何かの働きによって、だったのかしら。心配してくださったのですね。
それにしても、すぐに帰るというのが彼らしいというか。ふふ、今頃はアリア様とご一緒かしら。
「あー……うん、ごめんね? それでさ?」
オスカー殿、この気遣う様子。何らかのフォローを? あなたにはいつも気遣っていただいてますわね。
「過去の俺も、今の俺も――『あなた』だから好きになったんだ。きっとそう。そんな子の本当の姿、好きにならないわけないよ」
フォローって……オスカー殿?
「イヴ君の言う通り、可愛いよ。今のお姿ももちろん好きだけどさ、叶うなら本当のあなたに触れたいし」
――触れてほしいと。ベッドの傍らにいる彼が、まっすぐなる眼差しを向けてくる。
「あなたが好きだよ」
それから、はあ、と彼は溜息をついていた。
「……一生言えなかったら、伝えられなかったらって思っちゃって。はは、言っちゃった。好きだよ――アリアンヌ様なユイ?」
それからの満面の笑顔。彼の表情からして、本気で――。
「な、なんでこんな展開に……!」
真っ青な顔のイヴに。
「どんだけ、何回好きって言ってんだよ……人目憚らずに」
戦慄したご様子のシルヴァン殿。
「えー?」
一人にこやかなるオスカー殿。あ、あなた、言うだけ言って……!! こちらはあなた以上に顔が赤くなっているというのに……。
「……まあ、人って突然いなくなるからな」
深刻そうな表情のシルヴァン殿、彼は遠い目をしていました。ええ、あなた、そうでしたわね……私は気を引き締めました。
「はあ、素直な皆様方が羨ましい限りです。私にはとてもとても……」
急に側近仕様になった彼、こうも告げたのです。
「……ほんとに羨ましいわ。こっちは色々考えてしまうのにな」
それは言葉通りであって。イヴとオスカー殿に羨望の眼差しを向けるのは彼。
「つうか、厄介な存在忘れてない? ――我らが王太子殿下、彼女の婚約者様」
アドバイスだと、シルヴァン殿は二人に話しかけていたのです。それを受けた彼らは真顔に。そうだった、とも。
ええ、アリアンヌ様は自由にと仰ってくれはしても、揺るぎない事実でもあったから。
「だとしても、僕は諦めたくない。やっと、舞台に上がれたんだから」
「俺だってそうだよ。彼女のことなら負けてられない」
それでも、なのでしょうか。私はその、どういった顔をすれば……。
「……おー、闘志燃やしとるー」
妙に感心しているシルヴァン殿。そんな彼、何かを思っているかのようで。
「……まー、そうだな。俺もな、お二人の婚約がすんなりいくかというと――」
――ひと騒動ある気がすると。
「いや、願望とかじゃないからな?」
と、補足までしてますわね。
騒動。まあ、まだ明かされてないこともありますわね。
嵐が訪れるのかしら――。
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