2 / 4
2 お相手はそのかたでいいんですか?
しおりを挟む
「素晴らしいアッパーだったわ」
友人が声に振り返ると、挨拶くらいはしたことがあるけれど、それ以上の付き合いのない貴族令嬢が立っておりました。
オレンジ伯爵家のヒマワリ嬢でした。
「見苦しいものをお見せてしまって申し訳ありません」
「あの拳筋……もしかしてゴボウ先生が?」
「まぁ! もしかして貴女も?」
なんとアッパーを教えてくださった先生が同じ方でした。
「やっぱり! 同じ先生に習った人に初めて会ったわ! 感激!」
「わたくしも初めてですわ!」
距離がぐっと近くなった気がします。
「あなたってダーリンに聞いてたよりもアグレッシブなのね」
ダーリン?
誰でしょうそれは?
そういえば、婚約者がアレなことを言おうとした時、この人そのすぐ後ろに立っていたな、と。
まさか!? でも、状況的にはそういうことなのかしら?
だけど、リストアップされていた火遊びのお相手には、彼女の名前はなかったのだけど。
「あの……もしかして貴女が彼の『真実の愛』のお相手なのですか?」
ヒマワリ嬢は、いきなり友人の顔をにらみつけたそうです。
「い、いけない忘れるところだったわ! そうよわたしよ! 彼はあなたと婚約破棄してわたしと結婚するのよ!」
アッパーの衝撃で呆然としていた婚約者も、その声に生気を取り戻し。
「そうだ! お前がどんなに妨害しようと、俺は何度でも何度でも戦う! お前が泣いてゆるしをこいすがりつくまでやめない!」
「頑張ってダーリン! わたしたちの愛は吹雪にも夏の暑さにも負けないんだから!」
「OH! ヒマワリ! 愛しい人! 君の愛が俺を何度でも立ち上がらせるのだ!」
友人は、ため息をつきました。
せっかく同門の人を見つけたのに、その人こそが婚約者の不貞の相手だったなんて。
それでも、気を取り直します。
「あの。わたくしは別にいいんです。婚約が解消されても。でも、ヒマワリ嬢で大丈夫なのですか?」
「はっ。彼女がお前に劣るとでもいうつもりか! とんだ傲慢だな!」
「いえ、そうではなくてですね。他の四人はどうするのですか?」
ヒマワリ嬢はかわいらしく首を傾げて
「? よにんってなに?」
「彼がおつきあいしている方々です。報告書に名前があがっていなかった貴女が相手で意外でした」
沈黙が落ちました。
二人のどちらにとっても意外だったのでしょう。それぞれ意味は違ったと思いますが。
「よ、四人って。四人って誰よ! っていうか、わたしにプロポーズしてきたくせに四人も! 目の前の女も合わせれば五人じゃない!」
「ち、ちがうちがうちがうんだ! 真実の愛はヒマワリ一人だけさ!」
婚約者はヒマワリ嬢に取り繕うように言うと、友人の方を向いて
「い、いい加減なことを言うなっ! そうまでして俺をおとしめたいのかこのドブス!」
ドブス。
確かにわたく――コホン。友人は飛び抜けて美人ではありませんでしたが、不貞を働いている当人にこんなことを言われる筋合いはありません。
なるべく穏便に済ませたかったのですが、ここまで言われたら仕方在りませんよね。
友人は婚約者に言葉のアッパーを叩きつけました。
「グリーン伯爵家のダイコン嬢。
イエロー伯爵家のトマト嬢。
レッド伯爵家のセロリ嬢。
ピンク男爵家のニンジン嬢。以上四人ですわ」
カボチャ男の顔から一気に血の気が引いたそうです。
友人は、ああ、人間の顔と言うのは、こんなにも簡単に真っ白になるのか、と感心したそうです。
これでは誰が見ても、友人の言葉が事実だとわかってしまうことでしょう。
このカボチャ、いろいろ目をつぶりたい所だらけの婚約者なくせに、女をくどくのだけは上手いのです。
その才能を他に向けてほしかった!
おや。貴方までなにを青ざめているのですか?
よくよく判っていることとは思いますが、貴族同士の婚約は家同士の婚約でもあります。
お互いの身辺を探り合い、婚約者に相応しいかどうか常に調べておくのは常識ですよ。
万が一相手が不祥事を起こす前兆が見つかれば、家を守るために手を打たねばなりませんからね。
貴方の婚約者が貴方を調べていると考えると怖いのですか?
怖がることはありませんよ。
貴方があちこちの女の子に手を出していたとしても、マレーネ嬢は知ってて知らないふりをしてくれますよ。
貴方が何か問題を起こさない限りは。
友人はヒマワリ嬢に確認します。
「このことは知っていらして?」
「いえ、全く……このっこのっ浮気者ぉぉぉぉぉぉ!」
「あの……わたくしという婚約者がありながら、貴女に手を出している時点で浮気者ですよ」
「あ。そうか。そう言われてみればそうだった。あははっ」
カラっとした気質の方のようです。
友人はヒマワリ嬢に、ちょっと好意をもったそうです。
友人が声に振り返ると、挨拶くらいはしたことがあるけれど、それ以上の付き合いのない貴族令嬢が立っておりました。
オレンジ伯爵家のヒマワリ嬢でした。
「見苦しいものをお見せてしまって申し訳ありません」
「あの拳筋……もしかしてゴボウ先生が?」
「まぁ! もしかして貴女も?」
なんとアッパーを教えてくださった先生が同じ方でした。
「やっぱり! 同じ先生に習った人に初めて会ったわ! 感激!」
「わたくしも初めてですわ!」
距離がぐっと近くなった気がします。
「あなたってダーリンに聞いてたよりもアグレッシブなのね」
ダーリン?
誰でしょうそれは?
そういえば、婚約者がアレなことを言おうとした時、この人そのすぐ後ろに立っていたな、と。
まさか!? でも、状況的にはそういうことなのかしら?
だけど、リストアップされていた火遊びのお相手には、彼女の名前はなかったのだけど。
「あの……もしかして貴女が彼の『真実の愛』のお相手なのですか?」
ヒマワリ嬢は、いきなり友人の顔をにらみつけたそうです。
「い、いけない忘れるところだったわ! そうよわたしよ! 彼はあなたと婚約破棄してわたしと結婚するのよ!」
アッパーの衝撃で呆然としていた婚約者も、その声に生気を取り戻し。
「そうだ! お前がどんなに妨害しようと、俺は何度でも何度でも戦う! お前が泣いてゆるしをこいすがりつくまでやめない!」
「頑張ってダーリン! わたしたちの愛は吹雪にも夏の暑さにも負けないんだから!」
「OH! ヒマワリ! 愛しい人! 君の愛が俺を何度でも立ち上がらせるのだ!」
友人は、ため息をつきました。
せっかく同門の人を見つけたのに、その人こそが婚約者の不貞の相手だったなんて。
それでも、気を取り直します。
「あの。わたくしは別にいいんです。婚約が解消されても。でも、ヒマワリ嬢で大丈夫なのですか?」
「はっ。彼女がお前に劣るとでもいうつもりか! とんだ傲慢だな!」
「いえ、そうではなくてですね。他の四人はどうするのですか?」
ヒマワリ嬢はかわいらしく首を傾げて
「? よにんってなに?」
「彼がおつきあいしている方々です。報告書に名前があがっていなかった貴女が相手で意外でした」
沈黙が落ちました。
二人のどちらにとっても意外だったのでしょう。それぞれ意味は違ったと思いますが。
「よ、四人って。四人って誰よ! っていうか、わたしにプロポーズしてきたくせに四人も! 目の前の女も合わせれば五人じゃない!」
「ち、ちがうちがうちがうんだ! 真実の愛はヒマワリ一人だけさ!」
婚約者はヒマワリ嬢に取り繕うように言うと、友人の方を向いて
「い、いい加減なことを言うなっ! そうまでして俺をおとしめたいのかこのドブス!」
ドブス。
確かにわたく――コホン。友人は飛び抜けて美人ではありませんでしたが、不貞を働いている当人にこんなことを言われる筋合いはありません。
なるべく穏便に済ませたかったのですが、ここまで言われたら仕方在りませんよね。
友人は婚約者に言葉のアッパーを叩きつけました。
「グリーン伯爵家のダイコン嬢。
イエロー伯爵家のトマト嬢。
レッド伯爵家のセロリ嬢。
ピンク男爵家のニンジン嬢。以上四人ですわ」
カボチャ男の顔から一気に血の気が引いたそうです。
友人は、ああ、人間の顔と言うのは、こんなにも簡単に真っ白になるのか、と感心したそうです。
これでは誰が見ても、友人の言葉が事実だとわかってしまうことでしょう。
このカボチャ、いろいろ目をつぶりたい所だらけの婚約者なくせに、女をくどくのだけは上手いのです。
その才能を他に向けてほしかった!
おや。貴方までなにを青ざめているのですか?
よくよく判っていることとは思いますが、貴族同士の婚約は家同士の婚約でもあります。
お互いの身辺を探り合い、婚約者に相応しいかどうか常に調べておくのは常識ですよ。
万が一相手が不祥事を起こす前兆が見つかれば、家を守るために手を打たねばなりませんからね。
貴方の婚約者が貴方を調べていると考えると怖いのですか?
怖がることはありませんよ。
貴方があちこちの女の子に手を出していたとしても、マレーネ嬢は知ってて知らないふりをしてくれますよ。
貴方が何か問題を起こさない限りは。
友人はヒマワリ嬢に確認します。
「このことは知っていらして?」
「いえ、全く……このっこのっ浮気者ぉぉぉぉぉぉ!」
「あの……わたくしという婚約者がありながら、貴女に手を出している時点で浮気者ですよ」
「あ。そうか。そう言われてみればそうだった。あははっ」
カラっとした気質の方のようです。
友人はヒマワリ嬢に、ちょっと好意をもったそうです。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す
RINFAM
ファンタジー
なんの罰ゲームだ、これ!!!!
あああああ!!!
本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!
そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!
一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!
かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。
年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。
4コマ漫画版もあります。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる