恋するうさぎ

よしゆき

文字の大きさ
10 / 10
奈々生の場合

2

しおりを挟む



「…………んん?」

 意識が浮上し、奈々生は目を開ける。ぼんやりと、見慣れない天井を見つめた。
 
「目が覚めたか?」
「司紋くん……?」

 司紋が上から顔を覗き込んでくる。
 距離の近さに慌てて離れようとして、今自分がどんな状態にあるのか気づいた。
 ベッドの上に仰向けに寝かされ、両手首を縛られ頭上で纏められている。サングラスもマスクもゴム手袋も全て外されていて、その上全裸だった。
 さっと血の気が引いていく。
 まさか、記憶を飛ばして全裸で司紋に襲いかかったのだろうか。それで司紋が反撃し、気絶させ、動けないように拘束したのだろうか。
 奈々生は半泣きになって司紋に尋ねる。

「し、しし、司紋くん、私、もしかしてなんかした?」
「別になにも。ただ眠ってただけだ」
「でででも、じゃあなんで裸なの……?」
「俺が脱がせたから」

 当然のことのようにさらりと言われるが、意味がわからない。

「なんで私、縛られてるの……?」
「奈々生が抵抗して、逃げないように」

 抵抗? 逃げる? そんなこと、司紋相手にするわけがないのに。
 ぽかんとする奈々生に、司紋は言う。

「因みに、奈々生が眠ったのも俺が原因だから。お茶に薬混ぜて眠らせたんだ」
「そうなの……?」

 あの原因不明の眠気は薬のせいだったのか。なるほど、と納得する。
 そんな奈々生を見て、司紋は苦笑を浮かべた。大人びた彼の表情にドキドキする。見た目は確かに小学生なのに、綺麗で、格好よくて、どうしようもなく胸がときめく。
 いや、胸をときめかせている場合ではない。この状況はまずい。こんなに近づかれたら、すぐに発情してしまう。
 全裸なのを恥じることも忘れ、奈々生は焦った。

「あの、司紋くん、私そろそろ帰らないと……」
「帰すわけないだろ。なんのために薬飲ませて眠らせて、逃げられないように縛ったと思ってるんだ」
「に、逃げないよ、逃げないから、一旦離れて……」
「だめだ」

 ぐっと司紋の顔が近づく。
 至近距離で見つめられ、彼の視線に、匂いに、息遣いに、ぐらりと理性が揺らいだ。胸がドキドキして、頭がくらくらする。
 司紋の熱を孕んだ真剣な瞳に、ぞくりと背筋が震えた。

「お前が悪いんだろ」
「え……?」
「俺を避けたりするから。俺の気持ちも知らないで」
「あ……ごめ、なさい……」

 素直に謝る奈々生を見下ろし、司紋は唇の端を吊り上げる。子供らしくないその悪辣な笑みに、それでも奈々生はときめいてしまう。

「もういいんだ。奈々生が俺から離れようとするなら、離れられなくするだけだから」

 更に顔が近づく。あっと思ったときには唇が重ねられていた。
 奈々生は目を見開き硬直した。
 キスされている。司紋に。大好きな司紋と、キスをしている。
 意識すると、一気に体の熱が上がった。
 司紋の唇は柔らかくてぷにぷにしていて、思わず舐め回したくなるほど気持ちよかった。
 無意識に口を開くと、隙間から舌を差し込まれた。口の中を舐められ、舌を吸われ、快感に思考が蕩けていく。くちゅくちゅと混ざり合う唾液を、嬉々として飲み込んだ。
 唇が離される。名残惜しくて、奈々生は思わず舌で追いかけた。
 司紋は笑って、伸ばされた奈々生の舌をぺろりと一舐めした。

「ほんとに耳、生えるんだな」

 奈々生の頭を見て、司紋が呟く。

「耳……?」
「ほら、頭に生えてる」

 司紋の手が頭に伸ばされる。
 そこで漸く、奈々生は自分の頭に兎の耳が生えていることに気づいた。
 撫でられ、ぴくぴくと長い耳が震える。

「発情すると、生えるんだろ」

 司紋の言葉にぎょっとする。

「な、な、なんで、知って……」
「おばさんに聞いた」
「お、お母さんに……!?」
「奈々生に避けられてるけど、理由がわからないって相談したら、奈々生はきっと俺のことが好きだから避けてるんだって言われて。それで、奈々生の体質のこととかも教えてもらった」
「な、な、そ、なな……」
「奈々生は俺のことが好きなんだろ」

 ぶわっと顔が赤く染まる。涙が滲み、奈々生はくしゃりと顔を歪めた。

「ご、ごめんなさい……っ」
「なんで謝るんだよ」
「だって、だって……」

 隠したかった事実を既に知られていたというショックに、ぽろぽろと涙が零れる。

「好きなら好きって言えばよかっただろ」
「言えないよっ」
「なんで?」
「こんなの、知られたら、司紋くんに嫌われちゃうって、思って……っ」
「だから俺を避けたのか?」
「司紋くんの傍にいたら、襲いかかっちゃうかもしれなくてっ」
「襲いたきゃ襲えばよかったのに。奈々生になら、喜んで襲われてやるよ」
「え……?」
「まあ、奈々生には無理だよな。だから、俺が奈々生を襲うことにしたんだ」
「え、え……?」
「奈々生が俺から離れようとするのが悪いんだからな。後悔してももう遅いぞ。めちゃくちゃに犯してやる」
「っ……」

 いつも無表情で感情を表に出さない司紋が、とても楽しそうに、嗜虐的な笑みを浮かべた。
 ぞくぞくぞくっと、期待に震えが走る。下腹が疼いて、秘所から蜜がどっと溢れた。
 奈々生はいやいやと首を振る。

「だめ、だめ、司紋くん……っ」
「なにがだめなんだ?」
「だって、私、絶対おかしくなっちゃう……わけわかんなくなって、いっぱい変なこと言っちゃう……。司紋くんに嫌われちゃうよ……」

 我を忘れて快楽に溺れ、はしたない姿を晒してしまうだろう。奈々生の痴態に司紋が呆れ、嫌悪されることが怖い。
 怯える奈々生に、司紋は微笑んだ。これもまた珍しく、優しい笑顔だった。

「心配しなくていい。嫌いになんかならないから、安心しておかしくなれ。変なこともいっぱい言え」
「無理だよぅ……。嫌われたくないよ……」
「嫌わないって言ってるだろ。俺のこと信用できないのか?」
「そうじゃないけど……」
「いいから、もうおとなしく襲われてろ」
「あんっ」

 剥き出しの胸を揉まれ、それ以上なにも言えなくなった。
 司紋の小さな手が、ふにふにと二つの膨らみを揉みしだく。

「ふあっ、あっ、あっ」
「柔らかいな。でも、乳首は固くなってきた」
「ひんっ、だめ、ちくび、くりくりしちゃ」
「気持ちいい?」
「んんんっ」

 ぴん、と指で弾かれ、体が跳ねる。
 奈々生は太股を擦り合わせた。愛液が溢れて止まらない。
 ぷくりと膨らんだ胸の突起に、司紋が顔を寄せる。そのままぱくりと口に含んだ。

「んああっ、あっ、はぁんっ」

 乳首を舌でコロコロと転がされる。甘噛みされ、押し潰され、与えられる快感に喘ぎ声が止まらない。
 強く吸い上げられると、奈々生はガクガクと腰を揺らしながら達した。膣穴からどぷどぷっと蜜が溢れるのを感じた。
 体を痙攣させる奈々生に、司紋が顔を上げる。

「奈々生、イッたのか?」
「ふぁい……」

 快楽に蕩けた顔で司紋を見つめる。
 奈々生はすっかり理性を飛ばしていた。

「司紋くん、手、ほどいて、お願い、司紋くんに触りたいよ、ぎゅってしたい」
「わかった」

 司紋はすぐに手首の拘束を解いてくれた。

「服、脱いで」

 司紋の服に手をかける。司紋は抵抗せず、脱がしやすいように腕を伸ばしてくれた。
 上半身を裸に剥き、奈々生は彼に抱きつく。触れ合う肌の感触が心地よく、愉悦に心が震えた。

「司紋くん、司紋くん、好き、好き」
「やっと素直になったか」
「キスしたい、司紋くん。司紋くんの舌、ちゅうちゅうしたいの、ぺろぺろさせて」
「ん」

 ねだれば、司紋はすぐに欲しいものを与えてくれた。
 舌を絡ませ、口づけを交わす。じゅるじゅると唾液ごと司紋の舌を吸い、食事で口の回りを汚す子供のように、奈々生の口元はベトベトになった。
 キスをしながらぷるりと胴震いし、奈々生は軽く達した。
 司紋の指が下腹に触れ、期待に新たな蜜が漏れる。奈々生は差し出すように自ら脚を開いた。
 花弁をそっとなぞられ、くちゅりと濡れた音が響く。

「ひあぁっ」
「すげー、びしょびしょ……」

 司紋がごくりと喉を鳴らす。
 彼の興奮が伝わってきて、それに奈々生の性感も煽られた。
 指が陰核を擦る。

「きゃうぅっ」

 びくびくと腰が跳ねた。

「はひっ、ああっ、そこ、きもひいぃっ」
「そんなに気持ちいいのか? すげー反応」
「いい、いいよぉっ、司紋くんの指でこしゅこしゅされるの気持ちいい、あっ、いくっ、いくぅっ」

 陰核を弄り回され、奈々生はまた絶頂を迎えた。
 ひくつく蜜口に、ぷちゅっと指が挿入される。中を掻き混ぜるように、抜き差しを繰り返された。二本、三本と指を増やされ、膣穴を擦られる快感に奈々生は耽溺した。
 身をくねらせるたびに揺れる乳房に、司紋が吸い付く。乳首を愛撫され、奈々生は更に甘い嬌声を上げた。

「ひあっ、きもちぃ、司紋くんに指でぐちゅぐちゅされるのきもちぃよぉっ」
「ん、すごいな、ぎゅうぎゅう俺の指に絡み付いてくる」
「乳首も、気持ちいいっ、司紋くんにちゅうってされるの好きぃ、あぁんっ」
「可愛いな、なな」

 優しく囁いて、司紋は指を引き抜きズボンからぺニスを取り出した。
 勃起したそれを見て、奈々生は期待に瞳を潤ませる。きゅんきゅんと子宮が疼いた。
 陰茎の先端が押し当てられる。

「司紋くぅん……」
「奈々生、好きだ」
「っ……私も、好き、大好き、あっ、はっ、あああっ」

 ずぷぷっ……と肉棒が捩じ込まれた。隘路を割り開かれる痛みに襲われるが、発情した奈々生の体は痛みにさえ歓喜した。
 反り返った陰茎に中の敏感な箇所を擦り上げられ、膣穴が悦ぶように蠕動する。

「うぁっ……く……奈々生、なな、そんなに締めたらすぐ出るだろ……」
「んあっ、って、司紋くんの、おちんちん、うれひぃ、だも」
「辛くないか?」
「痛い、けど、気持ちいいのっ」
「俺も気持ちいい、もうイきそう……」

 司紋は腰の動きを止め、荒い呼吸を繰り返す。
 こちらを見下ろす司紋の顔は欲情する男のそれで、色気の滲む彼の瞳にぞくぞくと身震いした。同時に、ぺニスを咥え込む蜜穴がきゅっと締まる。
 司紋は顔を歪めた。その表情も色っぽくてまたぞくりと震える。

「はっ、だから、締めすぎなんだよ……」
「あんっ、司紋くん、好きで、気持ちいいから、勝手に、きゅうって、なっちゃうの……っ」
「ああもう、可愛いこと言うなよ」
「お願い、司紋くん、おちんちん動かして、いっぱい擦って、気持ちよくなって、んんっ、私の中に、精液ちょうだいっ」
「……くそっ」

 司紋は顔を赤く染めて腰を打ち付けた。ぬかるむ蜜壺を、何度も激しく突き上げる。

「ひんっ、きもちい、司紋くん、しゅき、あっ、だいしゅきっ」
「うっ、く……だめだ、もう出る……っ」
「司紋くん、出して、いっぱい欲しい、あぁっ」
「奈々生、なな、好きだっ」
「んぁっ、あっ、あ──っ」

 どぷっと注がれる熱を感じながら、奈々生は果てた。
 強く司紋にしがみつき、吐き出される体液を全て受け入れる。
 愉悦に震える体を、司紋はしっかりと抱き締めてくれた。
 最後まで出し切り、司紋は体を離す。ゆっくりと引き抜かれる陰茎に、名残惜しげに襞が絡み付いた。
 ちゅぽっと音を立て、亀頭が抜ける。
 奈々生は発情した顔でぺニスに手を伸ばした。

「司紋くんお願い、お口にもちょうだい……お口でも、司紋くんの精液飲ませて……?」

 性器を擦りながら懇願すると、司紋は嬉しそうに目を細めた。

「俺のななはエロくて可愛いくて最高だ。よく今まで我慢できたな」

 司紋の小さな手に頬を撫でられ、奈々生の顔はとろんと蕩ける。

「いいよ、いくらでもあげる。上からも下からも、たっぷり飲ませてやるよ」
「嬉しい、司紋くん……」

 完全に理性を手離した奈々生は、溜まりに溜まった性欲を爆発させたのだった。



 連休の殆どを司紋とベッドの上で過ごすという爛れた生活を送ってしまった。奈々生は一度も家に帰らなかった。司紋が前もって奈々生の両親に許可を取っていたので、特に咎められることもなかった。
 いつの間に司紋と自分の両親が繋がっていたのか、奈々生は全く気づかなかった。
 いや、自分のことはいいのだ。問題は司紋の両親だ。今日、旅行から帰ってくるのだという。

「司紋くんのご両親に合わせる顔がないよ……」

 奈々生は両手で顔を覆った。
 暗澹とした空気を纏う奈々生とは反対に、司紋は清々しく輝いている。

「なにをそんなに気にしてるんだよ」
「だ、だって、ご両親がいないのをいいことに、司紋くんにあんなことやそんなことしちゃったんだよ……」
「奈々生が気にすることじゃないだろ。襲ったのは俺なんだし」
「そういう問題じゃないよー……」
「そもそも、父さんと母さんももう知ってるし」
「え!? なにを!?」
「全部。ちゃんと話して、許してもらってるから。二人が旅行に行ったのって、俺と奈々生を二人きりにするためだし」
「な、なんと……」

 驚愕の事実に、奈々生は言葉を失う。
 奈々生の両親もどうかと思うが、司紋の両親もどうなのだろう。それだけ息子を信頼しているということなのか。
 呆然とする奈々生に、司紋は微かに笑みを浮かべる。

「これでもう、奈々生が俺を避ける理由はないだろ」
「うん……」
「今度からは、なにも言わずに俺から離れようとするなよ。ちゃんと俺に言え。一緒に考えてやるから」

 奈々生は男らしい司紋に惚れ直した。

「司紋くん、大好き」
「……知ってる」

 司紋は照れ臭そうに視線を逸らした。
 まだ子供で、ずっと年下だけれど、格好よくて誰よりも頼りになる彼は、奈々生の自慢の彼氏になった。




〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️


 読んでくださってありがとうございます。



しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

お義父さん、好き。

うみ
恋愛
お義父さんの子を孕みたい……。義理の父を好きになって、愛してしまった。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

処理中です...