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続いていく日々ED⑥
しおりを挟む雨季も終わりを告げ、暦は七月に。
七月一日の夜も終わり――迎えたは二日。ああ……ようやく。
もう繰り返しの日々はないと――日々は続いていくのですね。
本格的な夏も始まりますわ。
日差しの強さ、夏の日照り。ああ、夏ですわね、夏!!
夏服の生徒たち、私は長袖の上にカーディガン。冷房が効いた学園内を闊歩していたのです。
ああ、名門アリエス学園よ!! 本日も学生生活を見守りくださいませ!!
クラスでは夏休みの予定で盛り上がってますわね。私もお誘いを受けてますわ、ふふ、楽しみなこと。
「――アリアンヌ? 学友との付き合いは大事だ、だがなっ! 俺との思い出作りの方がもっと大事じゃないのか!?」
殿下、単独で教室に参られました。というか、普通に私の席までやって来られてもいて。
「アリアンヌぅ、俺、来年の春で卒業なんだよぅ。青春したいよぅ、青春! きゃっきゃうふふ、したいよぅ!」
私の椅子の背もたれに手をついて、ねだってもきますわね。ああ、視線が集まってきますわ。
「なーにーせっ、君は俺の婚約者だからなっ! お、れ、の!」
またしても執拗なるアピール。彼は特にヒューゴ殿とオスカー殿に向けているようです。うんざりを隠さないヒューゴ殿、読んでいた本を閉じられました。
「散々青春とやらをされたのでは? ――殿下?」
辟易とした様子でそう口にしていて。
「え……ヒューゴ殿、なに? 急にどうしたの?」
「失礼ながら、殿下。王族といえど、いえ、だからこそ。誠意はもっていただきたいのです――せめて過去を清算なさっては?」
「え……清算って? ね、アリアンヌ? なんかヒューゴ殿がね、おかしなこと言ってるよ?」
ええと、殿下? 何故そんなにも落ち着かない様子なのです? ソワソワと!
「いや、本当に!! 俺、君一筋だし!」
と、瞳を潤ませながら私を見つめる彼。その、顔が近い、近いですわよ……! どんどん近くなりますわねっ。
「……殿下。そのまま、そのままで言えます? 不純なる交際はしていないって。股もかけていないって」
……オスカー殿? いつの間に近くまできてましたの? ヒューゴ殿は『やりますね』と感心してますわ?
「む、言えるぞ! 俺は生涯交際したこともないし、そんな不誠実なることはしてない!」
殿下は私にそう誓ってますわ。ええ、確かに偽りではないと思わせるような。
「ふーん……それじゃ、食堂にある個室? あちら、殿下御用達でしょう? 女子、連れ込んだりとか」
まだ試すオスカー殿、その、尋問するかのようですわね?
「……今、今はしていない。いや、最近もそう。最近だってそう!」
「殿下……」
「アリアンヌぅ……そんな、困ったちゃんを見るような目、やめてくれ!」
「失礼しましたわ、殿下。ですが――」
「ひっ!」
私、察しましてよ。あなた、確かにあなたのルート以降は控えているようです。ですが、今はとだけ。最近とだけ、でしょう? それ以前は……ええ、存じてましてよ?
「国際交流と称して、各国を飛び回って。現地の夫人と楽しまれたり」
「それは……今も、最近までもしていない! というか、楽しむってやめて! 談笑していただけだ!」
「社交の場でのダンスも、過度に密着したみたり。相手が満更じゃないからまだしも、だけど」
「そ、それは自然な成り行きだ!」
ああ、オスカー殿は問い詰める問い詰める。殿下は詰められていく詰められていく。殿下、たじたじでした。
「……殿下。せめて彼女に対しては誠実であってほしいです。そんなんだから余計に――」
――こっちは燃え上がるばかりだと。闘志のお話……?
「くっ……あっ! 時間だ、戻らねば」
ここで鳴ったは予鈴、殿下はこれみよがしに教室を出て行きます。
「って、殿下!?」
何故、私の手を引っ張っていますの?
「一緒にサボるぞアリアンヌ!」
「殿下、それは――」
「誤解を解くんだ! 本当に違うんだからな!」
「でんっ――」
呆気にとられた私、学友たちもでしょう。ええまあ、殿下の目ウルウルしてますものね……私、その目には弱いものですから……。
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