恋愛短編まとめ

よしゆき

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そんなつもりはなかったのに

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弱った獣を拾ったら、実はその獣は呪いにかけられた王子様で、そうとは知らずに可愛がり、発情期だと思ってエッチしたら呪いが解けて獣は人間の姿になり、王子様にめちゃくちゃ愛される話。
獣姦あります。王子様は変態くさいです。



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 アリスが十歳のとき、母が亡くなった。もともと体が弱く、アリスを生んでから数年後、病気を患い寝たきりになり、そのまま儚くなってしまった。
 そしてその一年後、父が再婚した。
 そして更に一年後、アリスに弟ができた。
 すると後妻は、アリスを家から出してほしいと父に頼んだ。
 元々、アリスは後妻に嫌われていた。
 アリスの母はとても美しく、それは誰もが羨むほどだった。母にそっくりのアリスと毎日顔を合わせるのが嫌だと後妻は言った。同じ家で暮らし、顔を合わせる度に自分と比べて嫌になるのだと。
 アリスに、というよりも、アリスの母に嫉妬していた。
 そして父は屋敷の隣にアリスが暮らすための小さな家を用意した。
 父はアリスを愛していないわけではない。だが後妻の方が父よりも身分が上だった。後妻に、アリスと一緒に暮らすくらいなら息子を連れて実家に帰ると言われては逆らえない。父はアリスよりも後妻を優先した。
 聞き分けのいいアリスは特に文句も言わず、用意された小さな家で、一人きりの生活をはじめた。
 別に不便はない。必要な物はきちんと用意してもらえる。食事も毎食運ばれてくる。
 寂しさは感じたが、耐えられないわけではない。使用人とは顔を合わせるし、週に何度か家庭教師も訪ねてくる。
 二年も過ぎれば、すっかりその生活に慣れていた。





 その日、アリスは一人で家の近くの森を散歩していた。そして木の根本で丸くなる黒い獣を見つけた。
 犬か狼か、よくわからないがそれっぽい生き物だ。痩せ細り、怪我をしていたので家へ連れ帰った。
 その獣にご飯を与え、怪我の手当てをした。
 付きっきりで面倒を見て、一ヶ月後にはすっかり元気になっていた。
 森に連れていき、帰りたいようだったら自然に帰そうとしたが、獣はアリスの傍から離れなかった。足にすり寄り、傍にいたいと言われているようだった。
 だからアリスは再び獣を連れ帰った。
 獣を連れて父のもとへ行き、家で飼う許可をもらう。アリスに対し後ろめたい気持ちを抱えている父は、すんなり許してくれた。
 たまたま通りかかった後妻と弟に抱き抱える獣を見られた。

「なんて不細工な犬かしら……」

 後妻は眉を顰めた。
 それに倣い、弟も嘲笑する。

「変な顔ー」

 アリスはぺこりと頭を下げ、なにも言わず屋敷を出て自分の家に帰った。
 むっつりと頬を膨らませながら、獣を浴室に連れていき丁寧に洗う。

「不細工じゃないもの」

 ぽつりと、後妻に言えなかった言葉を呟く。
 どうしてそんなことを言われなくてはいけないのか。どうして笑われなくてはいけないのか。
 言い返したかったが、そうしてはいけないとアリスはわかっている。
 獣はとても可愛らしい。愛嬌溢れる顔で、見ているだけで心が癒される。
 でもその可愛さは、アリスだけがわかっていればいいのだ。

「こんなに可愛いのにね」

 泡を流しながら声をかければ、獣はくりくりの瞳でアリスを見上げた。

「うん、やっぱり可愛い」

 にっこり笑えば、獣は嬉しそうにアリスの手をペロペロと舐めた。
 浴室から出て、タオルでしっかりと水気を取る。
 絡まった毛を切りながら、ブラッシングして毛並みを整えた。
 獣は一切嫌がらず、寧ろ協力的にアリスに身を任せてくれた。

「お利口ね、偉いわ。いい子、いい子」

 何度も声をかけ、褒めるように頭を撫でる。
 獣は嬉しいのか、尻尾を振っていた。
 トリミングを終えつやつやさらさらふかふかになった獣を見て、アリスは満足げに微笑んだ。

「うん、綺麗になったわ」

 尻尾を振りながらペロペロ手を舐めてくる獣の体を優しく撫でる。

「これから、よろしくね」

 その言葉に答えるように、「ぐあっ」と変な声を上げた。
 一瞬びっくりしたが、どうやらそれがこの獣の鳴き声らしい。
 アリスは久しぶりに声を立てて笑った。





 アリスは獣にノアと名付けた。そして小さな家で一緒に暮らした。犬なのか狼なのかはやはりよくわからないが、あまり気にしていなかった。どちらでも、どちらでなくても、ノアはノアだ。
 ノアはアリスによく懐き、常にアリスの後をついて回った。そんなノアを、アリスはたいそう可愛がった。
 お風呂も一緒に入り、寝るときも同じ布団で眠る。
 いつものようにベッドで眠っていると、ごそごそと体をまさぐられる感覚にアリスは目を覚ました。
 見ると、ノアが仰向けのアリスに乗り上がっている。捲り上げられた寝間着に顔を突っ込み、夢中で胸を舐めていた。
 暫し呆然としていたアリスだが、やめさせることはせず、ノアの頭をそっと撫でた。
 ノアは嬉しそうに目を細め、ペロペロと、ぬめった舌で必死に乳首をねぶっている。
 その様子に、母が恋しいのだろうとアリスは思った。
 ノアが何歳なのかはわからない。なぜ一匹で森の中にいたのかも。
 はぐれたのか、捨てられたのか。
 ノアはまだ小さな子供で、なんらかの理由で親と引き離されたのかもしれない。十分に母に甘えられなかったのかもしれない。
 こんなことでノアが癒されるのならと、アリスは抵抗せずに受け入れた。ノアが満足するまで、されるがままその身を差し出した。
 それから、ノアは毎晩アリスの胸を舐めるようになった。
 舐めるだけでなく、前足で乳房をふにふにと揉んだりもする。
 決して噛みついたりはせず、大きな舌で膨らみの形が変わるほど強く舐め上げられた。
 アリスはその間、ノアの頭を撫でている。

「ごめんね、ミルク出なくて……」

 舐めたところで、ミルクは一滴も出ない。
 夢中で胸を舐めるノアを見ていると、そのことが申し訳なく思えた。
 舐めても舐めても満たされないのではないかと。
 しかし、舐めているときのノアはとても嬉しそうではある。尻尾をぶんぶんと振り、瞳はキラキラと輝いているのだ。
 ノアが喜んでくれるのなら、アリスも嬉しい。
 成長すれば、きっと自然とおっぱい離れするだろう。
 こんな風に甘えてもらえるのは今だけかもしれないと考えれば、ノアが愛おしく、好きなだけ舐めてほしいと思った。





 しかしノアと暮らしはじめて約二年が過ぎ、ノアの体も大きく育ったが、ノアは変わらずアリスの胸を舐め続けていた。
 寧ろ舐める時間はどんどん長くなっていく。舐め方も執拗でねちっこく、胸だけでなく口や首、腹なども涎でべとべとになるまで舐められる。
 ノアにそんなつもりはないのだろうけれど、舐め方がいやらしくて、アリスはぞくぞくして、変な声が出そうになってしまう。我慢できずに声を漏らせば、ノアの舐め方に一層熱が籠り、はしたない声を上げてしまうのだ。恥ずかしくて手で口を塞げば、声を出すまでしつこくアリスの声が出やすい部分を舐められる。
 体は火照り、下半身に熱が蓄積していく。下腹がむずむず疼いて、舐められている間、アリスはいやらしく腰をくねらせることが多くなっていった。
 気持ちよくなってしまう自分が恥ずかしい。
 ノアは純粋な気持ちで舐めているのに。
 快感を得てしまう自分はなんて浅ましく、淫らな人間なのだろう。罪悪感で胸が痛んだ。 
 けれど、これがノアの愛情表現なのだと思うとやめさせることはできなかった。
 夜のそのひとときを除けば、アリスとノアの関係は非常に良好だ。
 ノアはとても賢くて、アリスの言葉を理解しているように感じることもしばしばあった。イタズラして部屋を荒らして汚すこともしないし、寧ろ気遣いのできるお利口な子だ。
 ノアと一緒の生活は豊かで楽しく、家族と会えない寂しさなど微塵も感じなくなっていた。
 ノアが傍にいてくれるのなら、それでいい。
 ノアのいない生活など、もう考えられない。
 このままずっと、一緒にいたい。
 アリスはそう願っていた。





 アリスは読んでいた恋愛小説を閉じてベッドサイドに置いた。
 ぼふんっと頭を枕に沈める。

「そういえば、私の結婚相手ってどうなってるのかしら……」

 ぽつりと呟く。
 それに反応してピクリとノアの耳が動いたが、アリスは気づかなかった。
 アリスももう、結婚してもおかしくない年齢だ。
 恐らく父が選んだ相手と結婚することになるのだろうが、まだなにも話は聞かされていない。
 自分はどんな人と結婚するのだろう。
 できれば、自分を愛してくれる人がいい。
 そしてアリスも、夫となる人を愛したい。
 けれど、そうならない夫婦も多い。

「私の旦那様になる人は、私を好きになってくれるかしら……」

 不安げな瞳で、ぼんやりと天井を見つめる。
 それよりも心配なのはノアのことだ。嫁ぐ際には当然ノアも連れていくつもりだが、駄目だと断られたらどうしよう。
 アリスにとって一番大事なのは、ノアと一緒にいられるかどうかだ。
 愛されなくても、大事にされなくてもいい。だが、ノアと離れるのだけは耐えられない。

「そうだ、お父様に頼んでみよう」

 嫁ぎ先はノアが一緒でも許してくれる相手がいい、と。

「早速明日、お父様に言いに行かなくちゃ」

 アリスは傍らに寝そべるノアの背中を撫で、顔を向けた。
 すると、ノアは歯を剥き出しにして低い唸り声を上げていた。

「ノア……?」

 こんな風に怒りを露にするノアははじめて見た。

「どうしたの、どうして怒ってるの……?」

 わからなくて、アリスはおろおろとノアから手を離した。
 ぐるる……と唸りながら、ノアはいつものようにアリスの体の上に乗り上げてくる。
 ノズルで寝間着を捲り上げ、隙間から頭を突っ込み、べろんと肌を舐め上げた。

「ひゃあ……!?」

 いつもよりも強引なノアの様子に、アリスは戸惑いつつも抵抗はしなかった。

「はっ……ふぅ、んん……っ」

 漏れそうになる声を唇を噛み締めて耐えた。
 ノアの大きくて熱くてぬるぬるの舌が、アリスの肌を舐め回す。
 乳房をねぶられ、中央の突起に鼻を擦り付けられ、ぞくんっと体が震えた。
 大きく口を開いたノアが、胸の膨らみにぱくりと噛みつく。と言っても、やんわりと歯が食い込む程度の力だった。
 痛みはないが歯を立てられたのははじめてで、アリスは驚きに硬直する。 
 やはりいつもと様子がおかしい。

「ノア……?」

 心配になって声をかけるが、ノアは顔を上げずペロペロと乳首を舐めている。
 胸を押し潰すように舐められ、肉球で揉まれ、アリスの体温は上昇していった。
 秘所から蜜が滲み出し、恥ずかしさに身を捩る。

「ふぁっ……のあ……」

 鼻にかかったような甘えた声が漏れた。
 ノアは胸から顔を上げ、今度はアリスの口を舐めはじめた。アリスの口許はあっという間に涎でべとべとになる。

「んむむ……」

 味わうように唇を舐められていると、ふと腹部になにかが当たっていることに気づいた。固いものが押し付けられている。
 そっと手を伸ばして触れてみた。熱くて硬い感触が伝わる。
 途端にノアはぐっと喉を詰まらせたように呻き、後退した。
 ノアの顔が下がり、アリスは手で触れたものに視線を落とす。
 それがノアのペニスだと気づいて、慌てて手を離した。
 アリスは目を丸くしてそれを凝視する。
 それは明らかに勃起していた。
 ひょっとして、ノアは発情期なのかもしれない。だから、様子がおかしかったのではないか。
 ノアは苦しげに息を乱し、ペニスは腫れたように膨らんでいる。
 とても辛そうだ。張り詰めたペニスは放っておいたら破裂してしまうのではないかと思えた。もちろん、そんなことはないとわかってはいるが。
 発情期ならば、きっと発散しなければ体は苦しいのだろう。
 ノアは大切な家族だ。
 だから、苦しんでいるのなら助けたい。
 助けられるのなら、アリスの身を喜んで捧げよう。
 アリスはノアを体から下ろし、ショーツを脱いで四つん這いになった。
 はしたない体勢に強い羞恥を覚える。恥ずかしくて堪らないが、それよりも今は早くノアを楽にしてあげたい。
 アリスは首を後ろに向け、ノアに微笑みかける。

「ノア、ほら、ここに入れて?」

 下肢に手を伸ばし、指で花弁を広げて膣穴を晒す。
 性行為については既に勉強済みだ。どうすればいいのかはわかっている。
 ノアを助けたい、ただその一心で、自分の体を獣に明け渡そうとしていた。

「辛いでしょう? 我慢しなくていいの。私が受け止めてあげる。大好きよ、ノア」

 すると呻き声のようなものを漏らし、ノアが覆い被さってきた。
 濡れた蜜口に、固いものが触れる。
 アリスは体に力が入ってしまわないよう努めた。
 そして、ずぷんっと獣の性器が押し込まれていく。

「んぁあああっ」

 はじめての衝撃に、悲鳴のような声が部屋に響き渡る。
 ここがアリス専用の家の中でよかった。屋敷の中であれば、誰かに聞き咎められていただろう。
 ノアのペニスは成人男性のそれに比べればこじんまりとしているので、痛みはあまりなかった。胎内を圧迫される感じはするものの、それほど苦しむこともなく受け入れることができた。
 ハッ、ハッ、と、苦しそうなノアの息遣いが背後から聞こえてくる。
 アリスも息を上げながら、優しく声をかけた。

「我慢、しないで……、ノアの、好きにして、いいの……っ」

 声は震えてしまったが、ノアはそれに突き動かされるように腰を振りはじめた。
 ペニスが何度も抜き差しされる。

「んあっ、あっ、あっ、あんっ」

 出し入れされるたびに、ペニスの先端が膣内の敏感な箇所を擦り、与えられる快楽にアリスはあられもない嬌声を止められなくなっていた。
 違うのに。アリスはただ、苦しそうなノアを助けたかっただけなのに。
 浅ましく快感を得て、体はそれをもっともっとと求めている。
 恥ずかしいのに、羞恥に煽られるようにどんどん昂って、思考が蕩けていく。

「あぁっ、あんっ、のあっ、のあぁっ、あんっ、あっ、あっ」

 無意識に、何度もノアの名前を呼んだ。
 すると背後のノアが更に興奮していくのがわかった。腰の動きが速くなる。
 強く肉壁を擦られることで快感が増し、蜜を溢れさせながら膣内が肉棒に絡み付く。

「のあっ、あんっ、あっ、のあっ、のあぁっ」

 縋るようにシーツを握り締め、崩れ落ちそうになる膝を必死に支える。
 やがて低い呻き声が響き、同時に胎内で熱が弾けるのを感じた。
 びゅるびゅるっと、大量の体液が注がれる。
 アリスは体を震わせながら、熱いそれを腹の奥で受け止めた。

「ふあぁっ……」

 枕に顔を埋めていたアリスは、背後の変化に気づかなかった。
 ノアの体が、獣の姿から、徐々に人間の姿に変化していくことに。
 膣内に埋め込まれた陰茎も人間のものに変わり、体積が増し、圧迫感が強くなった。
 アリスは驚いた。精を吐き出したというのに、ペニスが更に大きくなったのだから。明らかに長さも太さも増している。 
 そのことに困惑していると、背中から腕を回され、体を抱き締められる。
 獣の前足ではない。人間の腕だ。臀部に触れるのも、さらさらの毛並みではなく人間の肌の感触だ。
 頭が真っ白になる。
 体は硬直し、声も上げられない。

「アリス……」

 耳を蕩かすような美声が、耳元でアリスの名前を囁く。
 しかしその甘い囁きに胸をときめかせる余裕はない。
 ガチガチに固まった首をどうにか動かして、背後に顔を向けた。
 そこにいたのは目も眩むような美貌の青年だった。滑らかに輝く金色の髪に、透き通るように美しい青い瞳。
 王子様のような風貌の青年が、全裸で、自分に抱きついている。
 アリスは蒼白になり、「ひいぃ!」と悲鳴を上げた。
 同時に、ぎゅうぅっと膣内が締まった。
 埋め込まれた男根を締め付けることになり、青年は頬を染めて息を詰める。

「あっ……そんな、締めないで……っ」

 上擦った声音も、歪んだ表情すら艶かしく色気に溢れている。
 こんな場合でなければ胸をドキドキさせていただろう。しかし今はそんな場合ではない。

「だだだだ誰!? なに!? どうして!? ノアは……ノアはどこ……!?」

 ノアの姿はどこにも見当たらない。その事実に一気に恐怖と不安が込み上げ、パニックに陥りかける。
 そんなアリスの背中を、青年が落ち着かせるように優しく撫でた。

「大丈夫、落ち着いて。僕がノアだよ」
「ううううウソよ!」

 ノアは青年に似ても似つかない。せめて髪や瞳の色がノアと同じ黒色であれば少しは信憑性も増したのだが、なに一つとして共通する部分がない。
 しかし、嘘だと思いながらも、ノアでなくてはおかしいとも思うのだ。だってずっと体を繋げたままだ。陰茎を挿入したまま、ノアと青年が入れ換わることなど不可能だろう。
 頭の片隅で冷静に分析しながら、でもやはり信じられない。
 獣のノアの面影などどこにもない青年を見つめ、ぽろぽろと涙が零れた。
 青年は悲しそうに瞳を伏せる。

「泣かないで、アリス。僕はちゃんとここにいるよ。僕がアリスのノアだよ。ずっと君と一緒にいた。そしてこれからもずっと一緒にいるよ」
「だ、だって、どうして……」
「魔女に呪いをかけられていたんだ」
「呪い……?」
「そう。呪いで、醜い獣に姿を変えられた」
「……醜くないもの」

 唇を尖らせて反論すれば、青年は嬉しそうに微笑んだ。
 というか、どうしてペニスを挿入したまま説明するのだろう。抜いてほしい。
 アリスはそう思ったが、口に出す前に、青年が先に口を開く。

「そうだね。獣になった僕の姿を見て誰もが醜いと罵ったのに、アリスだけは可愛いと言ってくれた。可愛がって、大切にしてくれた。すごくすごく嬉しかったよ」

 キラキラと輝く笑顔を浮かべて、アリスの頭を撫でる。

「呪いを解く方法は、愛する人と体を繋げて、精を注ぐことだったんだよ」
「え……!?」

 アリスには全くそんなつもりはなかった。知らなかったのだから当然だ。

「正直、諦めていたんだ。獣の姿の僕を受け入れてくれる人なんて現れないし、僕もあんな状態で人を愛することなんてできない、そう思ってた。このまま野垂れ死ぬんだろうって、そんな風に考えていた僕を、アリスが見つけてくれた」

 木の根本で蹲っていたノアを思い出す。痩せて、体のあちこちを怪我していた。
 体だけでなく、きっと心もたくさん傷ついていたのだろう。
 想像して、胸が痛んだ。

「一緒に過ごすうちに、自然と君に惹かれていった。そして、もう呪われたままでもいいとすら思ってたんだ。アリスの傍にいられるなら、獣のままでもいいって」

「でも……」と、青年は苦しげに瞳を曇らせる。

「アリスが結婚するなんて言い出すから」

 結婚するとは言ってない。が、彼の頭の中ではそう変換されたらしい。

「ショックで、目の前が真っ暗になって、アリスに襲いかかって」

 襲われたとは思っていなかったけれど。

「体を舐めて、アリスの可愛いおっぱいにしゃぶりつきたくなって、でも牙が生えてるから我慢して、アリスの可愛い声で名前を呼ばれてキスしたくなって可愛くて美味しい唇をペロペロして」

 ノアにはよく口を舐められていた。キスのつもりだったのか。

「いつもは勃起しても我慢してるんだけど、興奮が抑えられなくて、ペニスを擦り付けてしまって」

 いつも勃起してたのか。全く気づかなかった。
 というか、全然純粋な気持ちではなかった。めちゃくちゃ不純な気持ちで舐めていたのだ。

「そうしたら、アリスは可愛らしい手で大胆にも僕のペニスに触れてきて、自分からいやらしく下着を脱ぎ捨てて」

 いやらしくしたつもりは少しもない。

「僕にお尻を向けて、そんな淫らなポーズを見せながら、可愛く笑って、『入れて』って、ぬるぬるのあそこを指で開いて僕を誘って」
「…………」
「あどけない可愛い顔に色気を滲ませて、獣の僕のことを受け入れてくれるって言ってくれて、大好きって……そんなこと言われたらもう我慢なんてできなくて、蜜で濡れたアリスの小さな雌の穴にペニスを突っ込んで」

 風貌は完全に王子様なのに、発言はそれにそぐわず無駄に卑猥だ。

「僕のペニスがとろとろの肉の襞に包まれてすごく気持ちよくて、アリスは処女だから中もきゅうきゅうにきつくて、乱暴にしちゃいけないって思ってたのに、アリスが色っぽい声で『好きにして』って言ってきて」

 確かに言ったけれど、なんだかニュアンスが違う。

「そうしたらもう理性なんて吹っ飛んで、心まで獣になったみたいにいっぱい腰を振って、アリスのいやらしい肉の穴に僕のペニスをずぼずぼしちゃって、突っ込んでるだけでも堪らなく気持ちいいのに、アリスが甘い声を上げて僕を煽って」

 煽るつもりは微塵もなかった。

「しかも僕の名前を可愛く何度も呼んで、それを聞いてるだけで興奮して、あっという間に射精しちゃって」

 少なくとも、アリスにとっては決して「あっという間」ではなかったのだが。

「そして、こうして呪いが解けたんだ」
「そう、なの…………」

 なんだか、あまり説明が頭に入ってこなかった。

「ありがとう、アリス。獣の僕を受け入れてくれて」

 ぎゅうっと抱き締められる。
 というか、いつまで挿入しているつもりなのだろう。

「好き、大好きだよ、愛してる。獣の姿のときは自分の気持ちを伝えられなくて、すごくもどかしかったんだ。こんなに君を愛してるのに」

 愛を囁きながら、青年はゆるりと腰を動かした。
 敏感になった肉壁は、少し擦られただけで痺れるような感覚が走る。

「ひあっ、動いちゃ、だめ……っ」
「どうして?」
「あんっ、さっきよりも、おっきくなって、お腹いっぱい、なのっ……お願い、もう、抜いて……っ」
「獣のノアは受け入れてくれたのに? 人間になったノアのことも受け入れて?」
「あなたの、名前、んんっ、ノアじゃない、でしょ……っ」
「ノアだよ、ノアがいい。この先ずっと、アリスだけのノアでいたい」

 彼は耳元で甘く囁きながら、徐々に腰の動きを大きくした。
 ノアの精液で潤んだ膣内が、ぐちゅぐちゅと掻き回される。

「名前を呼んで、さっきみたいに、たくさん、ほら」
「あんんっ、だめ、ノアのときよりも、奥まで、きてるのに、いっぱい、ずんずんしないでぇっ」
「僕もノアだよ。アリス、アリス、ね、呼んで?」

 背後から回された腕が動く。片方は乳房を揉み、もう片方は蜜口の上の小さな突起を弄る。

「んあぁっ、そんな、しちゃ、だめぇっ、あぁんっ」

 獣のときとは違う明確な愛撫は、強烈な快楽をアリスにもたらした。
 抵抗もできず、与えられる快感に嬌声を上げ続けることしかできない。

「んあっ、あっ、あっ、だめ、おかしくなっちゃ、んやぁっ」
「アリス、僕を呼んで」

 ぺろりと頬を舐められ、黒い獣のノアの姿が脳裏に浮かんだ。

「ぁっ、ノア、ノアっ」

 助けを求めるように、その名前を何度も口にする。
 青年は満足そうに吐息を漏らした。

「可愛い、アリス」
「あんっ、あぁっ、のあ、のあぁっ」
「うん、ここにいるからね」

 眦に浮かぶ涙をぺろぺろと舐めながら、陰茎で胎内を擦り上げる。
 中を刺激され、乳首を摘ままれ、陰核を転がされ、アリスは快楽に溺れた。

「のあ、あっ、ひあっ、やぁんんっ、のあっ」
「ああ、可愛い、大好き、アリス、また中に出すよ、アリスのお腹で受け止めてね」

 その言葉を聞き、僅かに残る理性が警鐘を鳴らす。

「やっ、だめ、だめぇっ、なか、だしちゃ……っ」
「僕を拒絶するの?」

 悲しみの滲む声に、心が揺らぐ。

「ちが、けど、だめなのっ、あかちゃ、できちゃうぅっ」
「できてもいいよね? アリスは僕と結婚するんだから」
「ふぇっ……!?」
「僕と、ずっと一緒にいてくれるでしょう?」

 確かにアリスはノアとずっと一緒にいたいと思っていた。それだけがアリスの望みだった。でもそれは獣のノアで。でも人間になった彼も確かにノアで。人間になったからって、ノアへの気持ちは変わらないはずで。無責任に捨てることなんてできない。

「のあと、ずっと一緒に、いる……っ」

 気づけば、そう口にしていた。
 すると感極まったように、ノアがアリスを抱き締めた。

「アリス、アリス、愛してる」
「ひあぁっ、だめ、奥、ぐりぐりってぇっ、んあっ、あっ、あっ」
「ずっと一緒にいよう、離さないよ、アリス、アリス……っ」
「あっ、あっ、んっ、~~~~~~っ」

 どぶどぷっと、二度目の精が胎内で吐き出される。
 アリスは体を痙攣させながら、熱い体液が注がれるのを感じた。

「アリス、好きだよ、アリス」

 ノアは膣内に精液を馴染ませるようにペニスをぬちゅぬちゅと動かしている。
 彼の欲望がまだ萎えていないことに気づいて、くらりと目眩を感じた。
 実はノアがこの国の第三王子で、そして本当に彼と結婚することになるなんて、このときのアリスはまだ知らない。
 今はただ、これはいつまで続くのだろうと、ぐったりと枕に顔を埋めるだけだった。





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