恋愛短編まとめ(異) ①

よしゆき

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騎士団長は部下思い

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 性欲の規定値を大幅に上回る部下のために、騎士団長(女)が性欲発散に付き合う話。

 部下×上司




──────────────────




「ユルキ、お前には今から私とセックスしてもらう」
「………………は?」
「これは団長命令だ。お前に拒否権はない」

 無表情で硬直する部下に、エルヴィはきっぱりと言った。






 エルヴィも別に好きでこんな命令をしているわけではない。これにはのっぴきならない事情があるのだ。
 エルヴィは女でありながら騎士団に所属している。騎士の家系に生まれ、騎士である祖父や父や兄に憧れ、エルヴィも騎士の道へ進んだ。女のくせに、と散々見下されながらも諦めず、日々学を極め鍛練に励み、見事実力で東方地区の騎士団団長の座へと上り詰めた。東方の騎士団は割りと穏やかな気質の者が多く、エルヴィを女だからと侮る輩はいなかった。団員達は純粋にエルヴィを尊敬してくれている。団員達に恵まれ、エルヴィはとても充実した日々を送っていた。
 そんなある日のことだった。エルヴィは医師に呼ばれた。騎士団に所属する医師は怪我や病気の治療、騎士団員全員の健康管理を行っている。
 突然の呼び出しに、エルヴィは何事かと身構えた。先日行った健康診断の結果になにか問題があったのだろうか、と。
 向かい合って椅子に座り、なにを言われるのかと表情を強張らせるエルヴィに、女医が言った。

「副団長のユルキだけれど、彼、性欲の数値が規定を大幅にオーバーしているの」
「…………は?」
「放っておけば、いずれ確実に爆発することになるでしょうね」

 机の上のカルテを指でコツコツと叩きながら、女医は淡々と話す。
 騎士団の健康診断で性欲の数値を測ることは国で義務づけられていた。というのも、一時期騎士団員が性犯罪を犯す事件が増えたせいだ。男所帯で、仕事もきつく、休みも少なく、性欲を満足に発散させられず、ストレスを溜め込み、犯罪に手を染めてしまう者が少なからずいた。
 その対策として騎士団員の性欲を数値化し、規定を超えた団員には性欲発散休日が与えられる。恋人と会うなり、娼館に行くなり、それぞれの方法で性欲を発散させる。その後また性欲を測り、規定値を下回っていれば問題なく業務に就くことができる。
 この対策のお陰で、騎士団員が性犯罪を犯すことはなくなった。
 エルヴィは彼女の言葉が信じられず、らしくもなく狼狽えてしまった。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。ユルキが? 嘘だろう? 他の誰かと間違えているんじゃないか?」
「私もそう思って、三回検査を繰り返したけれど、結果は変わらなかったわ」
「そ、そんな……ユルキが……?」
「ええ。一般男性の性欲の平均数値は五だけれど、ユルキの数値は二十を越えているわ」
「にに、二十……!?」

 思わず声を荒げてしまった。
 部下であるユルキの顔を思い出す。
 精悍な顔立ち。鋭い目付き。いつも無表情で愛想はないけれど、とても優秀な男だ。エルヴィを上司として尊重してくれる。毎日誰よりも熱心に鍛練に取り組み、真面目で、硬派で、性欲とは無縁な青年だと、エルヴィは思っていた。
 そのユルキが、人並み以上の性欲を持ち合わせているなんて。俄には信じられなかった。

「彼が性欲を抑えられなくなるのも時間の問題よ。寧ろこれだけの性欲を溜め込みながら普通に生活していられるのが不思議なくらいだわ」
「そ、そんなにか……? あいつはそんな状態で、毎日、遅くまで鍛練に励んでいたのか……?」
「厳しい鍛練を行うことで、性欲がまぎれていたんでしょうね。でも、それも長くは持たないわ。一刻も早く、性欲を発散させなくては取り返しのつかないことになってしまう」
「それなら、すぐに休みの手続きをしよう。それで、娼館に行ってもらって……」

 言いながら、おかしいことに気づく。性欲が規定値を上回っていた場合、医師がわざわざ団長のエルヴィにそれを伝えることはない。医師は規定値を超えていた団員を呼び出し、結果を伝え、それを受けて団員が休暇の申請を出す。
 それなのに、ユルキ本人ではなく何故エルヴィが報告を受けたのだろう。

「それは駄目なのよ」

 女医はふう……と吐息を漏らす。

「駄目、とは……?」
「娼館には行かせられないわ」
「何故?」
「ユルキは童貞なのよ」
「はあ……」
「平均を遥かに超える性欲を持った童貞が、はじめてセックスして、セックスの快感を覚えて、二、三回で済むと思う?」
「それは……」
「性欲が二十なんて並大抵の女じゃ相手はできないわ。体力が持たないもの。最悪抱き殺されるかも」
「そ、それでは、どうすれば……」
「あなたが相手なさい」
「…………はああ!?」

 エルヴィは思わず椅子から立ち上がった。
 動揺するエルヴィとは反対に、女医は冷静に話し続ける。

「あなたくらいしかいないでしょ。ユルキの体力についていける女は」
「いや、しかし……」

 伊達に騎士団長はやっていない。毎日体を鍛えているのだ。確かに体力には自信はあるが、すんなりと受け入れられることではない。

「あなたの部下なんだから、上司のあなたが面倒を見るのはおかしなことではないでしょう?」
「それは、そうかもしれないが……」
「それとも他に思い当たる人物がいる? ユルキの体力についていけて、ユルキに抱かれてもいいと思っているような女性の」
「う……」

 ユルキは愛想はないが、男らしく逞しく顔も整っているので女性の人気は高い。彼の相手をしたいと望む女性はいるだろう。だが、大抵の女性は体力的に厳しい。ここの騎士団にはエルヴィ以外の女性もいるけれど、全員恋人がいたはずだ。
 そう考えると、エルヴィ以外に適任者はいなかった。

「私も処女なのだが……」

 痛みには慣れているとはいえ、そんな有り余る性欲をぶつけられて無事でいられるのだろうか。
 不安に顔を曇らせるエルヴィに、女医が薬の入った小瓶を差し出す。

「この薬を飲めば、はじめてでも痛みを感じずに済むわ。そしてこっちは避妊薬ね」

 ごくりと唾を飲み込んで、エルヴィはそれらを受け取った。
 このまま放ってはおけないのだ。平均値を大幅に上回る性欲をそのままにはしておけない。覚悟を決めるしかない。
 ユルキは大切な部下だ。彼を助ける為だと思えば、大したことはない。自分の貞操とユルキならば、ユルキの方が大事だ。
 その後女医からしっかりと閨についてのレクチャーを受け、医務室を後にした。





 その夜、エルヴィはシャワーを済ませてから自室へ来るようにとユルキを呼び出した。エルヴィも早めにシャワーを浴び、そしてやって来たユルキに告げたのだ。

「ユルキ、お前には今から私とセックスしてもらう」

 と。

「命令? 理由をお訊きしても?」

 ユルキは訝しげに眉を顰める。
 それはそうだろう。理由もわからずセックスしろだなんて、納得できることではない。

「お前の性欲の数値が規定を上回っていたからだ」
「……それは……でも、その場合、娼館を勧められるのでは?」
「普通はな。だが、お前の相手は私がする」
「何故ですか?」

 お前の性欲が強すぎるからだ、なんて正直に伝えたら彼はショックを受けるかもしれない。デリケートな問題なのだ。恥をかかせてはいけない。本当のことは伏せておいた方がいいだろう。

「お前は人一倍体が大きいし、体力もある。私が相手をするのが適任だろう。そう判断したんだ」
「…………エルヴィ団長が、俺と……?」
「そうだ」

 あまり表情には出さないが、内心困惑していることだろう。
 ユルキの気持ちを考えると可哀想に思えてきた。
 はじめての相手が上司だなんて。娼婦のような技巧もなく、女性らしい小柄な体格もしていない。胸も小さくて、筋肉質で、魅力的とは言えない。そんな女を命令されて抱かなくてはならないなんて。
 だがしかし、これもユルキの為なのだとエルヴィは心を鬼にした。

「不満はあるだろうが、断ることは……」
「わかりました」
「えっ……」
「よろしくお願いします」

 もう少し抵抗するかと思ったが、ユルキはあっさり頷いた。思わず本当にいいのかと尋ねたくなった。
 真面目な男だから、上司の命令には逆らってはいけないと考えているのだろう。
 申し訳ない気持ちになったがぐっとこらえ、ベッドへ移動した。

「これ、使うか?」

 ベッドに上がり、サイドテーブルに用意しておいた布を渡す。目隠し用の布だ。エルヴィの姿が見えていたらその気になれないのではないかと思った。これで視覚を遮断すれば、少しは気休めになるだろう。
 差し出された布をじっと見つめ、ユルキはそれを手に取った。そして何故かエルヴィに使おうとしてくる。

「ちょ、ちょっと待て! 私は使わない!」

 ユルキを信用していないわけではないが、視界を塞がれるのは不安だ。エルヴィの顔を見たくないということだろうか。それならユルキが自分の視界を塞げばいいではないか。

「俺も使いません。しっかり見ていたいので」
「そ、そうか……?」

 キリッとした顔で言われて反応に困る。見たくないというわけではないようだ。しかし上司と部下で、恋愛感情もなくこんなことをするなんて気まずいことこの上ない。できれば使ってほしかったが、強要はできない。布は使われることなく元の場所に戻された。

「失礼します」
「あ、ああ……」

 ベッドに押し倒され、ユルキが上からのし掛かってくる。
 キスをされそうになって、エルヴィは慌てて止めた。

「そ、す、するのかっ? 別にしなくてもいいんだぞっ?」

 無理にキスをする必要はないと伝えると、ユルキは僅かに悲しそうに顔を曇らせた。

「嫌ですか?」
「嫌ではないが、」

 これはあくまで性欲処理であって、キスは好きな人とした方がいいのではないかと言い切る前に唇を重ねられていた。

「んっ、んんっ……」

 はむはむと、大きな口で唇を食まれる。ユルキの唇は少しカサついていて、熱くて、その感触に、本当に彼と口付けてしまっているのだと実感し、なんとも言えない気持ちになる。部下とキスしているのだと意識すると堪らなく恥ずかしくなり、エルヴィは必死に考えないようにした。
 ぬるりと、熱くて分厚い舌に唇を舐められる。

「んっ、んっ……」

 びっくりして、どうすればいいのかわからずにされるがままでいれば、舌が唇の隙間から捩じ込まれた。

「んふぁっ、んんっ」

 口の中を彼の舌が動き回る。味わうように隅々まで探られ、舌に舌を擦り付けられ、ぞくぞくするような感覚にエルヴィは体を震わせた。
 ユルキが顔を離したことで、唐突にキスは終わった。
 息を乱しぼんやりと見上げれば、彼は余裕のない表情でこちらを見下ろしている。どれだけきつい訓練中にも見せたことのない顔だった。

「ユルキ……?」
「すみません、もう出そうです……」

 気まずそうに、けれどはっきりとユルキは言った。
 一瞬意味がわからなかったが、すぐに彼の言わんとすることを理解する。

「い、いいぞ、我慢せずに出すんだ」

 それが目的なのだから、どんどん発散してくれて構わない。

「団長……エルヴィ団長の顔にかけてもいいですか?」

 真面目な顔で問われて、エルヴィは数秒言葉を失う。

「お、お前がしたいなら、構わないが……」

 理由はわからなかったが、できる限り彼の望みを叶えなければ、溜まりに溜まった性欲を全て吐き出すことはできないだろう。
 そう考えて、エルヴィは頷いた。

「本当に? よろしいのですか?」
「ああ、いいぞ」

 ごくりと喉を鳴らし、ユルキはズボンの前を寛げる。
 取り出されたそれを見て、エルヴィは目を剥いた。彼の体格に見合った、それはそれは立派な一物だった。
 こんなものを突っ込まれるのかと思うと怯みそうになるが、上司として情けない姿は見せられない。セックスしろと命令したのは自分なのだから。

「いいですか?」
「あ、ああ……」

 ユルキはベッドの上を移動し、仰向けになるエルヴィの首を跨ぐ。
 目の前にエグい形状のそれを突きつけられ、思わず息を呑んだ。
 ユルキはエルヴィの眼前で、そそり立つ陰茎をがしがしと擦り上げる。

「団長……エルヴィ団長……っ」

 呼吸を荒げ、頬を紅潮させ、熱を帯びた声音でエルヴィを呼ぶユルキの表情はぞくりとするほど艶っぽかった。こんな顔ができたのだとエルヴィは驚いていた。
 男ばかりの職場で、団員達が下ネタで盛り上がることは少なくない。しかし今までユルキが彼らの会話に混ざっているところを見たことはなく、淡白なのだと思っていた部下の色気の溢れる表情にエルヴィは戸惑い、どぎまぎと視線をさ迷わせた。
 その間にもユルキは男根を扱き、確実に絶頂へと上り詰めていく。

「エルヴィ団長っ、もう出ますっ」
「あ、ああっ」
「目を閉じてくださいっ」
「ああっ」

 切羽詰まった様子で言われ、エルヴィは咄嗟にぎゅっと目を瞑った。

「っく、出る……っ」

 次の瞬間、顔面に熱いものが降り注ぐのを感じた。べっとりと、顔の上に体液をかけられる。
 この段階で漸く、物凄く恥ずかしいことをされているのではないかということに気づいた。
 恥ずかしさと、頬をどろりと滴る体液の感触にくらくらしながらそっと目を開く。

「エルヴィ団長……っ」

 ユルキははーっはーっと荒い呼吸を繰り返し、瞬きもせずにエルヴィの顔を凝視していた。

「ゆ、ユルキ……」
「団長……エルヴィ団長の顔に、俺の精液が……っ」

 興奮した様子で声を漏らすユルキの男根は、なにもしていないのにまたゆるゆると頭を擡げていく。
 これが桁違いな性欲の力なのか、とエルヴィは感心すら覚えた。
 全て発散させなければ、最悪ユルキに騎士を辞めさせなくてはならなくなる。それだけは避けたい。彼は騎士の仕事に誇りを持っている。
 彼の命運はエルヴィにかかっているのだ。
 上司として、彼の性欲を全て受け止めてみせる。
 エルヴィは決意を新たにした。

「ユルキ、どうしてほしいんだ? してほしいことがあるなら遠慮せず言ってみろ」
「団長……っ」

 ユルキの声は感激しているかのように震えていた。
 激しく息を乱し、完全に勃起した男根をエルヴィの鼻先に突きつける。

「エルヴィ団長に舐めてほしいです」
「わ、わかった……」

 彼は息が上がってかなり苦しそうだ。早く楽にしてやらなくてはという使命感に駆られ、羞恥をこらえて舌を伸ばす。

「ぐぅ……っ」

 裏筋を舐め上げた瞬間、ユルキが呻き声を漏らした。

「だ、大丈夫なのか……?」
「大丈夫、です、から、もっとお願いします……っ」
「あ、ああ……」

 熱くて硬い肉棒に、懸命に舌を這わせる。
 ユルキの反応をチラチラと視線で窺いこれでいいのかと確かめながら舐め回した。凶悪な見た目だが、不思議と嫌悪感はなかった。寧ろドキドキして、なんだか変な気分になってくる。

「エルヴィ団長……っ」
「んっ……で、出そうか……?」
「まだ……もう少し……」
「足りないか? どうしたらいい?」
「咥えてもらえますか?」
「わ、わかった……」

 顔を動かして口を先端へ近づける。うまくできずまごまごしていたが、手を使えばいいのだと気づいた。
 陰茎を手で握り、位置を調節して大きく開いた口内に亀頭を迎え入れる。

「うぅっ……」

 ユルキがまた呻くように声を漏らすから、大丈夫かと視線を向ければ、口の中で肉棒が更に膨らみを増した。

「大丈夫です、そのまま続けて下さい……っ」

 辛そうに顔を歪めて言われ、エルヴィは早くしなくてはと焦り、口に咥えた亀頭に舌を絡める。大きくてうまくできないが、必死にペロペロと先端をねぶった。

「っぐ、出る……っ」
「んんっ!?」

 舌先が鈴口を擦った瞬間、どぷっと粘液が噴き出した。突然のことに驚いて、エルヴィは反射的にそれを飲み込んだ。男根に口を塞がれて吐き出すこともできず、喉の奥へと流し込む。
 射精を終え、ユルキはゆっくりと腰を引いた。
 ずりずりと後ろに下がってから、エルヴィに向かって頭を下げる。

「すみません、我慢できず、団長の口に出してしまいました」
「いや、気にするな……」

 性欲が強すぎるのだから、仕方がない。エルヴィはユルキを責めなかった。恐縮させてしまっては、先に進めない。申し訳なさそうに眉を下げるユルキに、笑ってみせる。

「それより、ほら、次はどうする?」
「……エルヴィ団長の体、見たいです」
「わ、私の……?」
「駄目ですか?」
「駄目ではないが……」

 傷だらけで、胸の膨らみも乏しく、筋肉質なエルヴィの体を見たら性欲を発散させるどころか萎えてしまうのではないか……という不安を抱いたが、止める前にシャツのボタンを全て外されてしまった。はだけられ、上半身がさらされる。
 あまり女性的とは言いがたいエルヴィの体を見て、ユルキはまた心配になるほど息を荒くした。

「だ、大丈夫か?」
「はい、触ってもいいですか?」
「構わないが……」

 決して触り心地はよくないからがっかりさせてしまうだけだと言おうとしたが、その前にわしりと大きな掌で両方の乳房を包まれた。
 はーっはーっと、ユルキの獣じみた荒い呼吸音が耳に届く。かなり興奮しているようだ。こんな色気のない体で興奮するなんて、これも性欲が強いからだろうか。
 太くて長い無骨な指が、やんわりと胸を揉んだ。その動きは決してエルヴィを傷つけまいとするように、優しく繊細だった。
 興奮しながらもちゃんと気遣ってくれているのを感じ、胸が温かくなった。

「んっ……もっと、強くしても、大丈夫だ……」
「こう、ですか?」

 少しだけ強く、胸に指が食い込んだ。揉みがいのない胸を、ユルキは熱心に揉みしだく。

「ここも、触っていいですか?」
「んぁっ……」

 すりっと突起を指で擦られ、ビクッと肩が揺れた。大した刺激ではなかったはずなのに大袈裟に反応してしまったことを、エルヴィは恥じた。

「団長?」
「あ、ああ、いいぞ……」

 ぐっと腹に力を入れ、なんでもないことのように軽く頷く。
 許可を得たユルキは、こすこすと乳首を擦りはじめた。押し潰したり、指で挟んでくにくにと捏ねる。

「んっ、ふぅんっんっ」

 やはり、どうしても声が出そうになる。エルヴィは唇を噛み締め、必死に声を押し殺した。

「団長、声を抑えないで下さい」
「ぁんっんっ、そ、それは、駄目だ……っ」
「何故ですか? 苦しいでしょう? 我慢しないで出して下さい」
「んっんっ、だ、駄目、だ、ぁっ、変な……情けない、声が、出てしまうっんんっ」

 そんな声は部下に聞かせられないと懸命に耐えていると、ユルキの片手がエルヴィの口許に伸びてきた。指で強引に口を割られ、そのまま指を差し込まれる。

「あっあっ、なぁっ、ゆぅき、なひをっ、ああっ」
「声、聞かせて下さい」

 ユルキはじっとエルヴィの瞳を見つめながら、口腔内を指で掻き回す。唾液が溢れ、ぐちゅぐちゅと水音が響いた。

「んあっあっあっ、ひゃめっ、はあっ」

 指の腹で舌をこしゅこしゅと擦られて、エルヴィはだらしなく口を開け、だらだらと唾液を零した。

「わひゃった、からっ、ゆひ、もぉっ、ぬひてっ」

 指を突っ込まれながらもごもごと抜いてくれと訴えると、つう……っと銀糸を引きながら指が抜かれた。
 はあっはあっと息を整えている間に、その唾液にまみれた指が再びエルヴィの乳首に触れた。

「んあぁっ」

 ぬるぬると濡れた指で突起を撫で回され、エルヴィの口から鼻にかかったような甘い声が漏れた。恥ずかしくて、でも口を閉じればまた指で口の中をくちゅくちゅされてしまう。エルヴィは声を抑えることができず、恥ずかしい喘ぎ声を部下に聞かせるしかなかった。

「ひぁっあっ、あんっ、んっ」

 ひっきりなしに上がる嬌声を満足そうな表情で聞きながら、ユルキはエルヴィの胸に顔を近づけた。乳首を指でくりくりと弄りながら、もう片方の乳首にしゃぶりつく。

「あああぁんっ」

 敏感な乳首をぬめった粘膜に包まれ、エルヴィは一際高い声を漏らした。
 じゅるっと吸い上げられるたび、ぞくぞくっとした感覚が背中を駆け上がる。じっとしていられず身を捩り、強くシーツを握り締めた。

「ひあっあっ、あっひんっ」
「エルヴィ団長、気持ちいいですか?」
「んひっあっ……こんな、の、はじめて、だから、あっあっ、わからない……っ」

 情けない姿は見せたくないのに、瞳は涙で潤んでしまう。
 するとユルキは突然体を起こした。

「ユルキ……?」
「……すみません、また出そうです」
「ん? い、いいぞ、我慢するな」

 出せるのなら、挿入前にどんどん出してもらった方がエルヴィとしては助かる。

「今度は、エルヴィ団長の胸にかけてもいいですか?」
「構わない、が……」

 それのなにが楽しいのだろう。ユルキの行動の意味がエルヴィにはよくわからない。
 ユルキはエルヴィの腹を跨ぎ、反り返る陰茎を握った。二度出したのに、全く衰える様子はない。寧ろどんどん体積は増していっている気がした。

「団長、エルヴィ団長……っ」
「あっ、そ、そんな、あっあんっ」

 ユルキは先走りの滲む先端を、エルヴィの胸に擦り付けた。

「ひあぁんっ」

 硬い雁で乳首を引っ掻くように刺激され、エルヴィはびくびくと背中を仰け反らせる。

「っく、出る、出しますっ」
「ひゃっ、んんっ」

 びゅびゅっと、勢いよく噴き出した精液が胸元に飛び散る。

「す、すごい、な……」

 三回目の射精だというのに、まだ量もたっぷりだ。それだけ溜め込んでいたということか。
 胸にかかった精液に指で触れ、ぼんやりと見つめていると、ふーっふーっと荒い息が上から降ってきた。
 視線を向けると、ユルキが獲物を狙う肉食獣のように瞳をギラギラさせてエルヴィを見下ろしている。彼の性器はまたむくむくと膨らんでいた。

「エルヴィ団長が、俺の精液で汚れて……っ」
「だ、大丈夫か、ユルキ? 呼吸が……」
「団長!」
「な、なんだ?」
「もう、我慢できません……っ」
「っ、わ、わかった……!」

 余裕のない様子で迫られ、エルヴィは急いでズボンとショーツを脱いでベッドの下に落とした。
 挿入しやすいように、エルヴィは自ら脚を抱えて秘部を晒す。そこは滲み出た蜜でしっとりと濡れていた。
 痛みを緩和する薬は飲んだので、いきなり突っ込まれても大丈夫なはずだ。
 エルヴィは覚悟を決め、ごくりと息を詰めた。

「ほら、いいぞ……」
「団長……っ」

 がばりとユルキが覆い被さってくる。てっきり男根を挿入されると思ったのに、なにを思ったのかユルキはエルヴィの秘所に顔を埋めた。

「ひあぁっ!? な、なにを……っ」
「はあっはあっ、団長、エルヴィ団長……っ」
「んああぁんっ、ば、ばかっ、あぁっあんっ、そ、そんなところ、舐めていいなんて、言ってな、あっあっあっああぁっ」

 ユルキは犬のようにエルヴィの秘所を舐め回す。
 肉厚の舌で陰核をねっとりと捏ねられ、エルヴィは快感に悲鳴を上げた。

「あひんんっ、あっあっあぁんっ、駄目、そこっ、へんっ、へんになるぅっ」

 いやいやとかぶりを振るが、エルヴィが声を上げれば上げるほどユルキの愛撫は激しくなる。
 敏感な花芽を舌でぐりゅぐりゅと嬲られ、かと思うと舌先で焦れったくなるほど優しく撫で回されたりした。
 なにか、強烈な感覚が込み上げてくる。シーツをきつく握ってそれをこらえようとするけれど、どんどん追い詰められていく。

「あっあっあっ、だめ、ユルキ、離し、んあっあっあっあ────っ」

 びくびくっと身を震わせ、絶頂を迎えた。
 秘裂から、新たな蜜がとぷりと溢れる。するとユルキはそれを待ち侘びていたかのように蜜口に吸い付いた。
 じゅうぅっと蜜を啜られ、エルヴィは羞恥に泣きそうになる。

「はひんんっ、ば、かぁっ、そん、そんな、あっあっあっ、だめぇっ」

 舌が膣孔へと差し込まれ、ちゅぶちゅぶと卑猥な音を立てて抜き差しされる。
 痛みには慣れているが、快感には全く慣れていないエルヴィは翻弄されるばかりだ。
 中を味わうように舐め回され、唾液と愛液でぬるぬるになったそこに、今度は指を挿入される。

「ひあっんんっあっあっあぁああっ」

 太い指が押し広げるように内部をほぐし、中を刺激しながら舌で陰核をねぶられ、エルヴィは再び絶頂へと上り詰めた。
 指が中を穿るたびに、ぷちゅぷちゅと蜜が漏れて臀部にまで滴り落ちる。
 胎内を掻き混ぜる指は一本ずつ増えていき、やがて肉壁を擦られる快感を覚え、花芽と中と両方から快感を与えられ続け、エルヴィは何度も絶頂を迎えることとなった。
 これはおかしい。ユルキの性欲を発散させなければならないというのに、エルヴィばかりが快楽に溺れている。これではなんの意味もない。

「んひぁっ、んんっ、ユルキ、も、やめっ、頼むから、あっあっ、もう、入れてくれっ」
「エルヴィ団長……?」

 ユルキは漸く秘部への愛撫をやめてくれた。

「早く、お前の、私の中に入れて……」
「団長……っ!」

 腕から力が抜けてシーツに落ちていたエルヴィの両脚を、ユルキが抱え上げる。荒い息を吐きながら、濡れそぼった蜜口に亀頭を宛がった。

「入れますよ、エルヴィ団長……っ」
「ああ……んっはっあっ、ああああぁっ」

 太く長い楔に、ゆっくりと胎内を貫かれた。
 痛みはなく、内壁を擦り上げられる快感が全身を駆け抜ける。肉襞が、悦ぶようにきゅうきゅうと陰茎に絡み付いた。
 ユルキは苦しそうに顔を歪め、ぐっと唇を噛む。

「ぐっ……うぅっ……そんな、締め付けないで、下さい……すぐに出てしまいます……っ」
「いい、から、全部、私の中に、出せ……っ」

 そのためにしているのだから。
 エルヴィの言葉に促されるように、ユルキは呻き声を上げて射精した。びゅくびゅくと、胎内で熱が弾けるのを感じる。
 鍛練中も殆ど息を乱さない男が、浅い呼吸を繰り返し、全身に汗をかき、快感に体を震わせている。
 ぞくりとするほどの色気を纏い、雄の顔で、エルヴィを真上から見下ろしている。
 彼の情欲を感じ、それに煽られ、エルヴィの膣内がきゅんっと締まった。その刺激で、彼の欲望はすぐにまた元気を取り戻す。

「エルヴィ団長……まだ、足りないです……もっと、あなたの中に出したい……っ」
「んっ……好きなだけ、していいぞ……」

 そうでなければ意味がない。出し尽くしてもらわなければ。

「エルヴィ団長……!」

 ユルキの大きな体がエルヴィを抱き締める。
 その後、エルヴィは一晩中ユルキに抱かれ続けた。確かに、か弱い女性であれば抱き殺されていたかもしれない。
 精根尽き果てるまで貪られたが、これで目的は果たせたはずだ。
 エルヴィは安堵し、気絶するように眠りに落ちた。





 目を覚ますと、隣にはまだユルキがいた。エルヴィは彼の腕に包み込まれていた。まるで恋人同士のような甘い雰囲気がユルキから漂ってきて、エルヴィは戸惑った。

「おはようございます、エルヴィ団長」
「あ、ああ、おはよう……」

 掠れた低音で名前を呼ばれ、ドキドキしながらも平静を装い挨拶を返す。
 というか、いつまで抱き締めているのだろう。お互い全裸のままで、散々抱き合った後とはいえ、恥ずかしいのでいい加減服を着たいのだが。
 離してくれ、と伝える前に、ユルキが言った。

「嬉しいです、エルヴィ団長も、俺のことを憎からず思ってくれていたのですね」
「へ? え、あ……?」
「俺もずっと、エルヴィ団長をお慕いしていました」

 甘ったるい声音で囁いて、エルヴィにそっと口づける。
 つまりこの場合のお慕いとは、恋愛感情のそれということだろう。そして何故か、エルヴィもユルキに恋愛感情を抱いていると思われている。

「な、なにを……なんで、そんなこと……」
「普通、上司が部下の性欲処理なんてしませんよね? エルヴィ団長が俺を娼館へ行かせなかったのは、つまりそういうことなんですよね?」

 違う。ユルキが性欲旺盛過ぎるから、娼館へは行かせられなかっただけだ。ユルキの体力についていける女性が、他にいなかったから。
 しかし否定の言葉を告げることはできなかった。
 滅多に笑うことのないユルキが、蕩けるような甘い瞳で嬉しそうに微笑んでいるのを見たら、本当のことなど言えなかった。

「愛してます、エルヴィ団長。必ず幸せにしますね」

 プロポーズのようなことまで言われ、優しく抱き締められ、エルヴィは口を噤むしかなかった。
 彼の広い胸に顔をうずめると、感じたことのない充足感のようなものを感じた。
 もしかしてこれが女の幸せというものなのだろうかと思いながら、エルヴィは目を閉じて彼に身を委ねた。



─────────────


 読んでくださってありがとうございます。




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